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2、
修繕
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僕はバスを降りてため息をついた。
「僕は、君を絶対許さない。」
本当に何やってるんだろう……あんなこと言ってクラスに着けばきっとひどいこと言われるに決まってるのに、今日はもっと痛い目に合うかも……。
教室についてもそんな鬱々としたものは消えてくれなくて、足が動かない。
「おい、何やってんだよ。」
「え……稲辺。」
「早く入るぞ。」
稲辺は僕の腕を掴んで無理やり教室に引き込んだ。
その先には他の4人がたむろして僕の席に落書きをしていたところだった。
「あれぇ?こいつ学校来てやんの。」
「てっきり死んだと思ったのに残念ですね。」
主に書いているのは矢嶋と松岡みたいだった。
矢嶋はきっと昨日の崛起を根に持ってるんだろうけど……松岡まで動き出したのは一体どうしてんんだろう。
僕はやじを利かないように歯を食いしばって自分の机の前に来た。
机には『死ね』『学校来んな』『ゴミ』……文字を追うだけで気分が悪くなるものばかりが乱雑に書きなぐられていた。それでも椅子の画鋲はなくなったのが幸いだった。
少しほっとして席に着くと、松岡がカツカツと僕の机を指で叩いた。
「田中君、机に落書きだなんてだめですよ。これで消さないと!!」
「ッ!」
松岡は僕の頭にびっしょりの雑巾を落とした。
僕が何の反応を示さないからか、松岡は鼻で息を吐いて僕の席から離れて行った。
……雑巾絞ってこよう。
雑巾を頭からとろうと手を伸ばしたその時、ふいに頭の上のぐっしょり感がなくなった。
顔を上げると、ありえない人物がバケツを持って立っていた。
「なんで?」
「これ油性だろ。水拭きで落ちるかよ。」
雑にバケツにぞうきんを投げ込むと、稲辺は真っ白なスポンジを僕の手に握らせた。
「1時間目は自習だ。」
「え?」
「その間に落とすぞ。」
稲辺は洗剤をスポンジに浸けて僕の机をごしごしをこすり始めた。
それを見て4人が黙っているわけはなかった。
松岡が代表のように声を上げた。
「ちょっとちょっと、何のつもりですか?これは彼の書いた落書きなんですよ?彼一人で処理をすればいい事でしょう。」
「あ、あの「宗太、手動かせ。」……うん。」
「悠一君、聞いていますか?」
稲辺は顔を上げて松岡たちに顔を向けた。
「本人がわざわざ自分の机に『死ね』『クズ』書くのかよ。これは俺は指示してないはずだろ。余計なことすんな。」
稲辺の一言に松岡は不服そうに目を逸らした。
「稲辺。」
「んだよ。」
「よかったの?あれじゃ反感買うだけだ。」
「別に。ほらもう少しだから手休めんな。」
稲辺は雑巾を使いながら丁寧に落書きを消し続けた。
2時間目には確実に引っかかってしまって、僕が終わらせようと促すも僕の机を持って屋上まで運び上げてしまった。
「僕サボりたくはないんだけど。」
「1週間サボってたやつが何言ってんだ。」
「これ以上は嫌なんだよ。」
「うるせぇ、早く消して戻るぞ。」
消し終わったころ、屋上には夏にしては珍しいくらい涼しい風が吹き抜けていた。
「稲辺、ごめんね。」
「悠一って呼んだら許してやるよ。」
「……ごめん、悠一。」
「フッ、おう!」
稲辺は、俺の顔を見て鼻を鳴らした。
3時間目こそ出ないといけないと机を掴んだ時、悠一が制した。
「え?」
「親睦深めようぜ。お前脚早いか?」
「うん……ん?え、どこいくの?」
「良いからついてこいって。あ、お前足音立てんなよ。」
悠一は息を潜めて特別教室の廊下を進んでいく。
僕はそれにそっとついていくと、あっという間に学校の裏手に回ってきてしまった。
「まさか学校サボるとか言わないよね?」
「ここまで来て何言ってんだ、ほら、ここくぐればフリーダムだ急げッ。」
頭を押されて渋々フェンスの脇をくぐると、後ろから生徒指導の教師の声が聞こえてきたけど、同時に悠一の『走れ!』という声に促されて、僕たちは一目散に走り抜けた。
「僕は、君を絶対許さない。」
本当に何やってるんだろう……あんなこと言ってクラスに着けばきっとひどいこと言われるに決まってるのに、今日はもっと痛い目に合うかも……。
教室についてもそんな鬱々としたものは消えてくれなくて、足が動かない。
「おい、何やってんだよ。」
「え……稲辺。」
「早く入るぞ。」
稲辺は僕の腕を掴んで無理やり教室に引き込んだ。
その先には他の4人がたむろして僕の席に落書きをしていたところだった。
「あれぇ?こいつ学校来てやんの。」
「てっきり死んだと思ったのに残念ですね。」
主に書いているのは矢嶋と松岡みたいだった。
矢嶋はきっと昨日の崛起を根に持ってるんだろうけど……松岡まで動き出したのは一体どうしてんんだろう。
僕はやじを利かないように歯を食いしばって自分の机の前に来た。
机には『死ね』『学校来んな』『ゴミ』……文字を追うだけで気分が悪くなるものばかりが乱雑に書きなぐられていた。それでも椅子の画鋲はなくなったのが幸いだった。
少しほっとして席に着くと、松岡がカツカツと僕の机を指で叩いた。
「田中君、机に落書きだなんてだめですよ。これで消さないと!!」
「ッ!」
松岡は僕の頭にびっしょりの雑巾を落とした。
僕が何の反応を示さないからか、松岡は鼻で息を吐いて僕の席から離れて行った。
……雑巾絞ってこよう。
雑巾を頭からとろうと手を伸ばしたその時、ふいに頭の上のぐっしょり感がなくなった。
顔を上げると、ありえない人物がバケツを持って立っていた。
「なんで?」
「これ油性だろ。水拭きで落ちるかよ。」
雑にバケツにぞうきんを投げ込むと、稲辺は真っ白なスポンジを僕の手に握らせた。
「1時間目は自習だ。」
「え?」
「その間に落とすぞ。」
稲辺は洗剤をスポンジに浸けて僕の机をごしごしをこすり始めた。
それを見て4人が黙っているわけはなかった。
松岡が代表のように声を上げた。
「ちょっとちょっと、何のつもりですか?これは彼の書いた落書きなんですよ?彼一人で処理をすればいい事でしょう。」
「あ、あの「宗太、手動かせ。」……うん。」
「悠一君、聞いていますか?」
稲辺は顔を上げて松岡たちに顔を向けた。
「本人がわざわざ自分の机に『死ね』『クズ』書くのかよ。これは俺は指示してないはずだろ。余計なことすんな。」
稲辺の一言に松岡は不服そうに目を逸らした。
「稲辺。」
「んだよ。」
「よかったの?あれじゃ反感買うだけだ。」
「別に。ほらもう少しだから手休めんな。」
稲辺は雑巾を使いながら丁寧に落書きを消し続けた。
2時間目には確実に引っかかってしまって、僕が終わらせようと促すも僕の机を持って屋上まで運び上げてしまった。
「僕サボりたくはないんだけど。」
「1週間サボってたやつが何言ってんだ。」
「これ以上は嫌なんだよ。」
「うるせぇ、早く消して戻るぞ。」
消し終わったころ、屋上には夏にしては珍しいくらい涼しい風が吹き抜けていた。
「稲辺、ごめんね。」
「悠一って呼んだら許してやるよ。」
「……ごめん、悠一。」
「フッ、おう!」
稲辺は、俺の顔を見て鼻を鳴らした。
3時間目こそ出ないといけないと机を掴んだ時、悠一が制した。
「え?」
「親睦深めようぜ。お前脚早いか?」
「うん……ん?え、どこいくの?」
「良いからついてこいって。あ、お前足音立てんなよ。」
悠一は息を潜めて特別教室の廊下を進んでいく。
僕はそれにそっとついていくと、あっという間に学校の裏手に回ってきてしまった。
「まさか学校サボるとか言わないよね?」
「ここまで来て何言ってんだ、ほら、ここくぐればフリーダムだ急げッ。」
頭を押されて渋々フェンスの脇をくぐると、後ろから生徒指導の教師の声が聞こえてきたけど、同時に悠一の『走れ!』という声に促されて、僕たちは一目散に走り抜けた。
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