10 / 12
10章
夏風邪
しおりを挟む
紗和と初めて会ったのは、誰もいなくなった会社の廊下を歩いている時だった。
ポットのお湯を捨てにきたのか、暗い廊下を静かに歩き、給湯室に入っていく紗和を見掛けた。
次の日。
同期の優佳が会社を辞めると言いにきたので、同じ部所にいる紗和の事を聞いた。
「あの子は女だけど、新人の頃の健一と似てる。」
優佳はそう言った。
その夜、1人で残っている紗和に声を掛けると、ずいぶん気の強そうな新人だった。体を壊して休んだ自分とは違い、けして弱さを見せない紗和は、なかなか心を開いてくれなかった。
ある休日のお昼。
私服で仕事をしていて、机に伏せたまま眠っていた紗和に声を掛けた。
私服で仕事をする事は禁止されていたけれど、すぐに終わらせて帰ろうと思いながら、そのまま眠ってしまったようだ。この事は誰にも言わないでと頼まれ、その代わりに、一緒に付き合ってほしい所があると、紗和を映画に誘った。
結局、映画館でも2時間ウトウトしていたくせに、それを隠そうとする紗和に、健一は交際を申し込んだ。
紗和と健一はベッドで横になっていた。背中を丸めている紗和に、健一が声を掛ける。
「紗和。」
「何?」
「眠れそうか?」
「わかんない。」
紗和は健一の方を向くと、健一の頬を触った。
「本当に健一なの?」
「そうだよ。」
「藤原くんかと思った。」
「航大は、いつも紗和を助けてくれたんだろう?」
「そう。」
健一は紗和の手を握った。
「健一、もう少し一緒にいてくれる?」
「ずっと一緒にいるから、もう眠りなよ。」
「うん。」
健一は紗和の体を包み込むと、唇を重ねた。
体が少しだけ覚えていた健一の温もりが、紗和の記憶を呼び起こす。
「好きだったの。」
「ん?」
「好きだったのに。」
紗和は健一の胸に顔を押し付けた。
「紗和。たくさん泣けよ。」
健一は、気持ちのコントロールが効かなくなっている紗和の背中を、何度もさすった。
次の日。
良樹は、紗和がよく行っていた、近所の小児科へ紗和を受診させた。
診察室に入ると、少し年を取った医者が、
「懐かしいな、紗和ちゃん。」
そう言って紗和の頭を撫でた。
「先生、すみません、無理言って。」
良樹が頭を下げた。
「話しは看護師長から聞いたよ。紗和ちゃん、少し会社をお休みした方がいいね。診断書を出すから。」
医者はそう言った。
良樹は仕事に戻って行った。
「健一くん、診断書ができたら、紗和の会社に届けてくれるかい?」
「わかりました。」
紗和が待合で待っていると、女の子がきて、
「お姉ちゃんも風邪を引いたの?」
そう聞いてきた。
「そうだよ。」
「大人だから、注射はこわくない?」
「怖いよ。でも、もう泣かないよ。」
「どうやったら、泣かないでいられるの?」
「注射をする看護師さんの顔を、ずっと見てるといいよ。」
「わかった。」
女の子は紗和に手を振って処置室に母と入っていった。
「紗和。」
「何?」
健一が言った。
「俺、紗和の会社に行ってくるけど、1人でいても平気かい?」
「うん。待ってる。」
健一は航大に連絡をすると、診断書は航大が会社に届けるからと、紗和の実家にそれを取りに来た。
「紗和は?」
「そこにいるよ。」
航大はテレビを見ている紗和の所にきた。
「紗和。」
「藤原くん。」
みんなが心配しているとも言えず、航大は言葉を飲み込んだ。
「何か飲む?」
紗和は台所へ行った。
「診断書が出たよ。2ヵ月。」
健一がそう言った。
「そんなに?」
「簡単に治るもんじゃないだろう。」
「紗和はその間、ずっとこっちにいるのか?」
「俺は来週から仕事をするよ。紗和を家に連れて行って、リモートで仕事をするつもりだ。」
「どうぞ。」
紗和が2人の前に静かにコーヒーを出す。
「ありがとう。紗和も座って。」
健一がそう言うと、紗和は健一の隣りに座った。
「少し前まで、小さな音にも怯えてたみたいなんだ。家の中、何もなかっただろう。」
健一はそう言って紗和の髪を触ると、紗和は震えた。
「何も言わないからわからないけど、時々、こうしてすごく怯えるんだ。」
震えが落ち着くと、紗和は健一の隣りで眠った。
「薬が効いてきたんだろう。ちょっと毛布取ってくる。」
健一は2階に行った。
少し顔色が戻った紗和の寝顔を、航大は見ていた。
自分の隣りで寝ていた夜の事を思い出す。
ごめんな、どうしてもっと早く気づいてやれなかったんだろう。
航大は紗和の髪を撫でた。
健一が戻ってきた。
「航大、紗和の事、まだ好きなのか?」
毛布を取ってきた健一は、紗和の足をソファに乗せると、毛布をゆっくり掛けた。
航大は、健一に話し始めた。
「去年のちょうど今くらいの時期に、秘書課の新人の女の子が自殺をしたんだ。その子の両親が、会社を訴えるって言ってるらしくって、どうやら秘書課だけの問題じゃなくなりそうなんだ。」
「パワハラでとあったのか?」
「秘書課の課長は厳しいのは有名だし、それがあってこそのエリート達だよ。誰もパワハラだとは思ってはいない。」
「じゃあ、何が原因で、その子は自殺したんだよ。」
「夜の相手だよ。」
「今どき、そんな事あるのかよ。」
「あるんだよ、それが。彼氏のいない口の硬い女子職員が秘書課に配属されるのは、そのせいなんだって。亡くなった子も、誰にも言えなかったんだろうな。両親が日記を見つけて、それでわかったみたいだよ。」
「会社は見て見ぬふりなのか?」
「一部の幹部がやってた事だし、本当にみんな、わからなかったんだ。」
「紗和も同じ様な事があったのか?」
「あんまり触れるなよ、せっかく忘れようとしてるかもしれないのに。」
「航大。お前が紗和と付き合ってたままだったら、こんなに事にならなかったのにな。」
「紗和は1人を選んだんだ。それは仕方ないだろう。それに、健一の事はずっと忘れられなかったんだと思うよ。」
紗和は健一の隣りで眠っていた。
「健一は紗和のどこが好きだったんだよ。こんな勝ち気な女なんて、どこにもいないぞ。」
「どこだろうな、やっぱり気が強いところかな。」
「俺は、高校の時から、健一が羨ましくってさ。健一が大切にしてるものを奪ってやりたくって、紗和に近づいたんだ。結局、2人の邪魔をしただけだったな。もう少し違う出会いがあったら、絶対離さなかったのに。」
「紗和は、航大の事をすごく大切に思っているよ。1番いい時にやってきてくれるヒーローだからな。俺にはそれができない分、航大が羨ましいよ。」
「健一、これから大変だぞ。心が戻っていくにつれて、思い出したくない事も、少しずつ思い出してくるぞ。」
「俺はもう、紗和から離れたりしない。勝ち気な紗和に戻ったら、また会社に行って、航大とも、いろんな話しができるようになるから。少し、時間がかかるけど、待っててくれ。」
航大が会社に帰った頃。
紗和が目を覚ました。
「寝ても寝ても、まだ眠たいの。」
「薬が効いているんだろう。」
「杉のおっちゃん先生の薬は苦くて、いつもお母さんにバレないようにゴミ箱に捨ててた。」
「紗和らしいな。」
「藤原くんは?」
「帰ったよ。」
紗和は起き上がった。
「健一、藤原くんに言って。あの場所に行ったら、絶対ダメだって。」
「航大は紗和がお世話になった課長の所へ診断書を持って行くって言ってたよ。」
「そっか。それなら良かった。」
「紗和。明日から家においで。ずっと一緒にいよう。」
「仕事は?」
「リモートでできるから。紗和が元気になるまで、離れないよ。時々、ここにもくればいいし、俺の家族にもちゃんと紹介するから。」
紗和は俯いていた。
「ごめん。一度にいろんな事を言い過ぎたね。」
紗和は首を振った。
「どうしたの?」
「健一、私ね、」
紗和は自分の腕に爪を立てている。
「言いたくない事は、言わなくてもいい。」
健一は紗和を抱きしめる。
「紗和が辛くなる度に、何度でもこうしてあげるから。」
紗和はいつまでも涙が止まらなかった。
良樹が帰ってきた。
「あっ、すまん。」
抱き合っている2人を見て、良樹は玄関に戻ろうとした。
「お父さん、違いますよ。」
「紗和、お父さん帰ってきたよ。ご飯作らなきゃ。」
健一の言葉に、良樹は居間に戻ってきた。
「お父さん。」
「紗和、どうした?」
良樹は泣いている紗和の顔を覗き込む。
「ゴミ箱に捨てた杉のおっちゃん先生の薬、見つけたのはお父さんでしょう?」
「だって、飲まなきゃダメな薬だろう。」
「あれ飲むとね、嫌な夢ばっかり見るの。苦くてやっと飲んだのに、眠るのが怖くなる。今日もらってきた薬も、昔と同じ、悪い夢ばっかり。」
「どんな夢だった?」
「蝶々になった自分がね、蜘蛛の巣にかかった夢。違う、私が蜘蛛なのかな、お腹が減ってね、死んでいく蝶々を食べようとしてる。」
「紗和、先生に言って甘い薬にしてもらおうか。」
良樹は紗和の頭を撫でた。
紗和が食器を洗っている間、健一は航大から聞いた事を、良樹に話した。
「紗和が?」
「時々、思い出すんでしょうね。」
「ひどい事、するやつもいるんだな。」
「そうですね。」
「お父さん、明日、紗和を俺の家に連れていきます。1人にしておくわけにはいかないし、俺はリモートで仕事をするんで、いつも紗和と、一緒にいられますから。」
ポットのお湯を捨てにきたのか、暗い廊下を静かに歩き、給湯室に入っていく紗和を見掛けた。
次の日。
同期の優佳が会社を辞めると言いにきたので、同じ部所にいる紗和の事を聞いた。
「あの子は女だけど、新人の頃の健一と似てる。」
優佳はそう言った。
その夜、1人で残っている紗和に声を掛けると、ずいぶん気の強そうな新人だった。体を壊して休んだ自分とは違い、けして弱さを見せない紗和は、なかなか心を開いてくれなかった。
ある休日のお昼。
私服で仕事をしていて、机に伏せたまま眠っていた紗和に声を掛けた。
私服で仕事をする事は禁止されていたけれど、すぐに終わらせて帰ろうと思いながら、そのまま眠ってしまったようだ。この事は誰にも言わないでと頼まれ、その代わりに、一緒に付き合ってほしい所があると、紗和を映画に誘った。
結局、映画館でも2時間ウトウトしていたくせに、それを隠そうとする紗和に、健一は交際を申し込んだ。
紗和と健一はベッドで横になっていた。背中を丸めている紗和に、健一が声を掛ける。
「紗和。」
「何?」
「眠れそうか?」
「わかんない。」
紗和は健一の方を向くと、健一の頬を触った。
「本当に健一なの?」
「そうだよ。」
「藤原くんかと思った。」
「航大は、いつも紗和を助けてくれたんだろう?」
「そう。」
健一は紗和の手を握った。
「健一、もう少し一緒にいてくれる?」
「ずっと一緒にいるから、もう眠りなよ。」
「うん。」
健一は紗和の体を包み込むと、唇を重ねた。
体が少しだけ覚えていた健一の温もりが、紗和の記憶を呼び起こす。
「好きだったの。」
「ん?」
「好きだったのに。」
紗和は健一の胸に顔を押し付けた。
「紗和。たくさん泣けよ。」
健一は、気持ちのコントロールが効かなくなっている紗和の背中を、何度もさすった。
次の日。
良樹は、紗和がよく行っていた、近所の小児科へ紗和を受診させた。
診察室に入ると、少し年を取った医者が、
「懐かしいな、紗和ちゃん。」
そう言って紗和の頭を撫でた。
「先生、すみません、無理言って。」
良樹が頭を下げた。
「話しは看護師長から聞いたよ。紗和ちゃん、少し会社をお休みした方がいいね。診断書を出すから。」
医者はそう言った。
良樹は仕事に戻って行った。
「健一くん、診断書ができたら、紗和の会社に届けてくれるかい?」
「わかりました。」
紗和が待合で待っていると、女の子がきて、
「お姉ちゃんも風邪を引いたの?」
そう聞いてきた。
「そうだよ。」
「大人だから、注射はこわくない?」
「怖いよ。でも、もう泣かないよ。」
「どうやったら、泣かないでいられるの?」
「注射をする看護師さんの顔を、ずっと見てるといいよ。」
「わかった。」
女の子は紗和に手を振って処置室に母と入っていった。
「紗和。」
「何?」
健一が言った。
「俺、紗和の会社に行ってくるけど、1人でいても平気かい?」
「うん。待ってる。」
健一は航大に連絡をすると、診断書は航大が会社に届けるからと、紗和の実家にそれを取りに来た。
「紗和は?」
「そこにいるよ。」
航大はテレビを見ている紗和の所にきた。
「紗和。」
「藤原くん。」
みんなが心配しているとも言えず、航大は言葉を飲み込んだ。
「何か飲む?」
紗和は台所へ行った。
「診断書が出たよ。2ヵ月。」
健一がそう言った。
「そんなに?」
「簡単に治るもんじゃないだろう。」
「紗和はその間、ずっとこっちにいるのか?」
「俺は来週から仕事をするよ。紗和を家に連れて行って、リモートで仕事をするつもりだ。」
「どうぞ。」
紗和が2人の前に静かにコーヒーを出す。
「ありがとう。紗和も座って。」
健一がそう言うと、紗和は健一の隣りに座った。
「少し前まで、小さな音にも怯えてたみたいなんだ。家の中、何もなかっただろう。」
健一はそう言って紗和の髪を触ると、紗和は震えた。
「何も言わないからわからないけど、時々、こうしてすごく怯えるんだ。」
震えが落ち着くと、紗和は健一の隣りで眠った。
「薬が効いてきたんだろう。ちょっと毛布取ってくる。」
健一は2階に行った。
少し顔色が戻った紗和の寝顔を、航大は見ていた。
自分の隣りで寝ていた夜の事を思い出す。
ごめんな、どうしてもっと早く気づいてやれなかったんだろう。
航大は紗和の髪を撫でた。
健一が戻ってきた。
「航大、紗和の事、まだ好きなのか?」
毛布を取ってきた健一は、紗和の足をソファに乗せると、毛布をゆっくり掛けた。
航大は、健一に話し始めた。
「去年のちょうど今くらいの時期に、秘書課の新人の女の子が自殺をしたんだ。その子の両親が、会社を訴えるって言ってるらしくって、どうやら秘書課だけの問題じゃなくなりそうなんだ。」
「パワハラでとあったのか?」
「秘書課の課長は厳しいのは有名だし、それがあってこそのエリート達だよ。誰もパワハラだとは思ってはいない。」
「じゃあ、何が原因で、その子は自殺したんだよ。」
「夜の相手だよ。」
「今どき、そんな事あるのかよ。」
「あるんだよ、それが。彼氏のいない口の硬い女子職員が秘書課に配属されるのは、そのせいなんだって。亡くなった子も、誰にも言えなかったんだろうな。両親が日記を見つけて、それでわかったみたいだよ。」
「会社は見て見ぬふりなのか?」
「一部の幹部がやってた事だし、本当にみんな、わからなかったんだ。」
「紗和も同じ様な事があったのか?」
「あんまり触れるなよ、せっかく忘れようとしてるかもしれないのに。」
「航大。お前が紗和と付き合ってたままだったら、こんなに事にならなかったのにな。」
「紗和は1人を選んだんだ。それは仕方ないだろう。それに、健一の事はずっと忘れられなかったんだと思うよ。」
紗和は健一の隣りで眠っていた。
「健一は紗和のどこが好きだったんだよ。こんな勝ち気な女なんて、どこにもいないぞ。」
「どこだろうな、やっぱり気が強いところかな。」
「俺は、高校の時から、健一が羨ましくってさ。健一が大切にしてるものを奪ってやりたくって、紗和に近づいたんだ。結局、2人の邪魔をしただけだったな。もう少し違う出会いがあったら、絶対離さなかったのに。」
「紗和は、航大の事をすごく大切に思っているよ。1番いい時にやってきてくれるヒーローだからな。俺にはそれができない分、航大が羨ましいよ。」
「健一、これから大変だぞ。心が戻っていくにつれて、思い出したくない事も、少しずつ思い出してくるぞ。」
「俺はもう、紗和から離れたりしない。勝ち気な紗和に戻ったら、また会社に行って、航大とも、いろんな話しができるようになるから。少し、時間がかかるけど、待っててくれ。」
航大が会社に帰った頃。
紗和が目を覚ました。
「寝ても寝ても、まだ眠たいの。」
「薬が効いているんだろう。」
「杉のおっちゃん先生の薬は苦くて、いつもお母さんにバレないようにゴミ箱に捨ててた。」
「紗和らしいな。」
「藤原くんは?」
「帰ったよ。」
紗和は起き上がった。
「健一、藤原くんに言って。あの場所に行ったら、絶対ダメだって。」
「航大は紗和がお世話になった課長の所へ診断書を持って行くって言ってたよ。」
「そっか。それなら良かった。」
「紗和。明日から家においで。ずっと一緒にいよう。」
「仕事は?」
「リモートでできるから。紗和が元気になるまで、離れないよ。時々、ここにもくればいいし、俺の家族にもちゃんと紹介するから。」
紗和は俯いていた。
「ごめん。一度にいろんな事を言い過ぎたね。」
紗和は首を振った。
「どうしたの?」
「健一、私ね、」
紗和は自分の腕に爪を立てている。
「言いたくない事は、言わなくてもいい。」
健一は紗和を抱きしめる。
「紗和が辛くなる度に、何度でもこうしてあげるから。」
紗和はいつまでも涙が止まらなかった。
良樹が帰ってきた。
「あっ、すまん。」
抱き合っている2人を見て、良樹は玄関に戻ろうとした。
「お父さん、違いますよ。」
「紗和、お父さん帰ってきたよ。ご飯作らなきゃ。」
健一の言葉に、良樹は居間に戻ってきた。
「お父さん。」
「紗和、どうした?」
良樹は泣いている紗和の顔を覗き込む。
「ゴミ箱に捨てた杉のおっちゃん先生の薬、見つけたのはお父さんでしょう?」
「だって、飲まなきゃダメな薬だろう。」
「あれ飲むとね、嫌な夢ばっかり見るの。苦くてやっと飲んだのに、眠るのが怖くなる。今日もらってきた薬も、昔と同じ、悪い夢ばっかり。」
「どんな夢だった?」
「蝶々になった自分がね、蜘蛛の巣にかかった夢。違う、私が蜘蛛なのかな、お腹が減ってね、死んでいく蝶々を食べようとしてる。」
「紗和、先生に言って甘い薬にしてもらおうか。」
良樹は紗和の頭を撫でた。
紗和が食器を洗っている間、健一は航大から聞いた事を、良樹に話した。
「紗和が?」
「時々、思い出すんでしょうね。」
「ひどい事、するやつもいるんだな。」
「そうですね。」
「お父さん、明日、紗和を俺の家に連れていきます。1人にしておくわけにはいかないし、俺はリモートで仕事をするんで、いつも紗和と、一緒にいられますから。」
12
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる