黄金郷の白昼夢

帝国、夢の宴 十

「そうか？　それなら俺という人間がどういう人間か、今日はよく知るといい。それにしても、なんと美しい身体だ！　そう思わないか、バルバラ？」
「まったくだね。グラリオンの後室にも、これほど美しい人はいないだろうね」
　揶揄うように言う二人に、アベルは悔し気に眉を寄せるが、いかんせん、二人の宦官兵に完全におさえこまれており、抗うことも逃げることもできないでいる。
　アベルにとってはこの状況は、グラリオンでの悪夢の再来だろう。
「どうだ、この衣装は？　俺が選んでやったのだ。おまえによく似合っている。おまえのすべてが見えるぞ」
「げ、下種！　卑怯者！」
　怒りに燃えて怒鳴るアベルを満足そうに眺め、おもむろに公爵は身をかがめた。
「あ、な、なにをする？」
「可愛いな……、おまえのここ」
　指先で面白そうにアベルの左胸を突く。
「よ、よせ……！」
　つぎには右手を伸ばして、女にでもするように薄い胸を揉む。
「うう……」
　執拗に、こねくりかえすように揉みつづけ、やがて片方の手で、アベルの右側の胸の突起をつまむ。
「くぅ……」
　左胸を揉まれ、右胸の先端を摘ままれ、アベルは恥辱と苦痛に額に汗を浮かせた。
「ああ、本当に可愛いな。おまえの身体は素直になってきている」
　麗人の苦悶ぶりを眺めて楽しみながら、公爵は貴顕の身にあるまじき下品さで、さらにいっそうアベルを追い詰めていく。
「いい子になったご褒美に、舐めてやるぞ」
「よ、よせ！」
　アベルが悲鳴をあげるより早く、公爵の舌は布越しにアベルの右胸の先をなぶりあげた。
「ひっ……！」
　淫靡な音をたてながら、公爵は悪びれもせずアベルの胸を布の上からしゃぶる。
「うう……」
　布越しの舌の感触は、一味ちがった感興を否応なしにアベルにあたえるようで、苦痛に顔をしかめながらも、アベルの表情には、ほのかな恍惚があらわれている。
「だ、駄目だ……！　駄目だ、そんな……！」