青春ロック

1

「すごかったよ、ライブ！　感動した！　」



　文化祭の翌日、私はそんな言葉を飽きる程耳にした。
　それはそれでうれしくはあったけど、どこかそんな評価が当たり前のようにも
　思えていたのは私の中で既に答えが出ていたからなのだろう。
　


　最初は遊びの延長みたいなもので、自分でもただ楽しいからという理由でしか
　なくって、そんな感じで始めたのにいつの間にか本気になっていたのだ。
　ライブに出られるぐらいの腕前程度には。
　
　
　
　当然、そんなに簡単な世界ではないという事ぐらいはわかっている。
　でも、それでもかけてみてもいいと思えたのはこの板の上から見える人達が
　私の歌でこんなにも熱狂している様を見てしまったからだろう。
　
　
　
　こんな感覚、今までに味わった事などなかった。
　きっと今、私の頭の中は脳汁が溢れ出してびちゃびちゃになっている事だろう。
　
　
　
　この感覚は何物にも代えがたい。
　だから私がこれ以上を求めるのならば目指すべきはこんな田舎から出て
　都会でプロデビューをするしかないのだ。



「お前は馬鹿なのか！　そんなもの上手くいく訳がないだろう！　」



　何も知らない父親からは当然のように罵倒された。
　学校を辞めて行くなんて言ったら当然こうなることはわかっていた。
　でもそんな事を言われた程度で諦められるはずもなかった。
　
　
　
「せめて卒業してからでもいいんじゃないの？　」



「ダメなの！　今じゃないとダメなの！　」



　そりゃあ学歴だけで生きて行けるのは知ってはいる。
　でもそんなのは本物じゃあない、ロックじゃない！
　私はロックをしたいんだ！
　
　
　
　そんなぬるい人生に何の価値があるっていうのか？
　そんなのは私じゃない、間違っている！　
　だからそんな甘えなんて必要ない、逃げ場所なんて必要ない。



　そして私は何もかもを捨てた。