マギアルサーガ~惡の化身~

「悪を纏い、自由をもたらせ」

 独りの騎士が背負った信託、それは、たった今自らが差し向けた一筋の刃が貫いた、愛しき友の言葉。

 その女は神託をもたらし、人類が進むべき道を照らし続けた、聖女にして魔女。

 それは、人類から自我を奪い、自らの手で選択することを放棄させた、悪の権化――それが決して、彼女の望みでなかったとしても、人々が望むままの傀儡を演じていたとしても。

 だから女は、騎士にその手を汚させた。この世でただ独り、自分を殺せる者だから。人が人として生きてゆく為に。

 導かれし軌道を進むことが安楽な生き方だとしても、無為自然こそが命の正しき在り方だから。

 ――その身は悪に堕ち、血に染まる騎士は、最期に言祝ぐ。

 天を見よ、我こそは明けの明星、咲かせ芽吹くは惡の華。

 汝らに、自我をもたらす悪魔なり。
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