柳沢信一郎はブレない

4

　大人になって変わった事、それは兄の言う事をもうきかかなくなった事。
　大人になって変わった事、それは自分の信念に基づいて行動するようになった事。
　
　
「宇都宮さん！　」


　信一郎は毎日のように宇都宮に会いに行った。
　彼も決して拒む事も無かったから、信一郎はこれがいつまでも続くのだとばかり
　思っていた。
　
　
「もう君とは会わないよ」


　突然の拒絶。
　
　
「そんな急に、どうしてですか？　」


　何も宇都宮は答えてはくれなかった。
　突然の別れは信一郎を自暴自棄にし、手当たりしだいケツにぶち込む日々だった。
　そんな事で有名になった信一郎が相手に困る事などなく。
　
　
　でも、そんな事をしたって信一郎は満たされない。
　宇都宮以外では何も感じない。
　だから決めたのだ、もう誰も相手にしないと。
　
　
　
　
　＊＊＊＊＊
　
　
　
　
　少しばかり昔の事を思い出してしまったのは、久々だったからか？
　信一郎は物思いにふける。
　やはり自分には彼だけだったんだと再認識した。
　
　
「え！　」


　だからこうやって再び出会ってしまうのは運命なのだろう。
　
　
「やあ、久しぶりだね信一郎。これから二人で話せるかな？　」


　そう聞かれた信一郎の答えなんて決まっていた。
　いつだって自分の信念に基づいた発言をする。
　だから柳沢信一郎はブレない。