上 下
26 / 234
地上編 第2章 プリンス・チャーミングとジュンス

第21話 オーナーの妹ジュリアの新しいボーイフレンド③

しおりを挟む
 ジュリアの父は華僑の豪商で、親しくしていたチベット人の友がいた。
 
 ある日、その親しい友が中国共産主義政府に異を唱へ、家族もろとも殺されたと云う悲しい知らせが届いた。
 その悲報を、彼は信じる事が出来なかった。だから危険もかえりみず、すぐに秘密のルートでチベットへ渡った。そして友人の家の隠れ部屋で、重傷を負い倒れていた友の息子を発見した。

 友の息子は微かではあるが、まだ息をしていた。
 彼は迷わず、友の息子を秘かに救出することを決断した。

 華僑のネットワークをフル稼働させ、お金も糸目をつけずに投入した。
 一番効果があったのは中国地方政府高官への賄賂攻勢であり、裏金工作だった。
 とにかくそのようにして、ジュリアの父は友の息子を救出することに成功した。
 そして病気で亡くした実の息子ダニエルの代わりに、友の息子を育てた。
 幼いジュリアはすぐに新しい兄を受け入れ、慕うようになった。

 幼い頃のジュリアは、新しい兄ダニエルが大好きで、いつもダニエルの後をついて歩こうとした。好奇心の塊とも言えたこの可愛らしい幼児は、兄のすることはなんでもまねしようとした。
 だからダニエルが武術を習い始めた時、一緒に武術を習うと言って、きかなかった。そして最初は反対していた両親も、結局は根負けして、ジュリアに武術を習うことを許した。
 
 やがてこの兄妹は華僑の誰もが知る有名な兄妹となった。
 兄ダニエルは頭脳明晰な美青年へと成長し、ジュリアの父が率いる華僑財団でその才能を開花させ、誰もが認める財閥の後継者となった。一方、妹ジュリアはミスコンで優勝するような、誰もが振り返る美女に成長した。
 
 
 その日、ジュリアはちょっとしたことで兄ダニエルと喧嘩した。
 ダニエルはマッチョな美青年で独身だったので、女性からの誘惑も多く、噂も絶えなかった。
 そのたびにジュリアは兄の恋を邪魔してきたとも言えるのだが、しかし今度の相手はなぜか、ダニエルの反応がいつもとは違っていた。それには深い理由があったのだが、ダニエルはその理由をジュリアには明かさなかった。

 いつもと違う兄の態度に、ジュリアは深く傷ついた。
 ジュリアは悲しくなり、誰も知る者がいないところへ行きたくなった。
 それでひとり夜の街へ繰り出し、いつもは行かない酒場へ行った。

 美女がひとり酔いつぶれているのを見て、寄ってくる二人組の男たちがいた。
 とうぜんジュリアは無視し、しつこい男たちを怒りにまかせて投げ飛ばした。
 面子をつぶされた男は、仲間を呼びよせ店の外でジュリアが出てくるのを待っていた。

 そんなことを知らないジュリアは、かなり酔いつぶれた状態で店を出た。
 そしてまた、先の二人組に絡まれたのだが、今度はさっきのようなわけには行かなかった。
 今度はあまりに酒を飲見過ぎていて、酔いのせいで、体が自由に動かなかった。相手に蹴りを入れようとして、ジュリアは自分から転んでしまったのだ。もはやジュリアは絶体絶命の危機にあった。

 しかしその様子を、近くで見ていた若い男がいた。
 彼は見知らぬ女性の危機に、迷わず助けに入った。
 それがマイケルだった。

 若い男は、あっという間に10人はいたチンピラ達を投げ飛ばし、倒していた。
 それは電光石火のような早業だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幻影のアリア

葉羽
ミステリー
天才高校生探偵の神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、とある古時計のある屋敷を訪れる。その屋敷では、不可解な事件が頻発しており、葉羽は事件の真相を解き明かすべく、推理を開始する。しかし、屋敷には奇妙な力が渦巻いており、葉羽は次第に現実と幻想の境目が曖昧になっていく。果たして、葉羽は事件の謎を解き明かし、屋敷から無事に脱出できるのか?

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

友よ、お前は何故死んだのか?

河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」 幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。 だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。 それは洋壱の死の報せであった。 朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。 悲しみの最中、朝倉から提案をされる。 ──それは、捜査協力の要請。 ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。 ──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?

少年の嵐!

かざぐるま
ミステリー
小6になった春に父を失った内気な少年、信夫(のぶお)の物語りです。イラスト小説の挿絵で物語を進めていきます。

迷子の人間さん、モンスター主催の『裏の学園祭』にようこそ

雪音鈴
ミステリー
【モンスター主催の裏の学園祭について】 ≪ハロウィンが近い今日、あちら側とこちら側の境界は薄い――さあさあ、モンスター側の世界に迷い込んでしまった迷子の人間さん、あなたはモンスター主催のあるゲームに参加して、元の世界に帰る権利を勝ち取らなくてはいけません。『裏の学園祭』が終わる前にここから抜け出すために、どうぞ頑張ってください。ああ、もちろん、あなたがいるのはモンスターの世界、くれぐれも、命の危険にはご用心を――≫

誰何の夢から覚める時

多摩翔子
ミステリー
「隠し事のある探偵」×「記憶喪失の喫茶店マスター」×「忘れられた怪異の少女」による、"美珠町の怪異"に迫るホラー・ミステリー! 舞台はC部N県美珠町は人口一万人程度の田舎町 僕こと"すいか"は”静寂潮”という探偵に山の中で倒れているところを助けられた。 自分が”喫茶まほろば”のマスターだったこと、名前が”すいか”であること、コーヒーは水色のマグに入れること……と次々と脳内で少女の声が響き、”認識”が与えられるが、それを知るまでの”記憶”が抜け落ちていた。 部屋に残された「記憶を食べる代わりに願いを叶える怪異、みたま様」のスクラップブックを見つけてしまう。 現状を掴めないまま眠りにつくと、夢の中で「自分そっくりの顔を持つ天使の少女、みたま様」に出会い…… 「あなたが記憶を思い出せないのは、この世界で”みたま様”が忘れられてしまったから」 忘れられた怪異の行方を追うため、すいかは喫茶オーナー兼駆け出し探偵助手となり、探偵静寂潮と共に、この町に隠された謎と、自分の記憶に隠された秘密を暴くため動き出す。 ___例え、その先にどんな真実があろうとも ◇◇◇ こちらの作品は書き手がBLを好んでいるためそういった表現は意識していませんが、一部BLのように受け取れる可能性があります。

消えた死体 めんどくさがり探偵

ナマケモノ
ミステリー
 めんどくさがりな探偵のもとに依頼がくる。 依頼は消えた死体と殺害した犯人を探すこと。 作品に出てくる人物や地名、団体などはフィクションです。  注意:カクヨムと重複投稿しています。

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

処理中です...