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菫責め 五
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「駄目じゃ」
王という高御座にいる者のつねとして、情というものを持たない権力者は、冷酷無残にもそう言ってのけた。
そして絶望に喘ぐアベルに向かって尚も言いはなつ。
「今宵は胸だけじゃ。辛ければ、胸だけで達してみせよ」
「初日でそれは無理かもしれません。……下手したら、気が狂うかもしれませんよ」
なだめるようなカイの言葉を、やはり王は拒絶した。
「狂ってもかまわぬ。今宵は胸だけじゃ」
笑みを浮かべて言う男を、アベルは今にも失神しそうになりながら、あらんかぎりの憎しみをこめて睨んでいた。
その憎しみの刃のような視線を受けて、ディオ王は莞爾と笑ってみせる。
アベルは唇が切れるほどに噛みしめていた。
(かならず……殺してやる……!)
どこかで糸の切れるような、布が裂けるのような音が響いたかと思うと、アベルの視界は真っ暗になった。
「びっくりしました。最初の日で、乳首だけであんなふうになるとは。やはり、アルベニス伯爵は素質がおありだったのですね」
カイの揶揄をふくんだ感想を聞きながら、アベルは褥にうつぶせていた。布に胸が擦れるとひりひりと痛むが、そんな身体の痛苦など気にもならない。
あのあと……、屈辱と憎悪に身体を燃やしたあげく、アベルは本当に胸だけで達してしまったのだ。そのときのことを思い出すと、羞恥に五体が焦げるようだ。
少しまえに食事を出されたが、水以外はとても口に入れる気にはならず、すべて下げさせた。頭がぼんやりとして、身体が泥のようにだるい。
(死んでしまいたい……!)
目が覚めたときアベルは、広間ではなく、彼のためにあてがわれた居室に自分がいることを自覚した。中庭からは優しい風と小鳥の鳴き声が入ってくる。すぐそこに光あふれる場所があるというのに、今のアベルにははるか彼方の世界のようだ。
錦の敷布のうえでアベルは身体を横向きにし、カイたちに顔を見せないようにした。
眠っているあいだに三人が身体を拭いてくれたのか、やけにさっぱりするのを感じたが、意識がないあいだに身体を見られたり触られらりしたのかと思うと、またあらたな屈辱感がこみあげてくる。
しかも、身体は清められてはいても、全裸のままで両手と首をいましめる黄金の枷はそのままだ。アベルは身体を守るように掛け布をたぐりよせたが、些細な動きを取るにも手首の枷が重く邪魔になり眉をしかめた。
王という高御座にいる者のつねとして、情というものを持たない権力者は、冷酷無残にもそう言ってのけた。
そして絶望に喘ぐアベルに向かって尚も言いはなつ。
「今宵は胸だけじゃ。辛ければ、胸だけで達してみせよ」
「初日でそれは無理かもしれません。……下手したら、気が狂うかもしれませんよ」
なだめるようなカイの言葉を、やはり王は拒絶した。
「狂ってもかまわぬ。今宵は胸だけじゃ」
笑みを浮かべて言う男を、アベルは今にも失神しそうになりながら、あらんかぎりの憎しみをこめて睨んでいた。
その憎しみの刃のような視線を受けて、ディオ王は莞爾と笑ってみせる。
アベルは唇が切れるほどに噛みしめていた。
(かならず……殺してやる……!)
どこかで糸の切れるような、布が裂けるのような音が響いたかと思うと、アベルの視界は真っ暗になった。
「びっくりしました。最初の日で、乳首だけであんなふうになるとは。やはり、アルベニス伯爵は素質がおありだったのですね」
カイの揶揄をふくんだ感想を聞きながら、アベルは褥にうつぶせていた。布に胸が擦れるとひりひりと痛むが、そんな身体の痛苦など気にもならない。
あのあと……、屈辱と憎悪に身体を燃やしたあげく、アベルは本当に胸だけで達してしまったのだ。そのときのことを思い出すと、羞恥に五体が焦げるようだ。
少しまえに食事を出されたが、水以外はとても口に入れる気にはならず、すべて下げさせた。頭がぼんやりとして、身体が泥のようにだるい。
(死んでしまいたい……!)
目が覚めたときアベルは、広間ではなく、彼のためにあてがわれた居室に自分がいることを自覚した。中庭からは優しい風と小鳥の鳴き声が入ってくる。すぐそこに光あふれる場所があるというのに、今のアベルにははるか彼方の世界のようだ。
錦の敷布のうえでアベルは身体を横向きにし、カイたちに顔を見せないようにした。
眠っているあいだに三人が身体を拭いてくれたのか、やけにさっぱりするのを感じたが、意識がないあいだに身体を見られたり触られらりしたのかと思うと、またあらたな屈辱感がこみあげてくる。
しかも、身体は清められてはいても、全裸のままで両手と首をいましめる黄金の枷はそのままだ。アベルは身体を守るように掛け布をたぐりよせたが、些細な動きを取るにも手首の枷が重く邪魔になり眉をしかめた。
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