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幸せを見つけました。

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神殿に着くと、マシュー達の案内でアルミノクの居る書斎に向かった。

 神殿の中を歩いていると、神官達やマシュー達のように聖騎士や巫女見習いとして神殿で学んでいる仲間達が次々と声をかけてくる。

 マシューとアンナは神殿での暮らしに慣れているので自然に挨拶を交わすが、セリーナを見た者達は
 服装も相まってその美しさに。

「聖女様だ……」

「なんて清らかなんだ」

「あの方が癒してくれたんだ」

「天使様か?ありがたやありかだや……」

 と、みな口々に聖女だ、天使だともてはやしてくる。なるべく人前で姿を見せないように生きてきたセリーナにとっては、なんだか居心地が悪いような
気持ちだった。

 大きな被害を受けた神殿だったが、ディオンからの支援や街の人々からの助けがあり、神殿内部は綺麗に片付けられていた。

 書斎に着くと、アルミノクがセリーナ達を迎えた。

「マシュー、アンナ!」

「「アルミノク様!」」

 三人は久々の再会を喜んだ、まるで親戚同士のような親しい雰囲気にセリーナは驚いた。

 初めて会うアルミノクは、淡い水色の長い髪に
金色の瞳の中性的な美しい顔立ちで、清廉な雰囲気の
人物だった。

 先王の王弟ではあるが、王位を剥奪された元王と同じ25歳で叔父と甥が同じ歳という複雑な関係でもあった。

 アルミノクはセリーナに気付くと挨拶をしてきた。

「初めましてセリーナ嬢、貴女には謝罪と感謝を述べなければと思っていたのですが……なかなかご挨拶も出来ずに申し訳ありません。アルミノク・カレンデュラと申します」

「こちらこそ……ご挨拶が遅れましで申し訳ありません。マシューとアンナがお世話になりましてありがとうございます」

 セリーナと、アルミノクが話をしていると、ディオンがそろそろ座らないか?と言ってきてハッとして
全員はソファーに座る事にした。

 アルミノクの書斎は天井まである本棚と年代物の
机と来客用のテーブルとソファーがある質素な部屋だった。

 ディオンとアルミノク、マシューが中心となり今後の事を話し合い、アンナは三人が話す事に率直に意見を述べて今後の方向性を決めた。

 マシュー、アンナはアルミノクに聖司教になる為の引き継ぎをしてもらう為に今日からまた神殿に暮らす事になりセリーナもその手伝いをする事になった。

 ディオンは、用事があるからと途中で退席しセリーナは別れの挨拶もできないままディオンを別れてしまった。


 それから暫く経ち。
神殿に戻ったマシューとアンナは忙しい日々を過ごしていた。幼いながらもカリスマ性とリーダーシップを持った二人はどんどん神殿内部を改革していった。

だが、セリーナは複雑な思いを抱えて過ごしていた。

「聖女様!そんな事はなさらなくても大丈夫です!」

「でも……何かお役に立ちたくて」

洗濯しようとすれば止められ。

マシューとアンナに何が手伝う事はないか聞けば。

「お姉ちゃんは居てくれるだけでいいんだよ。
ごめん、僕達今は忙しいからまた夜話そう!」

「ゆっくりしてね、お姉ちゃん!」

神殿を歩けば。

「聖女様はなんて美しい」

「聖女様は純粋で清らかだ」

「聖女様はそんな事なさらない」


ーー違う!違う!私は聖女じゃない、セリーナよ
純粋でも清らかでもない普通の人間なのに……。

 着る物や食べる物、行動までも制限され
セリーナは次第に神殿の者達と接する事に恐怖感を抱き部屋から出られず、食事も喉を通らなくなり、衰弱していった。

「セリーナ!」

 マシューから話を聞いたディオンはセリーナの元に駆けつけた。ベッドに横になっていたセリーナは
ぼんやりとディオンを見つめた。

「こんな事になるなら神殿に行かせなかったのに……」

ベッドで横になるセリーナを抱き上げようとするディオンにセリーナは手を伸ばした。

「……ほんものの、ディオンさま?」

セリーナの手を取りディオンは愛しげに頬を寄せた。

「そうだ、セリーナ……君が嫌がってもグロンブナー公爵家へ連れて行く、ここには居させられない!」

「わたし……」

ーー愛はくれないのに、いつも欲しいものを
くれて、悪魔のように誘惑してくる残酷で優しい人……。

 愛しいディオンの顔を見て、セリーナはふと
フェリアの言葉を思い出した。

『誰かの言葉に惑わされず、自分の幸せを見つけて』

ーーフェリア様はこうなる事がわかっていたのかしら……。

 ディオンはセリーナに優しく、どこまでも甘やかし
沢山の贈り物をくれるが愛を囁かれた事はない。
 
ーー気持ちを伝えたら拒絶されるかもしれない……
でもそうなれば、吹っ切れて前に進めるかもしれない。

「ディオン……さま、貴方を愛してる」 

セリーナの言葉にディオンを目を見開き驚いた。
そして、強く抱きしめると絞り出すように口を開いた。

「セリーナ……俺も、君を……愛している」


 愛を知らない男は聖女と出会って愛を知り。
愛に溢れた聖女は自分の幸せを見つけた。


 

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