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<< 妹と親友への遺言 >> side 大志
19、山崎さん事件 (2)
しおりを挟む「ねえ大志、日野くんって彼女いるの?」
冬休みが目前に近付いた12月中旬。友達繋がりで知り合った大学の先輩、京子さんが、おもむろに聞いてきた。
「いや、いない」
冬馬は高2で付き合った塾講師に懲りてから彼女を作っていない。断言出来る。何故ならバイトが無い日は俺とつるんで俺の家に入り浸ってばかりいるから。
「なに?先輩って冬馬に興味あるの?」
「私じゃなくて親友がね。会ったこと無かったっけ? 山崎ゆかりって、綺麗系の子」
「う~ん……写真とかある?」
京子さんがスマホを開いて見せてくれたのは、確かに綺麗なお姉さん系の美人。
清楚系が好みのヤツなら大好物なんじゃないだろうか。
「この人って……ミス法学部じゃなかった?」
「そう。2年生の時にね。綺麗でしょ? 彼女が卒業前に日野くんに告白したいけど、勇気が無いんだって。彼って大志や男友達とベッタリで付け入る隙無しって感じじゃない? それに女の子をバッサバッサと振ってるし」
「まあね。アイツは勤労青年だから忙しくて……」
そこまで言ったところで、ふと思いついた。
ーー彼女が出来れば桜子に構っている暇が無くなる……よな……。
自分の考えにドス黒いものを感じて苦い感情が込み上げたけれど、同時にそれが酷く素晴らしいアイデアにも思えて、実行に移さない手は無いと思った。
アイツだって過去に彼女はいたんだ。
好きじゃなくてもグイグイ押されて付き合ってた事があるって言うし……タイミングさえ良ければOKする可能性があるんじゃないのか?
「……いいよ、協力しても。まずは一度、山崎んに会わせてくれる? 作戦会議をしようよ」
そう、これは仲良しの京子さんの親友へのボランティア。そして自分の親友、冬馬への愛あるお節介だ。愛だよ、愛。
……そう思い込めば罪悪感も軽くなった。
法学部4年の山崎さんは、法科大学院、所謂ロースクールに進学決定を早々に決めた才女だった。
授業の合間のカフェテリアで会った彼女は、色白な肌に切れ長な目が印象的な、しっとりした感じの美人さんで、容姿端麗、才色兼備をまさしく地で行っている感じだと思った。セミロングのストレートヘアーがツヤツヤしている。
ーーうん、まずは、外見的には合格だな。
たぶん冬馬は派手系は即NGだ。ギスギスした性格も駄目。もっと控え目な感じで、つい守ってあげたくなるような……。
脳裏に桜子の顔が浮かんで、胸がザワッとした。
「あ~、……えっと…山崎さんは外見的には冬馬のタイプだよ。イケるんじゃないかな」
「えっ、本当?」
山崎さんが手を頬に寄せてはにかんだ。
「アイツは自分からはグイグイいかないタイプだから、いいと思っても行動に移せないと思う。だからと言ってこっちからグイグイ行っても逆に引いちゃうと思う」
「えっ、扱いがメンドくさいわね。だったら結局どうすればいいのよ。
山崎さんの隣で一緒に聞いていた京子さんがイライラした口調で聞いて来たから、ニヤリと口角を上げてそちらを向く。
「そう、アイツは扱いが難しいんだよ。だから俺が間に入って何気にきっかけを作る。山崎さんはニコニコしながら座ってなよ。くれぐれもガツガツしないでね」
翌日の昼間、カフェテリア。
俺と大志が並んで牛丼を食べていると、入り口のあたりでキョロキョロしている京子さんと山崎さんを発見した。
いや、本当は昨日約束しておいたんだけど。
「あっ、京子さん!」
俺がわざとらしく大声をあげて手を振ると、2人はパアッと明るい顔で近付いてきた。
「今からお昼? ここに座れば?」
目の前の席を手で示すと、2人はトレイを運んできていそいそと言葉に従った。
「冬馬、4年生の京子さんと山崎さん。この山崎さんは先日の二次募集でロースクールに合格したばかりなんだぜ」
俺が2人を紹介すると、冬馬は案の定『法科大学院合格』に飛びついた。
「えっ、進学するんだ。合格おめでとうございます。試験はどうでしたか?」
「そうね……法的三段論法をしっかりマスターして、いかに早く頭の中で組み立てるかが……日野くん……だったわよね? 敬語は必要ないから、普通に話してくれて構わないわよ」
山崎さんは軽く首を傾げて微笑んで見せた。
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