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第2章
7 報告(父不在)
しおりを挟む事務室から教室へ戻ったルイーズは、エリーを見つけるとすぐさま近くへ駆け寄った。
「ルイーズ、おはよう。どうしたの、何かあったの?」
「エリー、おはよう。今、事務室に行ってきたの。急遽、院長先生とソフィア先生に面接をしていただけることになって……転科の許可をもらったわ」
「えっ、本当? もう面接をしたの? 早いわね……。でも、嬉しい。」
口調は抑えているが興奮気味のルイーズに、エリーは驚きと嬉しさで、中々言葉が出てこないようだ。
その時、始業の鐘が鳴り、急いで着席する二人。その日は二人ともが嬉しさのあまり、そわそわと落ち着かない一日を過ごした。
屋敷へ帰ったルイーズは、馬車から降りると出迎えてくれたトーマスとローラ、御者のモーリスに学院から転科の許可が出た事を伝えた。すぐさま父親が在宅しているかを確認すると、仕事で不在であることが分かったため、リアムとミシェルに会いに行った後は母親の元に行っても大丈夫かの確認を取った。ローラがすぐさま確認してくれるそうなので、その間に二人の所へ向かうようだ。
「リアム、ミシェルただいま」
「姉上、お帰りなさい」「ねえたま、おかえり」
ルイーズは二人を抱きしめた。キャッキャと喜ぶミシェルに、何かあったのかと心配するリアム。
「急にごめんなさい。今日は嬉しいことがあったの」
ホッと安心するリアム。
「嬉しいことなのですね、それなら良かったです」
「ねえたま、うれしいの? よかったね」
「二人ともありがとう、また後でお話しましょうね。それから……約束をしたお茶会だけど、三人でお菓子を作るでしょう。その時に、二人が食べたいと思うお菓子を、後で教えてくれる?」
「分かりました。ミシェルと考えておきます」
「ミシェルケーキたべたい」
「わかったわ、どんなケーキが食べたいか、後でお姉さまに教えてね。リアムもね」
「分りました」「うん、わかった」
二人と、約束を交わしてから部屋を出ると、廊下ではローラが待っていた。ローラが母親の侍女であるマーサに確認をして、こちらに知らせてくれたようだ。部屋で待っていてくれるそうなので、急ぎエイミーの元へ向かう。
部屋の前に着くと、ドアをノックするルイーズ
「お母様、ルイーズです」
「どうぞ、入って」
部屋に入ると、エイミーはソファーに座って、ルイーズを待っていてくれたようだ。
「失礼します。お母様、ごめんなさい。今日は、どうしても早くお母様にお話しをしたかったので、二人は一緒ではないのです」
「そんな時もあるわ。二人には夕食の時にも会えるのだから、気にしなくて良いのよ」
「はい」
「ルイーズここに座って。お話があるのでしょう」
ソファーへ座るように促され、エイミーの横に腰かけるルイーズ。
「お母様、昨日はありがとうございました。お父様に口添えしてくださったのでしょう?」
「そうね。お父様は、貴女に苦労してほしくないとおっしゃっていたわ。親として、その気持ちもわかるのよ。でも貴女が『新しいことに挑戦したい』と言ったとき、私は嬉しかったの。
私は学生の時に興味を持ったことがあっても、何もせずにその思いに蓋をしたわ。貴族令嬢として……、そういう思いの方が強かったのね。時代が許さなかったとしても、何かできたはず……。今ならそう思うわ。だから、ルイーズとリアム、そしてミシェルの三人には、自分の気持ちを大切にしてほしいと思っているわ」
母親の発言にあった《貴族令嬢として》それを聞いたルイーズは、この数日の間に自分も何度もそのことを考え、悩んだことを思い出す。だから、母親が自分の思いに蓋をしたことも良くわかるのだ。それでも、母は自分のことを応援してくれている。ルイーズは母親に感謝の念を抱いたようだ。
「お母様ありがとう。私、頑張るわ」
頷き返すエイミーに、ルイーズは今日の出来事を話し始めた。
「今日は、転科手続きのために事務室に行ったのです。その時、淑女科のソフィア先生と院長先生が、その場で面接をしてくれました。本当は、他の先生も交えて面接を行うそうですが、三人で面接をして、その場で転科を許可していただけました」
「そうなの、それは急展開ね」
「はい。その後、院長先生から『中々難しいことだけど、今の気持ちを持ち続けて。その気持ちを忘れなければ大丈夫』とお言葉を貰いました。院長先生とは、対面でお話したことが初めてだったので、緊張しましたがとても嬉しかったです」
「そう……。院長先生が……」
エイミーは昔を懐かしむように、話し始めた。
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