黄金郷の白昼夢

グラリオンの夜、ふたたび 五

　絵の青年は、おそらくは無理やりに腰に色物の布を巻きつけられ、卑猥なすがたを強いられ、姿見の前に立たされていた。　
　青年は、いや、アベルはそのとき、どんな気持ちだったのか……。想像するとオルティスの下肢は今も燃えそうだ。
　誇りたかき貴族が、武勇の誉れもたかい帝国有数の騎士が、異教徒の後宮で、ほぼ全裸に剝かれ、卑しい妾や陰間どもに、よってたかって嬲られ……――これは絵に添えられた文章であった――、舌噛みきりたいほどの恥辱に身を焦がしながら、それでも股間の布は形は変えていったという。
　煽情的な文章はそのあとも延々とつづき、美青年の不幸の物語は果てしなくつづくのだ。今も、つづいているといえる。
「う、嘘だ！　そ、そんなこと、嘘だ！」
　アベルの狼狽ぶりが、気の毒なことに真実であることを伝えている。
　オルティスはますます下肢が熱くなるのを自覚した。下半身だけでなく、全身が熱を持ちはじめ、背に汗を感じた。
「ほう、嘘なのか、ドミンゴ？」
　ねちねちと公爵はアベルを苛めつづける。
「え……、いえ、それは……」
　困ったような口調だが、実は楽しんでいることは明白だった。
　身分の高下はあれど、この二人の男の粘着質さと悪漢ぶりに、オルティスは内心あきれた。
　男というものは、みな公爵であろうが下僕であろうが、こんなふうに卑しい品性を隠し持っているのだろうか。自分も男ではあるが、そう考え込まずにいられない。
　彼らだとて聖堂では膝を折って真剣な祈りをささげるだろうに。それらはすべて世をあざむく偽りの信仰なのだろうか。倹しくとも敬虔な家庭で育ったオルティスは、目の前でくりひろげられる淫虐な光景に身震いした。一方で、やはり自分の身体が熱く昂ぶり始めていることは無視しきれない。
「そのあとも……随分楽しんだのではなかったのか？」
「ああっ！」
　ドミンゴの膝の上で自由をうばわれ、公爵に顎を取られて顔をそむけることもできず、美しい瞳を赤くうるませアベルは羞恥に身もだえする。