16 / 141
16. ミケの残念な助け船
しおりを挟む
「先生、コントロール、いりませんか?」
シェドの緊張がはりきったそこに、ひんやりした声が、滑り込んだ。
ミケが、手を挙げている。コイツも4日チョンボしていないせいで、酷い顔色なのだが。
「コントロール?」
「はい、いきなりライラの魔素を流して良い結果を見せても、シェドが凄いのか、ライラが凄いのか判らないのでは?先に、非才で無才の私がコントロールになりますよ?」
この莫迦、何を言い出すかと思えば。
俺の中で暴れている魔素でも吸い出す気か?
無理だ。教師はごまかせても、王やアドリスにはばれる。
「いえ・・」
「まぁ!そういえば、ミケでは測っていませんね!ぜひそうしてくださいませ!」
断ろうとした俺の言葉は、被せてきたライラの声に消され、教師は、フム、と間を置いた。
その隙に、ミケが静かに進みでる。
余計なことをと睨んでやるが、小さい体と土気色の顔に、必殺ポーカーフェイス。
コイツの特技発動だ。この顔の時ばかりは、コイツが王妃の家系なのを納得する。とても末席の末席には見えない。
ミケが、俺の手を取って掌同士をあわせる。ひんやりして、気持ちがいい。
「いいだろう。ミケ、魔素を流しなさい。」
「はい」
ミケは、俺が他人の魔素を取り込みたがらないのを知っている。俺の暴走の意味を知っている。
だから、吸って来ると思ったのに。
こんこん。
・・・絶句。
魔素でノックされたのは初めてだ。
おもわず、入ってます、とか答えそうになったわ、あほたれ。
遊びに来ましたー。ちょっとだけおじゃましますねー。
そんな感じで。行儀のいい子どもみたいな魔素が、遠慮がちに流れ始める。
吸われるのも押されるのも、拒絶しようと思っていたのに。
なんというか、毒気を抜かれて。
そして、入って来た魔素は、とても冷たくて気持ちが良かった。
ミケの魔素が、腐った熱を癒していく。
呼吸が楽になり、ガンガンと今にも割れて脳漿ぶちまけそうだった頭が軽くなっていく。
ひりつく心と体が、ひさしぶりの体に合う魔素を、あさましいほどに吸い上げていく。
干ばつでひび割れた大地に、待ち望まれた雨が浸みていくように。
気持ちが良くて、あの5才の時に熱をとってくれた母親の魔素のようで。倒れ込みそうになる視界の端に、王。
やばっ。
べりっ
ミケをというより、俺を引きはがす。
ばくばくばく。
心臓が鳴る。うっわ、恥ずかし。
10歳児に倒れ込みそうになったぞ。しかも、母親の影みて、とか。
赤ちゃん返りかよ!
ぜってー、夢に見るぞ。ほら、あれだ、いい年こいたオヤジが、赤ちゃんのふりしてばぶばぶいうやつ!
倦んだ熱も、割れるような頭痛もすっかり消えていた。
ただ、頬があつい。
ちくしょー、ミケのやつ、こんなことが出来るなら先に言え?!
アドリスが、王に何か耳打ちをしている。
大丈夫、大丈夫だ。
ミケは、言われた通り、魔素をながしただけ。
流れた量は、遠慮がちと言えるほどで、少なかった。
ただ、質が特殊なだけ。倦み果てた俺が数秒で回復するほどに。
正直この後、ライラの魔素が入ろうが、暴走する気がしない。
問題は、おれが恥ずかしいだけ!
シェドの緊張がはりきったそこに、ひんやりした声が、滑り込んだ。
ミケが、手を挙げている。コイツも4日チョンボしていないせいで、酷い顔色なのだが。
「コントロール?」
「はい、いきなりライラの魔素を流して良い結果を見せても、シェドが凄いのか、ライラが凄いのか判らないのでは?先に、非才で無才の私がコントロールになりますよ?」
この莫迦、何を言い出すかと思えば。
俺の中で暴れている魔素でも吸い出す気か?
無理だ。教師はごまかせても、王やアドリスにはばれる。
「いえ・・」
「まぁ!そういえば、ミケでは測っていませんね!ぜひそうしてくださいませ!」
断ろうとした俺の言葉は、被せてきたライラの声に消され、教師は、フム、と間を置いた。
その隙に、ミケが静かに進みでる。
余計なことをと睨んでやるが、小さい体と土気色の顔に、必殺ポーカーフェイス。
コイツの特技発動だ。この顔の時ばかりは、コイツが王妃の家系なのを納得する。とても末席の末席には見えない。
ミケが、俺の手を取って掌同士をあわせる。ひんやりして、気持ちがいい。
「いいだろう。ミケ、魔素を流しなさい。」
「はい」
ミケは、俺が他人の魔素を取り込みたがらないのを知っている。俺の暴走の意味を知っている。
だから、吸って来ると思ったのに。
こんこん。
・・・絶句。
魔素でノックされたのは初めてだ。
おもわず、入ってます、とか答えそうになったわ、あほたれ。
遊びに来ましたー。ちょっとだけおじゃましますねー。
そんな感じで。行儀のいい子どもみたいな魔素が、遠慮がちに流れ始める。
吸われるのも押されるのも、拒絶しようと思っていたのに。
なんというか、毒気を抜かれて。
そして、入って来た魔素は、とても冷たくて気持ちが良かった。
ミケの魔素が、腐った熱を癒していく。
呼吸が楽になり、ガンガンと今にも割れて脳漿ぶちまけそうだった頭が軽くなっていく。
ひりつく心と体が、ひさしぶりの体に合う魔素を、あさましいほどに吸い上げていく。
干ばつでひび割れた大地に、待ち望まれた雨が浸みていくように。
気持ちが良くて、あの5才の時に熱をとってくれた母親の魔素のようで。倒れ込みそうになる視界の端に、王。
やばっ。
べりっ
ミケをというより、俺を引きはがす。
ばくばくばく。
心臓が鳴る。うっわ、恥ずかし。
10歳児に倒れ込みそうになったぞ。しかも、母親の影みて、とか。
赤ちゃん返りかよ!
ぜってー、夢に見るぞ。ほら、あれだ、いい年こいたオヤジが、赤ちゃんのふりしてばぶばぶいうやつ!
倦んだ熱も、割れるような頭痛もすっかり消えていた。
ただ、頬があつい。
ちくしょー、ミケのやつ、こんなことが出来るなら先に言え?!
アドリスが、王に何か耳打ちをしている。
大丈夫、大丈夫だ。
ミケは、言われた通り、魔素をながしただけ。
流れた量は、遠慮がちと言えるほどで、少なかった。
ただ、質が特殊なだけ。倦み果てた俺が数秒で回復するほどに。
正直この後、ライラの魔素が入ろうが、暴走する気がしない。
問題は、おれが恥ずかしいだけ!
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる
KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。
城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる