きみとの距離

ぺっこ

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癒された心

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「俺、津島に絶対直接謝って、また友達になりたいと思ってた。でも、高校入学したら、津島がいなくて…」


心が折れた。


震える声で、あの時のことを全て話してくれた滝川は、そういって涙に濡れた顔を伏せた。



私はこの優しい人をどれだけ苦しめてきたのだろう…


「滝川、ごめんね。最後ずっと無視して。」


好きな人に実は嫌われていたなんて、認めたくなかった。


自分がみじめで恥ずかしかった。


自分勝手な思いで相手を傷付けていたのは私の方だ。


言葉が、心にずっと刺さっていたトゲと共に流れていく。


「あの言葉聞いたとき、最初はすごく悲しかった。ショックすぎて、だから、志望校かえたの。でも、あとからどんどん怒りがわいてきて。あんなこと言ったのになんで普通に話しかけてくるの?って思ってた。でも、毎日滝川が話しかけてくれるから、あの言葉は幻聴だったのかもとか、つい話したくなっちゃったりもしたけど、でも怖くて。よくよく考えたら滝川にも何か事情があったのかもとか…」


今まで心の中に押し込めていた気持ち達が止まることなく流れていく。


でも結局、最後はこれに尽きるのだ。


「大好きだったの、滝川が。だから、滝川の口から私を否定する言葉を聞きたくなかった。嫌われてるなんて、信じたくなかった。」


その言葉を口から出した瞬間、ずっと心の中に埋まっていた石がころりと取れた気がした。


ずっと黙っている彼の様子が気になって、おそるおそる顔をあげる。


そこには…


「うん、本当にごめん………
俺も…俺も大好きだったよ。」


ふにゃりと歪んだその泣き笑いのような滝川の顔を、私は一生忘れないだろう。
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