煉獄の歌 

文月 沙織

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「このホモ野郎ども! そんなに男の身体が見たけりゃ見せてやる! ほら、よく見ろよ!」
 言うや、肩にまとわりついていたシャツをいさぎよく脱ぎ捨て、さらに敬はみずからズボンを脱ぎ捨てる。
「ほう。いい覚悟だな」
 言いつつ、瀬津は目をかすかに見開く。
 薄暗い和室に、ほのかな燐光りんこうすら滲ませて、十九の若々しく瑞々しい肢体が輝くのに、男たちは一瞬、気を飲まれたように魅入った。
「まだ、残っているぞ」
 わざとらしげにいやらしく瀬津が笑う。
 さすがに最後の一枚に手をかけるのは躊躇ためらわれて、敬の手は動かない。
「ほら、どうした? さっさと脱げ」
「変態ども!」
 言うや、敬は覚悟を決めて白い下着を自ら脱ぎ捨てた。
「ほう……」
 残酷な男たち四人にとりかこまれる形で敬は生まれたままの姿を晒し、八つの目に射抜かれる苦痛に耐えた。
 鬼若ほどではないが、敬も男にしては肌は白い方だ。
 その白い、染みひとつない肌を、かすかに火照ほてらせて、屈辱に耐え観察者たちの容赦ない視線に全身を晒す。
 まだ肌寒い季節で、よく見ると肌は冷たい空気に刺されてこわばっているようだが、怒りと悔しさに頬は上気し、胸も腰も脚も、全身、桃色の真珠のようにほんのり赤く見える。
 だが、やはり見る者の目を惹きつけるのは、まだ初々しい少年めいた肉体の中心を飾る漆黒のくさむらと、どこか幼さすら感じさせる双果、そして雄の証しである。そこだけは、見ようによっては女性的にすら見える敬の秘められた野性を証明しているようだ。
 ごくり――。誰かが生唾飲む音が一瞬、座敷に響いた。これから育つ幼獣を前に、男たちは奇妙な欲に煽られはじめたようだ。
「いい身体だな。しなやかで強靭で、ほどよく筋肉もありそうだ」
「触るな!」
 敬が伸ばされた瀬津の手を振りはらう。
「まったく、たいしたじゃじゃ馬だ」
 瀬津は苦笑して鬼若を見返った。
「どうだ、先生、このじゃじゃ馬を馴らして、一ヶ月後には商品として客を取らせることはできるか?」
 鬼若は一瞬、考えこむように美しい眉を丸める。
「気性が激しそうですから、手を焼くかもしれませんが、やりがいがありますね」
「これなら、この店の目玉商品になるかもしれません」
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