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第3章
3 授業
しおりを挟むお昼を共にした日から、毎日のように一緒に過ごすようになった四人。授業の話から自分の話まで、様々な事を話した。打ち解けるのも早く、敬称をつけずに呼び合う仲になったようだ。
今日のお昼休憩では、どうやら自分たちの将来について話しているようだ。
「クレアは近くに良いお手本がいるし、将来はマノン先生のような教員を目指しているの?」
ルイーズがクレアに問いかけた。
「教員は目指していないわ。姉に憧れて、侍女科に入学はしたけれど、将来は王宮で働きたいと思っているの。私は男爵家の次女だから、一人で生きていく道も視野に入れないとね。家族からは、良い相手がいたら直ぐにでも婚約するように言われているけれどね。」
「そう、王宮……。もうそこまで考えているのね。」
感心するかのように頷くルイーズ。その横では、エリーがミアに問いかけた。
「ミアも、将来については決めているの?」
「私は商会の一人娘だから、将来はお婿さんを迎えて、商会を継ぐように言われていたの。私もずっとそのつもりでいたけど。弟が生まれてからは、自由に決めて良いって言われて、今悩んでるところ。でも、弟が大きくなるまでは、私も商会の手伝いをしたいな」
「そう。そういう事まで考えているのね」
ルイーズとエリーは感心しきりになっているのか、何度も頷いている。
クレアから二人にも、同じ質問が問いかけられた。
「私は、まだ先のことは何も決めていないし、決まっていないわ。でも今は、侍女科の授業がすごく楽しくて、本当にここに来て良かったと思っているわ」
「私は、しばらくの間は侍女として働くことが決まっているけれど、ゆくゆくは祖母のハーブ園で働きたいと思っているの。祖母の役に立ちたくて、侍女科で学ぶことを決めたの」
晴れやかな顔のルイーズと真剣な顔のエリー。
「そっか」「そうなの」
友人の口調や表情から、ミアとクレアも何か思うところがあったのだろうか。
四人それぞれが、自分にしか分からない感情や背景を抱えているのかもしれない。
皆それ以上のことは言わずに、裏庭を後にした。
♦
午後の授業は、お化粧と髪の整え方を学ぶようだ。二人一組になり練習をする。
マノン先生からの説明を聞いて、質問をするルイーズ。
「先生、私どうしても髪を高い位置できれいに結うことができないのです。
なにかコツなどありますか?」
「そうですね……。それではルイーズさん、一度普段通りに髪を結わいてもらえますか」
ルイーズはペアのエリーに断りを入れると、髪を結い始めた。
「ルイーズさん、もう少し髪をしっかり持ってください。そうです。それからブラシの持ち方ですが、後髪と横髪を上に持ち上げる時にブラシを縦にして……柄は上にしてください。
そうです。そのまま髪を手の平の中に集めるように引き上げてください。良いですね。どうですか? コツは掴めましたか?」
「はい、ブラシを縦にすると、髪が扱いやすいです」
「そうですね。他にも分からないことがあったら、直ぐに聞いてくださいね。それから髪質は人それぞれですから、色んな方の髪の毛で、試してみると良いですよ」
「はい、ありがとうございます」
この様に授業は進んでいくようだ。どうやらコツ掴んだようで、ペアを替えながら何人もの髪を結わいていくルイーズ。集中すると、少し周りが見えなくなるらしい。
クラスメイトは苦笑いしながらも、みんな優しく対応してくれているようだ。
♦
就寝前、ルイーズは自室の机に〈Lノート〉を出して、なにやら考え事をしているようだ。
「エリー、クレア、ミア 三人ともこれからの事をきちんと考えているのね」
独り言をつぶやきながら、何やらノートに書きこんでいく。
「これから、お茶会でのサーブの練習があって、淑女科の上級生のお茶会で実践ね……。」
新たな目標だろうか。夢中でノートに書きこんでいく。
最近は、窓からのぞく月の光にも気づかないくらいに、没頭していることが多いようだ。
こうして……
今夜も夜が更けていった。
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