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孤城の落月 三

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「今日は用事で帰りが遅くなるが……。次に来たときには会えるだろう」
 一瞬、安堵したのちに、はかりしれない恐怖が竹弥を襲う。
 まさか、とは思うが……。まさか、杉屋は、自分を浦部に会わせるつもりなのだろうか。けっして、普通に会わせるわけではないことを、竹弥は本能的に察知して、また背筋を凍らせた。
 クイ――!
 紐が引っぱられ、臀部に雷が落ちたように、はげしい緊張が走り、四肢が震えた。
 それが幾度かつづき、とうとう、竹弥は耐えきれず、内にひそめていた道具を逃してしまった。
 同時に、ぜていた。
(ああ……)
 羞恥と恥辱に涙ぐみながらも、悦楽の波にすべてをゆだねてしまう。

 昼過ぎになると、彼らは帰っていったようで、静かになった。
「明日、また来るさ」
 紐縄を解かれながら言われ、竹弥は文字どおり身をふるわせた。
「も、もう嫌だ! 絶対嫌だ!」
「騒ぐなよ。ああ、手首を紐でこすったな。おまえ、あんまり暴れるなよ。せっかくの玉の肌に傷がつくだろう」
「だ、誰のせいだと思っているんだ!」
 すべて、この杉屋という男のせいだ。
「誰のせいって? そりゃ、おまえのせいだろう」
 畳のうえに胡坐すわりになった杉屋は、竹弥を猫のように軽々とおのれの脚の上に抱きかかえた。
「あ、よ、よせ!」
「こうなったことは、すべておまえがいけないんだぞ」
「な、何故だよ?」
 服ごしにも杉屋の下半身の熱を感じながら、竹弥は訊かずにいられない。
「おまえがな、美しくて、色っぽくて、それでいて無垢だからさ。もっとも、今はもう無垢とも言えないかもしれないがな」
 背後からうなじ に息を吐きつけられ、竹弥は困惑しつつ抗った。
「は、はなせよ」
「明日は、またたっぷり楽しませやるからな」
 たまらなくなって、叫んだ。
「も、もう嫌だ! もう、こんなことは本当に嫌なんだ」
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