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8章
寒風
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雪が少し止んだ頃。
健一は帰っていった。見送りされると辛くなるからと言って、玄関先で別れた。
健一が残していった温もりがあれば、これからずっと、1人でも生きていける。
月曜日。
課長が紗和を呼び出した。
「夏川さん、契約書、どうもありがとう。橋田から、パソコンが壊れたって聞いたよ。」
「すみません、私の不注意で。」
「それでも、よく間に合わせる事ができてな。」
「みんながいろいろやってくれたので、本当に助かりました。」
「よし、そのみんなで飲みに行こうか。藤原、ちょっとこい。」
航大が課長の前にくる。
「金曜日、ありがとうな。」
「はい。」
健一に会わせないために、紗和のパソコンにコーヒーを掛けたの航大は、課長の言葉を素直に喜ぶ事ができない。
「飲みに行くから、その時のメンバーに声を掛けてほしい。店と時間は任せるから。大丈夫、俺の奢りだ。」
「わかりました。」
「夏川さん、これを頼む。」
紗和は書類の束を渡される。
「これと同じタイトルのものを、探してまとめておいてくれ。同じファイルが書庫にもたくさんあるから、それも全部。」
「わかりました。」
書庫にファイルを取りに来た紗和は、高い所に置いてあるファイルを取ろうと台を探していた。
「ほら。」
航大がファイルをとって紗和に渡す。
「どうもありがとう。」
「ごめん、隣りのファイルもとって。」
「そんなに一度に持っていけないだろう。」
「大丈夫。」
航大は棚から取ったファイルを静かに紗和の持っているファイルの上に重ねる。
「やっぱり、俺が持つよ。」
「ありがとう。」
「書庫の電気消せるか?」
「うん。」
紗和が電気を消すと、航大とぶつかった。
「前に進んでよ。」
紗和はそう言ったが、航大は動かなかった。
「ここに1人で閉じ込められたら、紗和は泣くのか?」
「泣かないよ。早く前に行って。」
「もう少し、可愛げがないと、彼氏なんてできないぞ。」
「彼氏なんて、いらない。」
「健一だったから、紗和の様な子と付き合ってくれたんだろうな。」
「ねぇ、早く前に行って。手が痛くなるから。」
航大は紗和の持っているファイルも自分が持った。
「俺は諦めないからな。」
両手が空き、出口に向かった紗和は、航大が持っている2つのファイルを自分が持つと、席に向かって歩き始めた。
「本当に意地っ張りだな。」
航大はファイルを奪おうとした。
「いいよ、私が頼まれたんだし。」
二人でファイルを引っ張っているうちに、ひとつが床に落ちて中の書類がバラバラになった。
黙々と拾い集めてる紗和に、航大が言った。
「俺、邪魔ばっかりしてるな。」
「そんな事ないよ。」
「なあ、紗和、」
「この書類、どうせ、バラバラにしなきゃならないんだし。」
紗和は書類を拾い集めると、ファイルに挟み、自分の席に戻って行った。
「なんか飲む?」
真衣がきた。
「ありがとう。私が入れる。紅茶で良かった?」
「うん。ねえ、航大となんかあった?」
「何もないよ。」
「今日、課長の奢りだってね。」
「そうみたいだね。」
「課長、紗和の事なんて気に入ってるみたいだからさ。」
「仕事、もっと頑張るわ。はい、真衣の分。」
「ありがとう。席で飲んだら、またこぼすよ。紗和の机、書類の山。」
「今、分けてたからね。」
「課長は、パソコン使わなくていい仕事をくれたんだよ。ねえ、食堂に行って少し休もうよ。」
「いいの?こんな時間に。」
「いいんだって、休憩にみんな使ってるよ。」
食堂に真衣ときた。
「お菓子食べる?」
真衣はカバンからクッキーを出した。
「これ、懐かしい。昔、もっと大きい箱に入ってたよね。」
「今は小さな袋のもあるんだよ。ほら。」
「ありがとう。」
紗和はクッキーを口に入れた。
今朝からできた口内炎が少し痛んだ。
「この前入ったのに、すっかりベテランみたいだね。」
真衣が言った。
「もっと、可愛らしい若い子が入れば良かったのに、ごめんね。」
「紗和にしたら、この会社は遊んでるみたいなもん?」
「違うよ。自分で考えなきゃならない事が多くて、困る事が多い。」
「前の会社は違ったの?」
「すごく決まりが多くてね…。ここにきて、伸び伸びって言われても、どうしていいかわからなかった。」
「私はさ、ここしか知らないから、それが当たり前だと思ってるけど、世の中って、広いんだよね。」
「真衣の彼はどこで働いてるの?」
「陵矢は教育委員会よ。少し前まで、鬱で休んでたの。」
「そうなの?」
「1年くらい休んだかな。」
「そんな風に見えないから、びっくりした。」
「今はね、誰が鬱の地雷を踏むかわからないの。ここだってそうよ。」
「そっか。」
「紗和は大丈夫?」
「大丈夫だよ。私、仕事しかする事ないもん。」
「今日、楽しみだね。」
「うん。」
課長を含めた5人は、会社の近くの小さな居酒屋に来ていた。
「藤原、せっかくだから、別の店でも良かったのに。」
「ここが1番落ち着くんですよ。それに夏川さんは、ここに来るの初めてだし、紹介したかったんですよ。」
お酒が運ばれ、課長のお疲れ様の言葉に合わせ、5人は乾杯をした。
「お前たち、いつも一緒にいるのか?」
課長はそう言った。
「そうですね。夏川さんが入ってから、よく集まる様になりました。」
湊はそう言った。
「会社って、だいたい人生の最後の集団になるからな。人付き合いを大切にしろよ。」
「優佳さん、何にします?」
紗和はグラスが空になった優佳に聞いた。
「私、もういいかな。」
優佳は言った。
「そんな事言わないで、もっと飲めよ。課長と同じものでいいか?」
湊はちょうど注文を取りに来た店員に追加で頼んだ。
「夏川さん、もう1軒行くだろう?」
すっかり上機嫌になっている課長が言った。
「課長、夏川さんは絶対2次会には行きませんよ。」
「どうしてだよ、夏川さん。」
課長が紗和の方を見た。
「なんか難しい魚を飼ってるみたいで、家を空けられないらしいですよ。だから、出張も無理です。」
航大は湊の嘘がおかしくて笑った。
「藤原なんで、笑うんだ?」
課長はそう言った。
「育てて食べるのかなって、思って。」
航大は笑いながらそう言った。
「夏川さん、まさかだろう。そんなに大きい魚なの?」
駅まで向かっている途中で、また雪が降ってきた。
この町って、雪ばっかり。
まだ、誰もつけていない雪に自分の足跡がついていく。
次の日。
「紗和。お昼、ちょっと外に出ない?」
優佳が呼びにきた。
紗和と優佳は、会社の近くの公園にあるベンチに座り、買ってきたサンドイッチを食べていた。
「ファイル整理、まだまだかかりそう?」
「もう、終わりそう。パソコンも明日には直ってくるみたいだし。」
「そう、良かったね。」
「みんなが良くしてくれたから。」
「紗和が前の会社に入って来た時、ずいぶん気の毒な子だなぁって思ったのよ。長続きしない部所で有名だったし、紗和は弱音を吐かない分、どんどん仕事を押し付けられて。私が会社を辞める時、秋本にそれを伝えたんだ。なんだか昔の秋本を見てるみたいでね、そのうち潰れるよって。だけど、紗和は、そんな心配は必要なかったね。ここで仕事をしているのを見て、すごく努力をしたんだなって、わかった。」
「働かないと生活できないし、私は実家なんて頼れないから。」
「父親と2人で暮してたって言ってたっけ?」
「そうです。」
「家族って、憧れない?」
「1人でいるほうが楽です。」
「課長、奥さんと先月から別居してるの。」
「そうなんですか、優佳さん、詳しいですね。」
「そうよ、私の事、奥さんにバレたのが原因だから。」
「……?」
「こっちの会社に来る前に、少しだけ、秋本と付き合ってた事があってね。別れてけっこう経ってたのに、時々、秋本の事を思い出して。そんな時に、課長に少し褒められたら、嬉しくなって、そういう関係になるのに、時間はかからなかった。」
紗和は黙って優佳の横顔を見ていた。
「家庭を壊すつもりなんてなかったの。時々、会って、私の事を認めてくれれば満足だったのに。紗和が入ってきて、課長が紗和にばっかり仕事を頼むから、ちょっと焦ってね。夜に電話したせいで、奥さんにバレたゃった。」
紗和は俯いた。
「紗和のせいじゃないよ。全部、自分のせい。」
「課長とは、続いてるの?」
「昨日ね、課長と少し話しをして、奥さんとお子さん、戻ってくるみたいよ。」
「優佳さんは、まだ好きなんでしょう?」
「ううん。私ね、来月から別の会社に行くの。健一と同じ大学だった友人が、立ち上げた所に誘われてね。健一もあの会社、辞めるんだよ。」
「そうだったんですか。」
「紗和、知らなかったの?」
「知りませんでした。」
「2人は付き合ってたんでしょう?健一は、紗和を迎えにくるために、転職したんだろうと思ってたけど。」
紗和は首を振った。
湊が2人を迎えにきた。
「優佳、昨日の事覚えてないのか?」
「何?」
「酔っ払いを家まで送るの大変だったんだからな。」
「私、ぜんぜん記憶にない。」
「夏川さん、優佳の送別会は、魚に餌やってから来てよ。2次会まで、ちゃんと参加して。」
湊がそう言った。
「わかった。」
課長が紗和を呼んだ。
「ファイルの整理は終わったかい?」
「もう少しです。」
「石山さんが、来月で退職するんだ。彼女の仕事は、他には頼めない。君が引き継いでくれるかい?」
「わかりました。」
「ところでさ、夏川さんの魚、今度見せてほしいんだけど。」
「あっ、そうでした。今度、お見せします。」
「餌の時間替えたらどうだ?石山さんの送別会には、最後まで参加するんだぞ。」
健一は帰っていった。見送りされると辛くなるからと言って、玄関先で別れた。
健一が残していった温もりがあれば、これからずっと、1人でも生きていける。
月曜日。
課長が紗和を呼び出した。
「夏川さん、契約書、どうもありがとう。橋田から、パソコンが壊れたって聞いたよ。」
「すみません、私の不注意で。」
「それでも、よく間に合わせる事ができてな。」
「みんながいろいろやってくれたので、本当に助かりました。」
「よし、そのみんなで飲みに行こうか。藤原、ちょっとこい。」
航大が課長の前にくる。
「金曜日、ありがとうな。」
「はい。」
健一に会わせないために、紗和のパソコンにコーヒーを掛けたの航大は、課長の言葉を素直に喜ぶ事ができない。
「飲みに行くから、その時のメンバーに声を掛けてほしい。店と時間は任せるから。大丈夫、俺の奢りだ。」
「わかりました。」
「夏川さん、これを頼む。」
紗和は書類の束を渡される。
「これと同じタイトルのものを、探してまとめておいてくれ。同じファイルが書庫にもたくさんあるから、それも全部。」
「わかりました。」
書庫にファイルを取りに来た紗和は、高い所に置いてあるファイルを取ろうと台を探していた。
「ほら。」
航大がファイルをとって紗和に渡す。
「どうもありがとう。」
「ごめん、隣りのファイルもとって。」
「そんなに一度に持っていけないだろう。」
「大丈夫。」
航大は棚から取ったファイルを静かに紗和の持っているファイルの上に重ねる。
「やっぱり、俺が持つよ。」
「ありがとう。」
「書庫の電気消せるか?」
「うん。」
紗和が電気を消すと、航大とぶつかった。
「前に進んでよ。」
紗和はそう言ったが、航大は動かなかった。
「ここに1人で閉じ込められたら、紗和は泣くのか?」
「泣かないよ。早く前に行って。」
「もう少し、可愛げがないと、彼氏なんてできないぞ。」
「彼氏なんて、いらない。」
「健一だったから、紗和の様な子と付き合ってくれたんだろうな。」
「ねぇ、早く前に行って。手が痛くなるから。」
航大は紗和の持っているファイルも自分が持った。
「俺は諦めないからな。」
両手が空き、出口に向かった紗和は、航大が持っている2つのファイルを自分が持つと、席に向かって歩き始めた。
「本当に意地っ張りだな。」
航大はファイルを奪おうとした。
「いいよ、私が頼まれたんだし。」
二人でファイルを引っ張っているうちに、ひとつが床に落ちて中の書類がバラバラになった。
黙々と拾い集めてる紗和に、航大が言った。
「俺、邪魔ばっかりしてるな。」
「そんな事ないよ。」
「なあ、紗和、」
「この書類、どうせ、バラバラにしなきゃならないんだし。」
紗和は書類を拾い集めると、ファイルに挟み、自分の席に戻って行った。
「なんか飲む?」
真衣がきた。
「ありがとう。私が入れる。紅茶で良かった?」
「うん。ねえ、航大となんかあった?」
「何もないよ。」
「今日、課長の奢りだってね。」
「そうみたいだね。」
「課長、紗和の事なんて気に入ってるみたいだからさ。」
「仕事、もっと頑張るわ。はい、真衣の分。」
「ありがとう。席で飲んだら、またこぼすよ。紗和の机、書類の山。」
「今、分けてたからね。」
「課長は、パソコン使わなくていい仕事をくれたんだよ。ねえ、食堂に行って少し休もうよ。」
「いいの?こんな時間に。」
「いいんだって、休憩にみんな使ってるよ。」
食堂に真衣ときた。
「お菓子食べる?」
真衣はカバンからクッキーを出した。
「これ、懐かしい。昔、もっと大きい箱に入ってたよね。」
「今は小さな袋のもあるんだよ。ほら。」
「ありがとう。」
紗和はクッキーを口に入れた。
今朝からできた口内炎が少し痛んだ。
「この前入ったのに、すっかりベテランみたいだね。」
真衣が言った。
「もっと、可愛らしい若い子が入れば良かったのに、ごめんね。」
「紗和にしたら、この会社は遊んでるみたいなもん?」
「違うよ。自分で考えなきゃならない事が多くて、困る事が多い。」
「前の会社は違ったの?」
「すごく決まりが多くてね…。ここにきて、伸び伸びって言われても、どうしていいかわからなかった。」
「私はさ、ここしか知らないから、それが当たり前だと思ってるけど、世の中って、広いんだよね。」
「真衣の彼はどこで働いてるの?」
「陵矢は教育委員会よ。少し前まで、鬱で休んでたの。」
「そうなの?」
「1年くらい休んだかな。」
「そんな風に見えないから、びっくりした。」
「今はね、誰が鬱の地雷を踏むかわからないの。ここだってそうよ。」
「そっか。」
「紗和は大丈夫?」
「大丈夫だよ。私、仕事しかする事ないもん。」
「今日、楽しみだね。」
「うん。」
課長を含めた5人は、会社の近くの小さな居酒屋に来ていた。
「藤原、せっかくだから、別の店でも良かったのに。」
「ここが1番落ち着くんですよ。それに夏川さんは、ここに来るの初めてだし、紹介したかったんですよ。」
お酒が運ばれ、課長のお疲れ様の言葉に合わせ、5人は乾杯をした。
「お前たち、いつも一緒にいるのか?」
課長はそう言った。
「そうですね。夏川さんが入ってから、よく集まる様になりました。」
湊はそう言った。
「会社って、だいたい人生の最後の集団になるからな。人付き合いを大切にしろよ。」
「優佳さん、何にします?」
紗和はグラスが空になった優佳に聞いた。
「私、もういいかな。」
優佳は言った。
「そんな事言わないで、もっと飲めよ。課長と同じものでいいか?」
湊はちょうど注文を取りに来た店員に追加で頼んだ。
「夏川さん、もう1軒行くだろう?」
すっかり上機嫌になっている課長が言った。
「課長、夏川さんは絶対2次会には行きませんよ。」
「どうしてだよ、夏川さん。」
課長が紗和の方を見た。
「なんか難しい魚を飼ってるみたいで、家を空けられないらしいですよ。だから、出張も無理です。」
航大は湊の嘘がおかしくて笑った。
「藤原なんで、笑うんだ?」
課長はそう言った。
「育てて食べるのかなって、思って。」
航大は笑いながらそう言った。
「夏川さん、まさかだろう。そんなに大きい魚なの?」
駅まで向かっている途中で、また雪が降ってきた。
この町って、雪ばっかり。
まだ、誰もつけていない雪に自分の足跡がついていく。
次の日。
「紗和。お昼、ちょっと外に出ない?」
優佳が呼びにきた。
紗和と優佳は、会社の近くの公園にあるベンチに座り、買ってきたサンドイッチを食べていた。
「ファイル整理、まだまだかかりそう?」
「もう、終わりそう。パソコンも明日には直ってくるみたいだし。」
「そう、良かったね。」
「みんなが良くしてくれたから。」
「紗和が前の会社に入って来た時、ずいぶん気の毒な子だなぁって思ったのよ。長続きしない部所で有名だったし、紗和は弱音を吐かない分、どんどん仕事を押し付けられて。私が会社を辞める時、秋本にそれを伝えたんだ。なんだか昔の秋本を見てるみたいでね、そのうち潰れるよって。だけど、紗和は、そんな心配は必要なかったね。ここで仕事をしているのを見て、すごく努力をしたんだなって、わかった。」
「働かないと生活できないし、私は実家なんて頼れないから。」
「父親と2人で暮してたって言ってたっけ?」
「そうです。」
「家族って、憧れない?」
「1人でいるほうが楽です。」
「課長、奥さんと先月から別居してるの。」
「そうなんですか、優佳さん、詳しいですね。」
「そうよ、私の事、奥さんにバレたのが原因だから。」
「……?」
「こっちの会社に来る前に、少しだけ、秋本と付き合ってた事があってね。別れてけっこう経ってたのに、時々、秋本の事を思い出して。そんな時に、課長に少し褒められたら、嬉しくなって、そういう関係になるのに、時間はかからなかった。」
紗和は黙って優佳の横顔を見ていた。
「家庭を壊すつもりなんてなかったの。時々、会って、私の事を認めてくれれば満足だったのに。紗和が入ってきて、課長が紗和にばっかり仕事を頼むから、ちょっと焦ってね。夜に電話したせいで、奥さんにバレたゃった。」
紗和は俯いた。
「紗和のせいじゃないよ。全部、自分のせい。」
「課長とは、続いてるの?」
「昨日ね、課長と少し話しをして、奥さんとお子さん、戻ってくるみたいよ。」
「優佳さんは、まだ好きなんでしょう?」
「ううん。私ね、来月から別の会社に行くの。健一と同じ大学だった友人が、立ち上げた所に誘われてね。健一もあの会社、辞めるんだよ。」
「そうだったんですか。」
「紗和、知らなかったの?」
「知りませんでした。」
「2人は付き合ってたんでしょう?健一は、紗和を迎えにくるために、転職したんだろうと思ってたけど。」
紗和は首を振った。
湊が2人を迎えにきた。
「優佳、昨日の事覚えてないのか?」
「何?」
「酔っ払いを家まで送るの大変だったんだからな。」
「私、ぜんぜん記憶にない。」
「夏川さん、優佳の送別会は、魚に餌やってから来てよ。2次会まで、ちゃんと参加して。」
湊がそう言った。
「わかった。」
課長が紗和を呼んだ。
「ファイルの整理は終わったかい?」
「もう少しです。」
「石山さんが、来月で退職するんだ。彼女の仕事は、他には頼めない。君が引き継いでくれるかい?」
「わかりました。」
「ところでさ、夏川さんの魚、今度見せてほしいんだけど。」
「あっ、そうでした。今度、お見せします。」
「餌の時間替えたらどうだ?石山さんの送別会には、最後まで参加するんだぞ。」
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