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地球編 第2章 武官オリオンとアメリア
第5話 お前、何をしている?
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「お前、何をしている?」
と、マルデクへ帰還するためのワープトンネルを探し、座標軸を計算しているオリオンに向かって、アメリアは氷のような怒りのこもった冷たい声で言った。
「まだハンネスさまと会って話もしていないのに、お前は帰るつもりなのか?
私は絶対、帰らぬぞ。そんなに帰りたいなら、お前ひとりで帰れ!」
と言い放った。
「アメリア王女さま、あなたは鈍感なのですか? それとも馬鹿なのですか?
今日の昼間、見たでしょう? ハンネスには恋人がいるのです。そしてあなたのことなど、全くと言って良いほどハンネスは覚えていません」
「それがどうしたというのだ?
私はまだハンネスさまときちんと再会した訳では無い。
ハンネスさまは私のことも、予言のことも、正しく把握しているとは言えない。
私と結婚すれば、マルデクの王になれるし、あの総統を打ち負かすことも可能な強大な権力を、ハンネスさまは手に入れることが出来るのだぞ。
強く無ければ、愛する者を護ることさえ出来ないこの混乱の時代に、懸賞金のかかっている総統のお気に入りを本当に護りたいのならば、絶対に、この私と結婚し、王になるべきだ。
私は寛大な心で、ハンネスが愛するあの者を愛人にすることをぐらいは、許してやるつもりだ」
と平然と言ってのけた。
オリオンは呆れて、返す言葉も出なかった。
こんな世間知らずで、自分勝手な娘のためにあの誠実で美しいカップルを引き裂く手伝いをしなければならないのかと思うと、ため息が出た。
と、マルデクへ帰還するためのワープトンネルを探し、座標軸を計算しているオリオンに向かって、アメリアは氷のような怒りのこもった冷たい声で言った。
「まだハンネスさまと会って話もしていないのに、お前は帰るつもりなのか?
私は絶対、帰らぬぞ。そんなに帰りたいなら、お前ひとりで帰れ!」
と言い放った。
「アメリア王女さま、あなたは鈍感なのですか? それとも馬鹿なのですか?
今日の昼間、見たでしょう? ハンネスには恋人がいるのです。そしてあなたのことなど、全くと言って良いほどハンネスは覚えていません」
「それがどうしたというのだ?
私はまだハンネスさまときちんと再会した訳では無い。
ハンネスさまは私のことも、予言のことも、正しく把握しているとは言えない。
私と結婚すれば、マルデクの王になれるし、あの総統を打ち負かすことも可能な強大な権力を、ハンネスさまは手に入れることが出来るのだぞ。
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私は寛大な心で、ハンネスが愛するあの者を愛人にすることをぐらいは、許してやるつもりだ」
と平然と言ってのけた。
オリオンは呆れて、返す言葉も出なかった。
こんな世間知らずで、自分勝手な娘のためにあの誠実で美しいカップルを引き裂く手伝いをしなければならないのかと思うと、ため息が出た。
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