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桜散華 三

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 竹弥が身をふるわせるたびに、かすかな音が和室に響く。
 憎悪すべき男を睨もうとしたが、竹弥が状況にしばし呆然としてしまっていたあいだに、杉屋は室から消えていた。
「畜生、どこ行っているんだよ!」
 竹弥は、どうにかして手首を戒めている紐をほどけないかと苦心してみたが、まったくほどけそうにない。杉屋の縛りかたは専門的なのだ。
「くそぉ……」
 動いていると、体内に埋め込まれている小さな道具が存在を主張してくる。それを堪えて、尚も逃れる努力をしたが、徒労となった。
 せめて柱にしばりつけられた紐を、なんとかできないかと思ったが、後ろでしばられている手でほどけるようなものではなかった。いや、仮にしばられていなくとも、杉屋の縛りは素人にはほどくことはできないだろう。刃物でもなければ無理だと竹弥もやっと諦めた。
「はぁ……」
 肌寒さも忘れて竹弥は額に汗を感じていた。
 疲労にむなしい息が漏れ、畳の上に座りこんだ――その瞬間、すさまじい刺激が臀部から突き上げてきた。
(あっ、な、なに……?)
 今まではどうにか無視できていた体内の淫らな異物が、もはや無視できないほどの感触を腰から脳にめがけて伝えてきたのだ。
 塗られた軟膏が、効果を発揮しはじめたのだ。
「畜生!」
 この言葉を呟くのは、いったい何度目か。竹弥はいつもは涼やかに美しい顔を赤く燃やして、苦悶の吐息をはなった。
「うう……」
 立ったり座ったりして、どうにかして、少しでも体内の責め具を意識しないで済む方法を考えたが、どうにもならない。
 まるで時限爆弾のように、その小さな凶器は竹弥に聞こえないはずの秒針を響かせてくるのだ。
「ああ……」
 額に、先ほどとはちがう新たな汗がにじむのを竹弥は自覚した。
(どうしよう……。ああ、どうしたらいいんだ)
 次の瞬間、竹弥は息を飲んだ。
「はぁっ!」
 股間にはじけるような疼きが走ったのだ。
 竹弥は、咄嗟に、のけぞった。
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