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4☆一緒にお食事
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「私は、川に行きますけど、サフラさんはどうします?」
ユオに声をかけられると、それだけで楽しい。
そして川、は、ぜひともご一緒したい。飲食物全般持ち込み禁止なので、背嚢の中に水筒はあっても中身は空だ。のどがかわいた。
ついでにいうなら、この気前の良いナッツバー職人ユオを、魔物のエサにしたくない。
「行きます」
真っ先に川に出るのは定番のコースなので、地図は頭の中にある。
言葉尻から、ユオが川までの道も詳しいことはすぐわかったが、貴族種が被食者に介助されるとか、ちょっとまずい気がして、先に立った。
ユオは色々採取しながら歩いていた。かなり僕から離れることもあったけれど、足音は静かで、ほとんど他の生き物を刺激しない。
どう見たって、食用奴隷のはずのユオのレベルは今年の試験生の中でも上位ランクです。
途中で心配する気も失せたけれど、これはいくらなんでもおかしくはないだろうか。
川に出ると、真っ先にマンティコアの小腸だの胃だの洗い始める。髪ゴムは、数枚表面のカラフルな羽根を剥いだだけで、他は必要ないと言って返してくれた。
で、何をするのかと見ていたら、小腸に毒針をつけて、カラフルな羽根もつけて、石をひとまきして投げた?!
どぶん
深そうなところまでとんだ石が沈んでいく。
「何のおまじない?」
「・・・。偏食のサフラさんが食べられるかは知らないけど、私は、さかなを釣って食べますから」
「へ?鳥の羽根で釣れるんです?」
「気になるのはそこ?私は、自分で釣った魚を食べる、と言っているのだけど」
「ど、どうぞ?流石に横取りするほど図々しくないですよ?」
武士は食わねど高楊枝、と、乳母にならった。美味しそうだけどさ。
よだれ顔で虚勢を張る僕を二度見して、ユオはなぜかため息をついた。
「も、いいです。たべられるなら、サフラさんの分も釣ります」
マジで?やったぁ!普通の魚が釣れますように!
大丈夫だよね、川に人魚って聞かないし、きっと人型魔物じゃない!
ドキドキで見守る僕の前で、ユオは、ポンポンと魚を釣った。
ユオすげぇ!こんなにテンション上がったの、何年ぶりだろう。
人面も手足もついていない!地味な!川魚!!
それから起こったことは夢のようだった。
ユオは、なぜだか、手から油だの塩だのが、出せた。
僕が出せるのは、火炎だの雷だのしかないのに、なんという格差。
なぜそんなことが出来るのかと聞いたら、『クレーム係さん』がくれた粗品だと答えた。
意味がわからないが、匂いが半端なく素敵なのでいいことにする。
で、魚や道で採取した植物をつかって、から揚げというものを作ってくれた。
これがもう、うんまい!!
これまでの人生で食べたどんなものより、間違いなくおいしい!
それから、なんかの果実のしぼり汁をすり込んで葉っぱで包んで蒸したマンティコアの肉が・・・柔らかい上に、臭みがないのですが?なんの魔術だ?!
おいしいものでお腹がいっぱいって、こんなに幸せなのか?!
格付け試験なんてすっぽかして、ユオに料理習って一生ここで暮らしたいとか、本気で思いながら、デザートの果物までフルコースでお世話になった僕に、ユオはあきれ顔で言った。
「偏食設定、どこやりました?」
う。美食欲の前にはかなく溶けました。
「一生に一度のご馳走かもしれないのに、見栄なんてはれません!黙っていてくれるなら、何でも言うこと聞きます!」
「安い!何でも言うこと聞く対価が安すぎませんか、貴族種!そこはせめて脅すとか?!」
「おどすネタがない、です。お世話になりっぱなしで・・・」
「いや、ありますよね?!食用奴隷が柵の外でご飯食べているのですけど?」
そう言えば、さっきも似たようなこと言っていたな。
「駄目、なの?」
「食用奴隷のご飯は、ドラッグ・ロック仕様なんですよ。抗不安薬とか鎮静化薬入りで、貴族種の暗示にかかり易くされていて。だから、外で飯食べているのがばれたら、私は柵内には戻れません」
「えええ―?!食用奴隷が、捕食者について行っちゃうのって薬のせいなの?術者がそれ気づかないって、どうなんだろ?」
俺様・私様の貴族種は、大抵、自分の格が高いから『格下』な人間を暗示で操れるのだと信じているのだ。自己奉仕バイアスってやつか?ハズカシ!
「いつまでたっても暗示をかける気配がないサフラさんの方がどうなんです?!」
うっかりしていた。食用奴隷は普通、暗示をかけないと、柵を超えてくれない。そりゃそうだ。貴族種も魔物も捕食者なんだから、そのままだったら恐怖心とか警戒心とか感じて当然。
「え、ひょっとして、ユオ、さん、今怖い?あ、僕が不快なら、僕が子犬に見える暗示とかする?」
「・・・暗示なくても、すでに子犬・・・魔物無関係に、おやつを追って崖から落ちるサフラさん、とか、ありそうな気がしてきました」
「心配されているの、僕のほう?!これでも、年の割にはしっかり者だよ?」
「どう見ても、うっかり者です!なんかめちゃくちゃ心配になって来た。も、私、サフラさんについて行きましょうか?」
「このさき、魔物うじゃうじゃなのに?」
「毎日おやつ付きになりますよ」
「ええっ?!ぼ、僕、命がけでユオさんを守る!!」
こうして、僕のなかの一番の目標は、ユオと一緒に生きること、になった。
ユオに声をかけられると、それだけで楽しい。
そして川、は、ぜひともご一緒したい。飲食物全般持ち込み禁止なので、背嚢の中に水筒はあっても中身は空だ。のどがかわいた。
ついでにいうなら、この気前の良いナッツバー職人ユオを、魔物のエサにしたくない。
「行きます」
真っ先に川に出るのは定番のコースなので、地図は頭の中にある。
言葉尻から、ユオが川までの道も詳しいことはすぐわかったが、貴族種が被食者に介助されるとか、ちょっとまずい気がして、先に立った。
ユオは色々採取しながら歩いていた。かなり僕から離れることもあったけれど、足音は静かで、ほとんど他の生き物を刺激しない。
どう見たって、食用奴隷のはずのユオのレベルは今年の試験生の中でも上位ランクです。
途中で心配する気も失せたけれど、これはいくらなんでもおかしくはないだろうか。
川に出ると、真っ先にマンティコアの小腸だの胃だの洗い始める。髪ゴムは、数枚表面のカラフルな羽根を剥いだだけで、他は必要ないと言って返してくれた。
で、何をするのかと見ていたら、小腸に毒針をつけて、カラフルな羽根もつけて、石をひとまきして投げた?!
どぶん
深そうなところまでとんだ石が沈んでいく。
「何のおまじない?」
「・・・。偏食のサフラさんが食べられるかは知らないけど、私は、さかなを釣って食べますから」
「へ?鳥の羽根で釣れるんです?」
「気になるのはそこ?私は、自分で釣った魚を食べる、と言っているのだけど」
「ど、どうぞ?流石に横取りするほど図々しくないですよ?」
武士は食わねど高楊枝、と、乳母にならった。美味しそうだけどさ。
よだれ顔で虚勢を張る僕を二度見して、ユオはなぜかため息をついた。
「も、いいです。たべられるなら、サフラさんの分も釣ります」
マジで?やったぁ!普通の魚が釣れますように!
大丈夫だよね、川に人魚って聞かないし、きっと人型魔物じゃない!
ドキドキで見守る僕の前で、ユオは、ポンポンと魚を釣った。
ユオすげぇ!こんなにテンション上がったの、何年ぶりだろう。
人面も手足もついていない!地味な!川魚!!
それから起こったことは夢のようだった。
ユオは、なぜだか、手から油だの塩だのが、出せた。
僕が出せるのは、火炎だの雷だのしかないのに、なんという格差。
なぜそんなことが出来るのかと聞いたら、『クレーム係さん』がくれた粗品だと答えた。
意味がわからないが、匂いが半端なく素敵なのでいいことにする。
で、魚や道で採取した植物をつかって、から揚げというものを作ってくれた。
これがもう、うんまい!!
これまでの人生で食べたどんなものより、間違いなくおいしい!
それから、なんかの果実のしぼり汁をすり込んで葉っぱで包んで蒸したマンティコアの肉が・・・柔らかい上に、臭みがないのですが?なんの魔術だ?!
おいしいものでお腹がいっぱいって、こんなに幸せなのか?!
格付け試験なんてすっぽかして、ユオに料理習って一生ここで暮らしたいとか、本気で思いながら、デザートの果物までフルコースでお世話になった僕に、ユオはあきれ顔で言った。
「偏食設定、どこやりました?」
う。美食欲の前にはかなく溶けました。
「一生に一度のご馳走かもしれないのに、見栄なんてはれません!黙っていてくれるなら、何でも言うこと聞きます!」
「安い!何でも言うこと聞く対価が安すぎませんか、貴族種!そこはせめて脅すとか?!」
「おどすネタがない、です。お世話になりっぱなしで・・・」
「いや、ありますよね?!食用奴隷が柵の外でご飯食べているのですけど?」
そう言えば、さっきも似たようなこと言っていたな。
「駄目、なの?」
「食用奴隷のご飯は、ドラッグ・ロック仕様なんですよ。抗不安薬とか鎮静化薬入りで、貴族種の暗示にかかり易くされていて。だから、外で飯食べているのがばれたら、私は柵内には戻れません」
「えええ―?!食用奴隷が、捕食者について行っちゃうのって薬のせいなの?術者がそれ気づかないって、どうなんだろ?」
俺様・私様の貴族種は、大抵、自分の格が高いから『格下』な人間を暗示で操れるのだと信じているのだ。自己奉仕バイアスってやつか?ハズカシ!
「いつまでたっても暗示をかける気配がないサフラさんの方がどうなんです?!」
うっかりしていた。食用奴隷は普通、暗示をかけないと、柵を超えてくれない。そりゃそうだ。貴族種も魔物も捕食者なんだから、そのままだったら恐怖心とか警戒心とか感じて当然。
「え、ひょっとして、ユオ、さん、今怖い?あ、僕が不快なら、僕が子犬に見える暗示とかする?」
「・・・暗示なくても、すでに子犬・・・魔物無関係に、おやつを追って崖から落ちるサフラさん、とか、ありそうな気がしてきました」
「心配されているの、僕のほう?!これでも、年の割にはしっかり者だよ?」
「どう見ても、うっかり者です!なんかめちゃくちゃ心配になって来た。も、私、サフラさんについて行きましょうか?」
「このさき、魔物うじゃうじゃなのに?」
「毎日おやつ付きになりますよ」
「ええっ?!ぼ、僕、命がけでユオさんを守る!!」
こうして、僕のなかの一番の目標は、ユオと一緒に生きること、になった。
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