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第50話 敵上陸艦隊の撃滅方法
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「俺としては正直言ってスカリー帝国の艦隊と決戦を行っても五分五分だと思います。理由としては確認出来ただけで大型貨物船、同輸送船、同揚陸艦が20隻以上いる上陸部隊を上手く纏め、さらに中小の輸送船、最後に多数の戦闘艦を生半可な指揮官が指揮するはずがないからです」
「と言うと?」
「スカリー帝国海軍第1艦隊司令のゲールッツ上級大将が艦隊を率いていると思われます。彼以外に帝国は優秀な司令を抱えていない……もとい前大戦で有能な指揮官は貴方がボコボコにして戦死してしまったからですよ、叔父上」
苦笑混じりにそう言うとドクトラはキョトンとし、ギュースはガッハッハッハッと大仰に笑う。
「……従って、敵指揮官がゲールッツ上級大将と仮定します。その対策案がこちらです」
アンカーがエスメールに目配せをすると彼は机の上に置いていた封筒から何枚かの資料を2人の元帥に手渡す。
「これで行こうと思います。如何ですか?」
「「……」」
2人は読み進める中で段々目を見開き始め、読み終えた彼らは口をポカンと開けてこちらを凝視した。
「アンカー、これは……」
「ライン中将……」
「これしかないと思います。リスクが高いのは承知の上ですが」
自分の手元にも置かれている作戦案を頭の高さまで掲げて、アンカーはそう言い放った。
2元帥は数時間彼らを別室で待たせた後、これを承認した。
王宮を辞したアンカー達は出迎えの馬車に乗り込むと、またヴェントリア軍港に戻る。
その最中でエスメールが2元帥に提出した資料を不安げな顔で覗き込んでいた。
「中将、本当にこれでやるんですか?」
「これで負けたらルンテ海軍はお終いだな」
「お終いって……他人事みたいに言わないで下さい」
呆れ顔のエスメールに対して、アンカーは落ち着いた声色で諭す。
「ほぼ全艦艇を動員する今次作戦で失敗するなら、もう他の作戦じゃどうしようもないさ。負ける時は負けるし、勝つ時は勝つ。……まぁ、帝国海軍がこんなにも増強されているとは思ってなかったけど、その原因が第1次オストメニア大戦で叔父上が帝国海軍を壊滅させたことなのはひどい皮肉だな」
複雑な感情を持つアンカーは車内でため息を連発したが、ヴェントリア軍港に着くや否やすぐに全艦艇へ出動準備を命令した。
もし講和が結ばれなかった場合、今現在本土に駐屯する海軍はカーリス半島に間に合わない。
講和工作が成功しようと失敗しようと間に合うように機関に火を入れさせたのだ。
「これでも間に合うか五分五分……ハハッ。何回言ってんだ俺」
司令室で山積みの書類を片しながら呟くアンカーの目の下には薄いクマが浮かび上がっていた。
〈帝国総統府〉
「閣下!こちらの目論見通り、ルンテの犬共は講和工作を行ってきました!」
「嬉しそうだな、クルト」
満面の笑みで総統室に入室してきた首席秘書のクルト・ランブレヒトは高級な椅子に身を沈めるシッキラーのもとに書類を持って駆け寄っていった。
「勿論です閣下。奴らが講和を求めているということは負けを認めたのも同じ!20年前の我が帝国の屈辱を奴らも舐めたということです!これほど嬉しいことはありません!!」
興奮するクルトが手渡した報告書には以下の講和の暫定内容が書かれていた。
・ルンテシュタット王国は極西領土のカモブゴロドからエッセイ川までをアルフォードに割譲する。
・ルンテシュタット王国はスカリー帝国に賠償金(要審議)を支払う。
・ルンテシュタット王国はカーリス皇国には半島の返還は行わず、代わりに賠償金(要審議)を支払うものとする。
・ドレッジ連合王国はスカリー・アルフォード・カーリス枢軸陣営と白紙講和を結ぶ。
これを見たシッキラーは珍しく大笑いをした。
「これが講和?……ワッハッハッ!!笑いが止まらんぞクルトよ!敗戦確定の国がいけしゃあしゃあと国益を守ろうと必死になっておる!傑作だな!!」
「しかもカーリス皇国への半島返還、さらに奴隷問題の謝罪も盛り込まれておりませぬ。我が帝国の割譲領土は無し。アルフォードにもたった少しの割譲で済ませようとしております!しかもドレッジ連合王国は元通りとまで。……これでは断ってくれと言っているようなものですなぁ」
ひとしきり笑って満足したのか、シッキラーは出てきた鼻水をかんだ後、すぐに返答文を書き上げてルンテに送れと命令した。
内容は以下の通り。
・ルンテシュタット王国はウラーリー山脈までの極西領土(国土の4分の1)をアルフォードへ割譲する。
・ルンテシュタット王国はスカリー帝国に賠償金を支払い、平和大橋以東の領土(ツンディラヤ山脈からヒンディス川)を割譲する。
・ルンテシュタット王国はカーリス皇国に半島を無償返還し、賠償金を支払う。かつ、奴隷問題について国王ハンニル2世が謝罪する。
・ドレッジ連合王国は全土アルフォードが併合する。
「奴らが怒り狂って吠える時、我が帝国海軍が護衛した上陸部隊がカーリス半島へ上陸する。極西からアルフォードの大軍、海からは帝国海軍。……チェックメイトだ」
シッキラーとクルトはその日極上のワインを開け、帝国の勝利を祝って朝まで飲み明かした。
「と言うと?」
「スカリー帝国海軍第1艦隊司令のゲールッツ上級大将が艦隊を率いていると思われます。彼以外に帝国は優秀な司令を抱えていない……もとい前大戦で有能な指揮官は貴方がボコボコにして戦死してしまったからですよ、叔父上」
苦笑混じりにそう言うとドクトラはキョトンとし、ギュースはガッハッハッハッと大仰に笑う。
「……従って、敵指揮官がゲールッツ上級大将と仮定します。その対策案がこちらです」
アンカーがエスメールに目配せをすると彼は机の上に置いていた封筒から何枚かの資料を2人の元帥に手渡す。
「これで行こうと思います。如何ですか?」
「「……」」
2人は読み進める中で段々目を見開き始め、読み終えた彼らは口をポカンと開けてこちらを凝視した。
「アンカー、これは……」
「ライン中将……」
「これしかないと思います。リスクが高いのは承知の上ですが」
自分の手元にも置かれている作戦案を頭の高さまで掲げて、アンカーはそう言い放った。
2元帥は数時間彼らを別室で待たせた後、これを承認した。
王宮を辞したアンカー達は出迎えの馬車に乗り込むと、またヴェントリア軍港に戻る。
その最中でエスメールが2元帥に提出した資料を不安げな顔で覗き込んでいた。
「中将、本当にこれでやるんですか?」
「これで負けたらルンテ海軍はお終いだな」
「お終いって……他人事みたいに言わないで下さい」
呆れ顔のエスメールに対して、アンカーは落ち着いた声色で諭す。
「ほぼ全艦艇を動員する今次作戦で失敗するなら、もう他の作戦じゃどうしようもないさ。負ける時は負けるし、勝つ時は勝つ。……まぁ、帝国海軍がこんなにも増強されているとは思ってなかったけど、その原因が第1次オストメニア大戦で叔父上が帝国海軍を壊滅させたことなのはひどい皮肉だな」
複雑な感情を持つアンカーは車内でため息を連発したが、ヴェントリア軍港に着くや否やすぐに全艦艇へ出動準備を命令した。
もし講和が結ばれなかった場合、今現在本土に駐屯する海軍はカーリス半島に間に合わない。
講和工作が成功しようと失敗しようと間に合うように機関に火を入れさせたのだ。
「これでも間に合うか五分五分……ハハッ。何回言ってんだ俺」
司令室で山積みの書類を片しながら呟くアンカーの目の下には薄いクマが浮かび上がっていた。
〈帝国総統府〉
「閣下!こちらの目論見通り、ルンテの犬共は講和工作を行ってきました!」
「嬉しそうだな、クルト」
満面の笑みで総統室に入室してきた首席秘書のクルト・ランブレヒトは高級な椅子に身を沈めるシッキラーのもとに書類を持って駆け寄っていった。
「勿論です閣下。奴らが講和を求めているということは負けを認めたのも同じ!20年前の我が帝国の屈辱を奴らも舐めたということです!これほど嬉しいことはありません!!」
興奮するクルトが手渡した報告書には以下の講和の暫定内容が書かれていた。
・ルンテシュタット王国は極西領土のカモブゴロドからエッセイ川までをアルフォードに割譲する。
・ルンテシュタット王国はスカリー帝国に賠償金(要審議)を支払う。
・ルンテシュタット王国はカーリス皇国には半島の返還は行わず、代わりに賠償金(要審議)を支払うものとする。
・ドレッジ連合王国はスカリー・アルフォード・カーリス枢軸陣営と白紙講和を結ぶ。
これを見たシッキラーは珍しく大笑いをした。
「これが講和?……ワッハッハッ!!笑いが止まらんぞクルトよ!敗戦確定の国がいけしゃあしゃあと国益を守ろうと必死になっておる!傑作だな!!」
「しかもカーリス皇国への半島返還、さらに奴隷問題の謝罪も盛り込まれておりませぬ。我が帝国の割譲領土は無し。アルフォードにもたった少しの割譲で済ませようとしております!しかもドレッジ連合王国は元通りとまで。……これでは断ってくれと言っているようなものですなぁ」
ひとしきり笑って満足したのか、シッキラーは出てきた鼻水をかんだ後、すぐに返答文を書き上げてルンテに送れと命令した。
内容は以下の通り。
・ルンテシュタット王国はウラーリー山脈までの極西領土(国土の4分の1)をアルフォードへ割譲する。
・ルンテシュタット王国はスカリー帝国に賠償金を支払い、平和大橋以東の領土(ツンディラヤ山脈からヒンディス川)を割譲する。
・ルンテシュタット王国はカーリス皇国に半島を無償返還し、賠償金を支払う。かつ、奴隷問題について国王ハンニル2世が謝罪する。
・ドレッジ連合王国は全土アルフォードが併合する。
「奴らが怒り狂って吠える時、我が帝国海軍が護衛した上陸部隊がカーリス半島へ上陸する。極西からアルフォードの大軍、海からは帝国海軍。……チェックメイトだ」
シッキラーとクルトはその日極上のワインを開け、帝国の勝利を祝って朝まで飲み明かした。
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