上 下
79 / 83
裏 あしながおじさまは元婚約者でした

敏腕マネージャー・ヨーコ sideヨーコ

しおりを挟む

こちらも書籍化でカットされた部分です。
朝哉たちの病室エッチの前にちょろっと数行書かれていただけなのですが、今回再掲にあたって文章を書き足してショートショートに仕上げました。
私、ヨーコが大好きなんです。

*・゜゚・*:.。.:*・゜゚・**・゜゚・*:. .。.:*・゜゚・*



 術後4日目からは、ヨーコも竹千代も病室には行かなかった。
 入院の必要物品はもう一通り揃っていたし、警察からの事情聴取もあらかた終わったので、わざわざ病院に顔を出さなくてもメールや電話での業務報告だけで十分になったのだ。
 重要な話ならパソコンで顔を見ながらすればいい。

 しかし、上司の朝哉がいないからといってヨーコたち部下が休みになるわけではない。
 社内外から専務あてに届く書類やメールの管理があるし、今回の事件の詫び状とお詫びの品の手配をしたり、あちこちからかかってくる取材依頼の対応もしなければならないからだ。


 その整った容姿と経歴から元々一部の人々には騒がれていた朝哉だったが、今回の事件をきっかけに全国区の人気となり、一気に注目度が上昇した。

 テレビ各局からはワイドショーやドキュメンタリー番組の出演依頼が殺到し、新聞や雑誌の取材依頼も次々と舞いこんでいる。

 取材依頼をしてくるのは経済誌に留まらず、下世話なゴシップ誌のインタビューや、果てはファッション雑誌からのモデル依頼まで。

『はあ? 情○大陸? モデル? そんなの俺に聞くまでもなく速攻で断れよ』

 朝哉は顔をしかめてそう言ったが、こんな美味しい話を簡単に諦めるわけにはいかない。
 ヨーコは朝哉とのパソコン通話を切った後で、すぐに社長に連絡を入れた。

「シャチョー、センムに『情○大陸』から密着取材の依頼が入りマシタ!」

 これには時宗だけではなく、ちょうどその場に居合わせた定治も大層乗り気になった。

『会長、以前会長も出演されたことがある情○大陸ですよ。注目度も増している今なら会社の宣伝にもってこいなのでは?』

『ふむ、今回の事件で私情を優先させたと世間が騒ぎ出す前に、朝哉の仕事姿を見せておくのはいいかもしれん』

 テレビ映えを考慮して、取材時期に合わせて社内会議と工場の視察を入れておくこと。ストイックさを印象付けるため、帰宅後も深夜まで書類作成するシーンを入れること。主治医に頼んで診断書をシビアめに書いてもらうこと(雑誌やテレビで公表したときに同情を買いやすいようにらしい)……など、2人からの指示をワクワクしながらメモしていく。

『……あとは跳ねっ返りの朝哉を説得せねばなるまい。まずは体調が落ち着くまで保留ということにしておくのがいいだろう』

 そう言われたので、先方には『専務も乗り気なのデスが、激しい戦闘による負傷のため、今はまだ取材に応じられる状態ではないのデス。しかし復帰の際は最優先で出演を検討させていただきますカラ!』と電話で返答しておいた。

 専務と周囲の調整役としてうまく橋渡しするのも、マネージャー……いや、秘書の役目なのだ。


 ヨーコは今の、『芸能事務所の敏腕マネージャー』的な状況を結構楽しんでいる。
 今までにも取材の依頼は多々あったが、今回のように芸能記者やワイドショー相手というのは初めてだ。
 この勢いで朝哉がドラマ出演でもしてくれたら面白いのに……と思う。

――コレはあくまでも会社のためなのデス! 撮影現場に同行して美少年を拝みたいだなんて思ってないデスヨ! 本当デスヨ!

 トモヤに叱られそうになったら、ヒナコに泣きついて庇ってもらえばどうにでもなると、ヨーコは読んでいる。
 まあ実際そうなるだろう。
 なにせうちの専務は可愛いフィアンセにゾッコンなのだから。

――ヒナコを好きな気持ちなら、私だって朝哉に負けてませんけどネッ!

 謎の対抗意識をメラメラと燃やしながらも、パソコンに向かうヨーコの顔には笑みが浮かぶ。

――どうかあの2人に幸多かれ……。

 ニューヨークで孤独な戦いを続けていた朝哉も、勉強に打ち込みつつもどこか寂しげにしていた雛子も、ヨーコは近くで見守ってきた。
 ようやく結ばれた2人には、今度こそずっとずっと幸せでいてほしいのだ。


「……とりあえず、退院後のセンムのスケジュールを調整しなきゃですネ」

 ワイドショーはジャ○ーズ事務所のタレントが出ているところがいいな……などと考えながら、ヨーコはメールの返事を打ち込むのだった。

しおりを挟む
感想 398

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。