上 下
16 / 27
幼少期~煌の視点~

7

しおりを挟む
「"死にたくないから助けてくれ"と一言いただければいいのに。」
「な……そなたいい加減に……。」

心を見透かされたようで正面から睨みつけた俺に、男は目元を緩ませ口を真一文字に引き攣らせた。

そしておもむろに立ち上がると、数歩進み振り向きざまに俺に何かを投げた。

「ではこの短刀で私に傷をつけてみてください。あなたの術の程度を魅せていただきましょう。」

先ほどこの男に奪われた短刀は俺の手の上で怯えている。
つまりは俺の手がそれほど緊張の色を見せているという事だ。

「1度刃を当てるだけでもいいですが…折角ですので本気で私を殺しにかかって下さい。」

その顔は俺の価値を愚弄するようにほくそ笑んで見えた。
おかげで俺の闘志に火がついた。

「おりゃぁぁああああ!!!!」 
怒りを込めた声は天高く上がったが無限の空に吸い込まれ、より自分の幼さを誇張され心が怯んだ。

しかし叫んだからには走り込まなくてはいけない。
俺は短刀を振り上げ男に襲いかかった。

すると男はいとも簡単に俺の猛進をかわし、俺の手首を掴みあげた。
「ッ!?」

思いのほか突き上げられた手には短刀を握っていたのに、男には掠りもしない。

そのまま男は俺の手首を有りもしない方向に翻し、俺の手首は悲鳴をあげた。

「ッ!?……ッ」
刀は俺の手からするりと滑り落ち、あろう事か男の足元に向かった。

ここで刀を取られたら俺の身が危ない。
俺はとっさに刀を足で押し出した。

すると俺の体は倒れ刀は数寸ほど遠くに抜けた。

 そのまま俺は捻られた手首の方向に体を翻した。
全体重をかけたおかげで男は俺の手首を握ったまま拳を地面に押し付けることになった。

しかし男は俺を離そうとしない。
手首は完全に再起困難だ。

俺ができることは…
男の手に噛み付くことだった。

「ッ!?」
よし、離れた!!

俺は慌てて体を起こそうと腹に力を込めた。
……?……!?

何故だ…力が…入らない。
それよりも背中に走る雷のような激痛で俺は仰向けで息を詰まらせた。

すると男は俺の様子に気がついたのか俺の頭の横で立ち上がった。

やられるッ!
俺は次にくる攻撃に冷えあがった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

織田信長に育てられた、斎藤道三の子~斎藤新五利治~

黒坂 わかな
歴史・時代
信長に臣従した佐藤家の姫・紅茂と、斎藤道三の血を引く新五。 新五は美濃斎藤家を継ぐことになるが、信長の勘気に触れ、二人は窮地に立たされる。やがて明らかになる本能寺の意外な黒幕、二人の行く末はいかに。 信長の美濃攻略から本能寺の変の後までを、紅茂と新五双方の語り口で描いた、戦国の物語。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

鬼の桃姫

井田いづ
歴史・時代
これはむかしむかしの物語。鬼の頭領である桃姫は日々"狩り"をしながら平和に島を治めていた。ある日のこと、鬼退治を掲げた人間が島に攻め入って来たとの知らせが入る。桃姫の夢と城が崩れ始めた────。 +++++++++++++++++ 当作品は『桃太郎』『吉備津彦命の温羅退治』をベースに創作しています。

風の歌よ、大地の慈しみよ

神能 秀臣
歴史・時代
舞台は17世紀初頭のアメリカ。ポカホンタスはインディアンのポウハタン族の娘。旺盛な好奇心と豊かな知性に恵まれ、自然を愛し森の木々や妖精とも会話の出来る彼女は、豊かな大自然の中を自由に駆け回って暮らしていた。 ある日、彼女の前にイギリスから新大陸開拓の為に海を越えて来た男、ジョン・スミスが現れる。通じる筈のない言葉を心で理解し、互いの名を告げ、運命の出逢いに一瞬にして恋に落ちた。 しかし、二人の前には幾多の試練が待ち受ける……。異なる人種の壁に阻まれながらも抗い続けるポカホンタスとスミスの行く末は!? 大自然の中で紡がれる伝説の物語、ここに開幕! ポカホンタス(Pocahontas、1595年頃~1617年)は、ネイティブアメリカン・ポウハタン族の女性。英名「レベッカ・ロルフ」。本名はマトアカまたはマトワで、ポカホンタスとは、実際は彼女の戯れ好きな性格から来た「お転婆」、「甘えん坊」を意味する幼少時のあだ名だった(Wikipediaより引用)。 ジョン・スミス(John‐Smith、1580年~1631年6月21日)はイギリスの軍人、植民請負人、船乗り及び著作家である。ポウハタン族インディアンとの諍いの間に、酋長の娘であるポカホンタスと短期間だが交流があったことでも知られている(Wikipediaより引用)。 ※本作では、実在の人物とは異なる設定(性格、年齢等)で物語が展開します。

第一機動部隊

桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。 祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

狐侍こんこんちき

月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。 父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。 そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、 門弟なんぞはひとりもいやしない。 寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。 かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。 のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。 おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。 もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。 けれどもある日のこと。 自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。 脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。 こんこんちきちき、こんちきちん。 家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。 巻き起こる騒動の数々。 これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。

処理中です...