煉獄の歌 

文月 沙織

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 いつかのときのように瀬津は敬を膝にかかえあげ、幼児に仕置きをするような体勢を取らせる。緋色の襦袢をからみつけた身体は、対照的に白い肌をちらつかせ、見ている男たちの目を刺す。
「相変わらず綺麗な肌だな。見てみろ、まるで熟しきらない桃のようだぞ。どうだ、嶋、おまえの主、いや、元主の尻は? 美しいだろう?」
 言われた嶋は耳朶まで赤く染めて目を伏せる。ぎゃくに田中は欲望の火を放つような双眼を白い肉に向けている。
「は、はなせ! はなせよ!」
 敬はすっかり抑えこまれて、尚、瀬津の膝上でもがいた。
 敬も喧嘩は強い方で、街では知られた不良だったが、本職の極道、それも若頭を勤める瀬津を前にしては、狼にとらわれた小兎だ。
 圧倒的な力の差に敬は悔しさのあまり畳に爪をたてたが、それはいっそう瀬津を面白がらせただけだ。
「本当に、どうしょうもないじゃじゃ馬だな。お仕置きだ。ほれ、」
 打擲の音。
「ひっ!」
 びくん、と敬の身体が跳ねる。
 剝きだしの尻を、瀬津の無骨な手が打つ。
 さらにもう一度。
「ひぃっ!」
 二度、三度……とつづく。
 人の肉が肉を打つときの、微妙で絶妙な音が座敷にこだまする。
 すでにこの壮絶な羞恥と屈辱と苦痛をあたえる仕置きを受けたことのある敬は、このあと我が身に起こることを予想して、恐怖にうちふるえた。
「くそぉ……! やめろ、やめろよ! あっ、ああ……」
 汗を吸った襦袢がいっそう淫らに敬の身体にしがみつく。
 数度目かの打擲のあと、敬が恐れたことが起こりはじめた。
「は……ぁ」
 悩ましい吐息とともに、熱くなった腰がふるえる。
「くっ、くっ、くっ」
 瀬津の嘲笑が、鼓膜に痛いほど響く。
 敬は畳の目を引き裂かんばかりに爪に力をこめて、身体の内に起こった変化をおさえこもうとしたが、若い肉体は、本能に忠実だった。
「思ったとおり、とんでもない淫乱だな、おまえは」
 きつい言葉が、いっそう脳をしびれさす。
 敬は朦朧もうろうとしながらも、視界が涙で霞むのを自覚する。
「は、あぁ……!」
 突如、蕾に生温かいものを感じた。器具と違って、たしかに血の通いを感じさせるもの。
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