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二人のパンチェン・ラマ11世 ②

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「あなたもすでに気づいていることですが、彼の主治医はなぜだかみんな、死んでしまうんですよね。
 なぜだと思います?」

 彼の言葉にリールイは答えられなかった。

「教えてあげましょうか? 彼は神に愛された聖なる者。そしてその神の愛ゆへに受難者になったのです。
 その聖なる神聖さに、みんな引かれてしまう。そして魅せられ、愛さずにはいられなくなる。そして最後には愛と言う名のもとに支配したくなる。彼のすべてを自分のものにしたくなるのです」
 彼は少し冷ややかな笑みを浮かべながらリールイにそう言った。

「私は彼のおかげで、誰にも本当のパンチェン・ラマだとは思われていないし、愛されていない。だから誰にも愛と言う名のもとに、煩わされなくてすむ。
 だから私は彼に、とても感謝しています」
とも言った。

「私は民にとってむしろ敵とみなされている存在ですが、民に自分の正義を確認させてあげられる存在でもあるのです。でも、もう一人のパンチェン・ラマはその逆。
 その聖なる美しさで人心を惑わしてしまう。人の心の奥深くに鍵をかけて閉じ込めている、解き放ってはいけない欲望を目覚めさせてしまうのです」




(この作品のスピン小説:「聖なる者~王女ルナの恋」)
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