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第17話 アルワラ本島沖海戦
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第3艦隊を指揮するナラはたかが艦砲射撃と侮り、全て部下任せということを決しなかった。
彼はこの攻撃を実行するにあたって、自身の知識の総力を上げて以下の作戦を考えた。
まず駆逐艦7隻をアルワラ本島側を除く戦艦の外周に配置し、哨戒任務にあたらせる。
これは大慌てで反転してくるであろう敵艦隊を早期発見、対艦戦闘を速やかに行える様にする為である。
続いて重巡と軽巡を砲台陣地に向けて接近させ、砲撃を実施させる。
射程が戦艦ほど長くない巡洋艦は接近せざるを得ないのだが、これは敵砲台陣地からの反撃を受ける盾役になってしまうというデメリットがある。
しかし戦艦2隻だけで砲台陣地を殲滅するには些か時間がかかる。
そこで後々艦隊決戦をする時に後背の憂いがあってはならないと考えたナラは早急に破壊したかったのだ。
そして最後に駆逐艦3隻を戦艦の護衛に残す。
重巡の水偵も先に発艦させておくので近距離から中距離の索敵は完璧だと疑わないナラだったが、ザンボルトの意見は違った。
それは航空機による攻撃を加味していないからである。
この作戦案での艦砲射撃中は全体的に艦隊がばらけてしまうのでその間にもし敵航空機が襲いかかってきたらひとたまりもない。
艦載機の攻撃は無いと思うが基地航空隊は来襲するだろうとザンボルトは予想していた。
〈第1砲台〉
「撃てぇー!」
21センチ単装砲が火を噴くと同時に砲台のカーリス兵達は耳を塞ぐ。
轟音とともに放たれた砲弾は放物線を描いて重巡の艦尾に命中した。
「艦尾に命中!」
「火災発生!」
「消火作業、急げ!」
重巡ダイラントの艦長が冷静にダメージコントロールを図るが火の回りが早い。
艦尾付近が一気に火に包まれ、逃げ遅れた乗員達が次々と火ダルマになって海に飛び込んでいく。
「やったぞ!」
砲台陣地側はその様子を見て大いに歓喜したがもう1隻の重巡がこちら目掛けて発砲した。
「敵弾飛来、伏せろぉー!!」
重巡の20センチ砲弾が目の前の海に落下して盛大な水飛沫を砲台兵士達に浴びせかける。
砲台兵士達の硝煙臭い体を海水が洗い流してくれたが、新たに海水の臭いが軍服にまとまり付く。
だがそんなことを気にしていられない。
生か死か。
蔵田は一心不乱に21センチ砲を次の重巡に向け直す。
「蔵田ァ!撃てぇー!!」
「ッてぇー!!!」
茂地原の合図とともに引き紐を引く。
同時に2隻目の重巡も主砲を一斉射し、放火された僚艦の代わりに反撃を行った。
蔵田はその砲撃の衝撃で地面に叩きつけられた。
〈ルンテ第3艦隊旗艦アムストガルト艦橋〉
「敵砲台陣地の掃討、完了しました。こちらの被害は重巡1隻小破炎上中、軽巡1隻中破です、司令」
多少被害が出てしまったが砲台陣地を破壊出来たことに満足気なナラは新たに港湾内の砲撃を命じた。
「作戦参謀!偵察機を港湾上空に向かわせろ。各施設、及び敵艦艇に攻撃を加えるんだ」
「はッ!…重巡ダラレルに通信。偵察機を射出し、弾着観測の任にあたらせろ!」
通信士官が復唱し、被害無しの重巡ダラレルから偵察機がカタパルトより射出された。
現在、午前9時45分。
何か基地でアクシデントでもあったのだろうか。
ザンボルトはまだ基地航空隊が来襲して来ていないことに安堵していた。
この調子で事が進めばなんとかなるか…?
そう思っていたがそこまでの豪運は第3艦隊の誰も持っていなかった。
「こちら偵察機Y-3!港湾内を視認。燃料タンク3、軽巡1、駆逐艦1、護衛艦4確認。位置は………ん?なんだ、あれは?」
「どうした?何が見える?」
突然報告を中断し、何かを不審がる声を伝えるパイロットに艦橋内は1人を除いて怪訝そうな表情になる。
ただ1人、ザンボルトは血の気が引いた様に真っ青になって無線機を作戦参謀からひったくり、パイロットに直ちに退避せよと伝えようとした。
だが。
「う、うわぁ!!こちら偵察機Y-3!敵航空編隊を視認!数は少なくとも30以上!雷装、爆装もいる!!」
「偵察機Y-3!現空域より退避せよ!繰り返す、退避せよ!!」
「む、無理だ!敵戦闘機が!クソッ、後ろに付かれた!」
「…!」
「引き離せない…!ぐわッ!被弾した!グランディー!グランディー!(ルンテ語でメーデー)チクショウ、墜ちる!!制御不能!!嫌だ、死にたくない!」
無線機から聞こえる断末魔に艦橋内の者達は一斉に港湾上空に目を向ける。
そこには火を噴き上げ墜落していく偵察機Y-3と大量の航空隊が見えた。
視線を驚きを隠せないナラに戻したザンボルトは、急いで戦闘態勢を取るように促す。
「司令、艦隊を集結させて下さい!このままではいい的だ!」
「わ、分かった。全艦、旗艦を中心に集結!対空戦闘よーい!」
「対空戦闘よーい!」
砲雷長が慌てて艦内に知らせ、艦隊には通信士官が無線で命令を送る。
だがここまで接近されれば間に合わない。
第3艦隊は圧倒的不利な状況に陥ったのである。
彼はこの攻撃を実行するにあたって、自身の知識の総力を上げて以下の作戦を考えた。
まず駆逐艦7隻をアルワラ本島側を除く戦艦の外周に配置し、哨戒任務にあたらせる。
これは大慌てで反転してくるであろう敵艦隊を早期発見、対艦戦闘を速やかに行える様にする為である。
続いて重巡と軽巡を砲台陣地に向けて接近させ、砲撃を実施させる。
射程が戦艦ほど長くない巡洋艦は接近せざるを得ないのだが、これは敵砲台陣地からの反撃を受ける盾役になってしまうというデメリットがある。
しかし戦艦2隻だけで砲台陣地を殲滅するには些か時間がかかる。
そこで後々艦隊決戦をする時に後背の憂いがあってはならないと考えたナラは早急に破壊したかったのだ。
そして最後に駆逐艦3隻を戦艦の護衛に残す。
重巡の水偵も先に発艦させておくので近距離から中距離の索敵は完璧だと疑わないナラだったが、ザンボルトの意見は違った。
それは航空機による攻撃を加味していないからである。
この作戦案での艦砲射撃中は全体的に艦隊がばらけてしまうのでその間にもし敵航空機が襲いかかってきたらひとたまりもない。
艦載機の攻撃は無いと思うが基地航空隊は来襲するだろうとザンボルトは予想していた。
〈第1砲台〉
「撃てぇー!」
21センチ単装砲が火を噴くと同時に砲台のカーリス兵達は耳を塞ぐ。
轟音とともに放たれた砲弾は放物線を描いて重巡の艦尾に命中した。
「艦尾に命中!」
「火災発生!」
「消火作業、急げ!」
重巡ダイラントの艦長が冷静にダメージコントロールを図るが火の回りが早い。
艦尾付近が一気に火に包まれ、逃げ遅れた乗員達が次々と火ダルマになって海に飛び込んでいく。
「やったぞ!」
砲台陣地側はその様子を見て大いに歓喜したがもう1隻の重巡がこちら目掛けて発砲した。
「敵弾飛来、伏せろぉー!!」
重巡の20センチ砲弾が目の前の海に落下して盛大な水飛沫を砲台兵士達に浴びせかける。
砲台兵士達の硝煙臭い体を海水が洗い流してくれたが、新たに海水の臭いが軍服にまとまり付く。
だがそんなことを気にしていられない。
生か死か。
蔵田は一心不乱に21センチ砲を次の重巡に向け直す。
「蔵田ァ!撃てぇー!!」
「ッてぇー!!!」
茂地原の合図とともに引き紐を引く。
同時に2隻目の重巡も主砲を一斉射し、放火された僚艦の代わりに反撃を行った。
蔵田はその砲撃の衝撃で地面に叩きつけられた。
〈ルンテ第3艦隊旗艦アムストガルト艦橋〉
「敵砲台陣地の掃討、完了しました。こちらの被害は重巡1隻小破炎上中、軽巡1隻中破です、司令」
多少被害が出てしまったが砲台陣地を破壊出来たことに満足気なナラは新たに港湾内の砲撃を命じた。
「作戦参謀!偵察機を港湾上空に向かわせろ。各施設、及び敵艦艇に攻撃を加えるんだ」
「はッ!…重巡ダラレルに通信。偵察機を射出し、弾着観測の任にあたらせろ!」
通信士官が復唱し、被害無しの重巡ダラレルから偵察機がカタパルトより射出された。
現在、午前9時45分。
何か基地でアクシデントでもあったのだろうか。
ザンボルトはまだ基地航空隊が来襲して来ていないことに安堵していた。
この調子で事が進めばなんとかなるか…?
そう思っていたがそこまでの豪運は第3艦隊の誰も持っていなかった。
「こちら偵察機Y-3!港湾内を視認。燃料タンク3、軽巡1、駆逐艦1、護衛艦4確認。位置は………ん?なんだ、あれは?」
「どうした?何が見える?」
突然報告を中断し、何かを不審がる声を伝えるパイロットに艦橋内は1人を除いて怪訝そうな表情になる。
ただ1人、ザンボルトは血の気が引いた様に真っ青になって無線機を作戦参謀からひったくり、パイロットに直ちに退避せよと伝えようとした。
だが。
「う、うわぁ!!こちら偵察機Y-3!敵航空編隊を視認!数は少なくとも30以上!雷装、爆装もいる!!」
「偵察機Y-3!現空域より退避せよ!繰り返す、退避せよ!!」
「む、無理だ!敵戦闘機が!クソッ、後ろに付かれた!」
「…!」
「引き離せない…!ぐわッ!被弾した!グランディー!グランディー!(ルンテ語でメーデー)チクショウ、墜ちる!!制御不能!!嫌だ、死にたくない!」
無線機から聞こえる断末魔に艦橋内の者達は一斉に港湾上空に目を向ける。
そこには火を噴き上げ墜落していく偵察機Y-3と大量の航空隊が見えた。
視線を驚きを隠せないナラに戻したザンボルトは、急いで戦闘態勢を取るように促す。
「司令、艦隊を集結させて下さい!このままではいい的だ!」
「わ、分かった。全艦、旗艦を中心に集結!対空戦闘よーい!」
「対空戦闘よーい!」
砲雷長が慌てて艦内に知らせ、艦隊には通信士官が無線で命令を送る。
だがここまで接近されれば間に合わない。
第3艦隊は圧倒的不利な状況に陥ったのである。
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