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89. ※最悪の再会

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ミケの気配を追う間、シェドは自分にあの情動が塗り込められていくような不快感でいっぱいだった。
呼吸が苦い。一歩が重い。
体表は熱くて倦んでいるのに、芯は冷たくて氷穴のようだ。

ミケが、自分に、向かってこない。
それだけで、王城ごと崩してやりたくなる。

魔素欠の苦しさが、ミケへの心配と会いたさと、ミケを取られるという焦りと、ミケの魔素に濡れたライヒへの嫉妬と、ミケを諦めろと迫るムーガルへのいら立ちと、そんなもので何倍にも増幅されている気がする。

王の間の前に、ミケを見た。
居た。やっと会えた。

ミケは、きょとんとした顔で、俺を見た。
ちょっと散歩に行っていただけだとでも言うように。
上着は、見慣れない物だったけれども。顔色も良く、足取りも危なげなく。

「ミケ。良、かった」

「げ。シェド、魔素欠ひどすぎ!軍に踏み込ませないでくれて、すごく助かったけど、どんだけ無理したの?!」

ミケは俺を見るなり、飛んできて、掌を合わせた。
流れ込む、甘露。
足りない、足りない、足りない。

「どうしよう、歩ける?迷宮の魔素退けようか。そうしたら、最短で家まで帰れ・・ん」

ミケを掻き抱いて、口づける。
ミケから立ち上る甘露の残滓が、呼び水のように投げ込まれた極上の魔素が、いまにも正気を押し流しそうだ。

「しぇ、シェド。分った、けど、ここは不味い。いちゃいちゃは軍には内緒でしょ?」

「どうでも、いい。ひとりで、家から出るな、ミケ」

何が、わかった?俺には何もわからない。軍がなんだと?壊してやろうか。
ミケを引きずって、迷宮回廊に飛び込む。

「まって、まって!魔素退けるから待ってってば、シェド!」

体に取り込めぬように細工された魔素が、魔素欠の神経を焦らすが、そのまま最短で屋敷に向かった。渇望と焦燥で頭がおかしくなりそうだ。

ミケが、俺に抱えられたままワタワタと暴れて、俺の周りの魔素を薄めている。
俺のためだとわかっていても、ミケに暴れられると、あの情動が、煽られてしかたがない。

正気を失った形相で屋敷に飛び込んだ俺をみて、使用人たちは皆、はじき飛ばされたように下がった。

寝室に直行して、ミケをベッドに転がす。

ミケはもう暴れていなかったが、逃げでもしたら、自分が何をするかわからなかった。
押さえつけてキスをする。自分が薄まって、他の何かが出てくる。
上着を脱ぎすてて、マーキングする動物のようにミケに体をこすりつけても、ろくに感覚がない。

「シェド、あの、魔素欠で気がせくのはわかるのだけど、私たぶん、すごく汗とかかいて、床も転がったから、ちょっと、水でいいから体拭いて来たくて・・」

聞けなかったし、体を動かしているのは、既に自分とは言いようのない別人格だった。
これは、もう、心配が昂じたとか、嫉妬とか、魔素欠とか、そう言う話ではなくて。
何かが自分の中にいるのだと気付いた時には、遅かった。

そいつがミケの上着をはぎ取る。

「・・・っ!」

現れたのは、ズタズタに裂かれて、かろうじてミケの素肌に引っかかっているシャツの残骸と、素肌に何条も刻まれた、真っ赤な鞭の跡。

何が、あった。あの頭のいかれたライヒに何をされ、ライヒに大量にミケの魔素が流れるような、何があったんだ!

そいつが、激昂すると、ますますシェドの意識が薄くなっていく。
それでも当然外から見れば当然シェドのままで。

俺の顔色を見たミケが、慌てた様子で説明にもならない説明を口にする。

「ちょっとした、かけ引きでこうなっただけ!なんともない、大丈夫!」

ひどい傷跡を見て、ミケの痛みを気遣う前に、ミケをひっくり返し、服をはぎ取り、ミケの体に他の男の痕跡がないかを探している?

自分が信じられなくて、止めようともがいてみるが無駄だった。
乗っ取られて勝手をする自分の動きに、吐き気がする。

俺のモノだ、俺のモノだ、俺のモノだ。
全裸にしたミケは、鞭跡だらけなのに。きっと今だって痛いだろうに。
うつ伏せにしたミケの頭を押さえつけて、覆いかぶさるお前は誰だ?

押さえつけられて髪をぐしゃぐしゃにしながら、一生懸命首を後ろに向けて、俺を見たミケは、泣きたくても泣けない時の顔をしていた。

幼い頃の、ミケのくそ親の側で、傷付けられている時の顔だ。我慢して我慢して、俺の顔を見てやっと泣き始める。ずっと、そうだったのに。

そいつが、ミケの背に、むしゃぶりついたのを境に、シェドの意識はとぎれとぎれになり、別の人格の喜悦が流れ込んでくる。

舐めまわし、肩に歯を立てる。
血がにじむ鞭の跡を吸い立てる。

「んっ、あ、や。シェド、怒っているの?しぇど・・・」

ミケの声が遠い。
それでも、血に混ざった魔素の味が、甘くて、甘くて。渇望を掻き立ててやまない。
もっと、もっとだ。
首筋にも、ウエストにも、むしゃぶりつく。
尻にも太腿にも、巻き付くように鞭の跡がまわっていて、目の前が赤く染まるようだった。
吸い立てるだけでは我慢できず、痛々しい鞭の跡すら歯を立てて、食らいついた。

「ふぃ、痛いよ、シェド、んぅ」

か細い声を上げるミケを無視して、足の間を無遠慮に触りまわすと、ミケは自分から、尻を持ち上げた。

「怒らないで、シェド。魔素はいくらでも、流せるから、お願い、怖くしないで」

震えながら、尻を高く突き出して、差し出された蜜口は、ほとんど濡れてもほぐれてもいない。
これを貫かれたら、どれほどつらいだろう。
泣かせて、押し潰して、制圧したいと、狂った情動が暴れる。
自制も正気も、疾うの昔に失せているそいつが、シェドの皮をかぶってミケに害をなす。

ズブリ

刃物で刺すように、自分自身の切っ先が、なんの思いやりも持たずにミケの蜜口を埋める。

「いーーっ、ひ、んんっ」

はふはふと、短い呼吸で痛みを逃がしながら、ミケが必死で魔素を流し始めた。魔素欠の体が狂喜してそれをむさぼった。
もっとたくさんよこせ。
ミケの辛そうな震えまでも快楽に変換されて、膨らみ切った男根ががめりめりとミケの中を進んでいく。

「うあ、ああっ、痛い、いたいよ、しぇど」

悲痛な声で痛みを訴えながら、やめてもらえなくても、止めてもらえなくても、ミケは魔素を流し続けていた。
狂った自分など放りだして逃げろと、とぎれとぎれにシェドの意識が叫ぶと、逆にそいつは、逃がすものかと押さえつける手に力を込めた。

狂ったそいつが、ミケに執着していることは、流れ込んでくる情動からも明らかで、質が悪かった。

愛しくて、愛しくて、愛しいのに。壊してしまいたい。
どこにも行けぬように、誰にも奪われないように。
なぜ、俺を捨てて、出て行った。なぜ、フィールなどを愛した。
ミケを斜めに向け、もち上がった腰骨に手をひっかけて、思い切り引きつける。

「うぐーーーっ!」

ほころばぬ蜜口に、反り返った男根を、根元までぎっちりと叩き込まれて、ミケは額から脂汗を流して苦しんだ。
甘くない、怯えと悲しみで揺れた魔素も、常軌を逸した旨さだった。

もっと、苦しめばいい。
俺から離れても、平気なミケなど。
他の男に、跡をつけられながら魔素を流してやるミケなど。
何度もミケの腰を力いっぱい引きつけながら、自分も腰を叩きつけて、ガツガツと大きな音を立てて、容赦なく抜き差しをした。

「あぐ、ううう、ひっ、ひぃっ」

背中にまで汗を吹き出させながら、ミケがのたうつ。
流される魔素には、怯えの色が濃くなっていくのに、抜き差しの滑りは良くなっていく。
あっという間に射精感が駆け上ってきて、なんのためらいもなく、そのまま解き放った。

「ああああああっ」
ミケの中が震えて、どくんどくんと濃い魔素が流れてくる。
魔素を吸い立てる快楽と、射精の快楽と、自分の下でへしゃげさせたミケを感じる満足と。
浸っているうちに、魔素欠の苦しさが、ほどけていく。

本当に自分勝手な、自分だけのものでしかない喜びが、情動を慰めて。
わずかな正気が兆したが、それはかえって状況を悪くした。
悲鳴ではないミケの小さな声が、耳に届くようになったからだ。

「ごめんなさい。怒らないで。言うとおりにするから。監禁所でも、ライヒのところでも行くから。ゆるして」

なんの話だ。
ライヒのところにいく?

ミケを引き起こすと、目が、俺に対する怯えの色でいっぱいだった。

・・・俺から、逃げたいか?

射精からたいして時間がたっていない、シーツで勝手にぬぐわれただけの男根を、ミケの口元に押し付ける。
顔を背けようとするのを許さず、乱れた髪を掴んで強引に口に押し込んだ。

髪の毛を手綱のようにして、ミケの頭ごと動かし、口で男根をしごかせた。
苦しそうにえずいて涎を流すミケを堪能するうちに、自分勝手な欲が体の奥底から止めどもなくあふれてくる。

ミケの口から引き抜いたそれを、すぐさまミケの蜜口にねじ込んで。
仰向けにして両足を持ち上げたり、四つん這いにさせて後ろから両腕を引っ張ったり、様々な体位で深く深くとえぐり続けた。

ミケは嵐に呑まれた木の葉のように、もみくちゃにされ、四方八方からの雷雨に耐え切れず、だんだんと意識の向こう側へと沈んでいった。

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