黄金郷の白昼夢

異形の娼婦 二

　バルバラは絹紐を両手で持ち、扱しごくようにした。
「さぁ、これから、この紐であんたを綺麗に縛ってやるよ。覚悟はいいかい、お貴族様？」
　艶をふくんだような真紅の紐が、恐ろしい拷問具のように見えてきた。そう思ったのはオルティスだけではない、アベルの横顔は蒼白である。
「や、やめろ！　私に触るな！」
「なにを今さら？　さっきまで俺の手で悦んでいたくせに」　
「ち、ちがう、ちがう！　ああっ、来るな！」
　ふだんは賢明なことで知られたアベルだが、このどうしょうもない状況で無意味ではあっても抗議せずにいられないのは、追い詰められた者の本能なのだろう。
「こら、そんなに脚をぴったりとくっつけていたら縛れないだろう」
　叱るような口調で言うと、バルバラはアベルの背後にいる公爵に目配せした。
　公爵は無言で頷くや、アベルの、びったりと寄せつけあっている股のはざまに、強引に手を入れた。
「あうっ！」
　力ずくで、股を割られる屈辱にアベルは唸った。
「くぅ――！」
「ほら、力を抜け。この期におよんで、見苦しいぞ、アルベニス伯爵ともあろうものが。いさぎよく開け」
「ううう！　ああっ、あああっ！」
　悲痛な声とともに、背後の男の強力な力によって、必死の思いで閉じていた股を無理やりに開かされていく。　
「ああ……！」
「どうだ？」
　公爵が問いかけたのはアベルではなく、バルバラだった。
「もう少し。もっとだ。もっと大きく開かせろよ」
　身分卑しい娼婦に命じられ、公爵は笑った。
「ほらよ」
　くだけた口調で公爵が言うや、天幕内に悲痛な声がひびいた。
「ああああっ――」
　公爵がいきなり力任せに開かせたものだから、アベルは痛みと羞恥に悲鳴をあげた。
「よし」
　バルバラは頷き、喜々として、開かれたアベルの聖域に紐縄をとおす。
「うう！　うっ……」