ひどくされても好きでした

15. 王の視察

教育キャンプへの、王の視察が、長い。
もう4日目だ。どれだけ暇だ？
しかも、近衛に、8年前に見た男がいる。俺が王と王妃を吹っ飛ばしかけた時に、真っ先に部屋に駆け込んできた奴だ。隊長らしい。アドリス・ユラーと名乗った。
奴らの目が、俺から離れない。

大概ブチ切れそうになりながらも、目立たないように言われた課題をこなす。
出来過ぎてもダメ、できな過ぎてもダメ。凡庸に、従順に。

ここ4日、王やアドリスの目を気にしてチョンボが出来なかった俺の顔色は、誰もが病弱設定を疑わない程には悪いと思う。

それでも、王の前でインパクトのあるパフォーマンスを見せたい教師どもが、俺の相手にライラを据える。
予想できたことなので、ここに来る前にげろげろに吐いてみたし、ミケが吸い出してくれた時を思い出しながら、冷たい風にあたりまくったが、効果なし。

倦んだ熱が解放を求めて臓腑を焼く。
やむなく唯一メンタル的に効果がある瀉血というか捨血をしたせいで、めまいが止まらない。

「シェドは魔素が流れると武力属性が跳ね上がることがございまして。いまだ修練中ではありますが、なかなかの潜在能力なのです」

自慢げに解説する教師に向かってゲロってやりたくなったが、落ち着けと自分に唱える。まだ、武力属性が出てしまう位ならいい。だが暴走したら、ライラが焼ける。
好みじゃないと言うだけで、同窓生を焼くとかいうレベルなら、本当に俺は消えたほうがいい。

ひりつく喉に、熱を、飲み込み、覚悟を決める。