3 / 15
第3話 かつての部下セーヤの変貌
しおりを挟む
「この星での活動拠点である宿へ、ご案内いたします」
と、かつての部下セーヤはヘルメスに言った。
その声は以前と比べると少し大人びていたが、相変わらず少女のような、子どものような、愛らしい声であった。
肩を並べて一緒に歩くと、セーヤの背が以前よりもかなり伸び、高くなっていることにヘルメスは気づいた。一緒に仕事をしていた頃のセーヤは、まだ子どもと言って良いほどの幼さが残っていたのだが、今のセーヤは全く違っていた。
もともと美しい少年だったのだが、いっそう美しくなり、その美しさは少し危うさを感じるほどの美しさだった。
ヘルメスは昔のセーヤを知っていたので、変な邪念に心を奪われ、激情に駆られることはなかったのだが、大多数のものはその美しさに出会った時、戦慄的な激情が心に走り、魂の奧深くに閉じ込めていた、悪魔の声にも似た欲望を目覚めさせてしまうのが常だった。グランドマスターとて、例外ではなかった。
セーヤと肩を並べて夜道を歩きながら、
『最後にセーヤに会ったのは、いつだっただろう?』
とヘルメスは心の中でひとりつぶやいていた。
『今の部署へ異動する前だから、かれこれ300年前だろうか・・・』
セーヤは辺境の星の出身で、それも多くの場合、不吉な子と言われる特別変異体だった。
「すっかりもう大人だな」とヘルメスは、笑いながらセーヤに言った。
その言葉に、嬉しそうにセーヤは微笑みを返した。
その微笑はやはり美しかった。
しかし、ヘルメスは美し過ぎるセーヤの微笑みに一抹の不安を感じていた。
普通は大人になるということは、良いことなのだが、ミュータントの場合、それは色々な意味で、困難が待ち受ける茨の道が始まるということだった。
と、かつての部下セーヤはヘルメスに言った。
その声は以前と比べると少し大人びていたが、相変わらず少女のような、子どものような、愛らしい声であった。
肩を並べて一緒に歩くと、セーヤの背が以前よりもかなり伸び、高くなっていることにヘルメスは気づいた。一緒に仕事をしていた頃のセーヤは、まだ子どもと言って良いほどの幼さが残っていたのだが、今のセーヤは全く違っていた。
もともと美しい少年だったのだが、いっそう美しくなり、その美しさは少し危うさを感じるほどの美しさだった。
ヘルメスは昔のセーヤを知っていたので、変な邪念に心を奪われ、激情に駆られることはなかったのだが、大多数のものはその美しさに出会った時、戦慄的な激情が心に走り、魂の奧深くに閉じ込めていた、悪魔の声にも似た欲望を目覚めさせてしまうのが常だった。グランドマスターとて、例外ではなかった。
セーヤと肩を並べて夜道を歩きながら、
『最後にセーヤに会ったのは、いつだっただろう?』
とヘルメスは心の中でひとりつぶやいていた。
『今の部署へ異動する前だから、かれこれ300年前だろうか・・・』
セーヤは辺境の星の出身で、それも多くの場合、不吉な子と言われる特別変異体だった。
「すっかりもう大人だな」とヘルメスは、笑いながらセーヤに言った。
その言葉に、嬉しそうにセーヤは微笑みを返した。
その微笑はやはり美しかった。
しかし、ヘルメスは美し過ぎるセーヤの微笑みに一抹の不安を感じていた。
普通は大人になるということは、良いことなのだが、ミュータントの場合、それは色々な意味で、困難が待ち受ける茨の道が始まるということだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
「光の天使」 光と影のシンフォニー
夢織人
ミステリー
第1章~第2章 アシュラとミトラが転生した存在である、プリンス・チャーミングとジュンスの物語。
第3章 休職中の「アトランティス四神戦士」英雄ルシファーと美形戦士ヨハネ、謎の下宿人セザール、密命により動く戦士ミカエル、行方不明の戦士アシュラの物語。
第4章 惑星アトランティスと惑星シャンバラの物語。
かれん
青木ぬかり
ミステリー
「これ……いったい何が目的なの?」
18歳の女の子が大学の危機に立ち向かう物語です。
※とても長いため、本編とは別に前半のあらすじ「忙しい人のためのかれん」を公開してますので、ぜひ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
支配するなにか
結城時朗
ミステリー
ある日突然、乖離性同一性障害を併発した女性・麻衣
麻衣の性格の他に、凶悪な男がいた(カイ)と名乗る別人格。
アイドルグループに所属している麻衣は、仕事を休み始める。
不思議に思ったマネージャーの村尾宏太は気になり
麻衣の家に尋ねるが・・・
麻衣:とあるアイドルグループの代表とも言える人物。
突然、別の人格が支配しようとしてくる。
病名「解離性同一性障害」 わかっている性格は、
凶悪な男のみ。
西野:元国民的アイドルグループのメンバー。
麻衣とは、プライベートでも親しい仲。
麻衣の別人格をたまたま目撃する
村尾宏太:麻衣のマネージャー
麻衣の別人格である、凶悪な男:カイに
殺されてしまう。
治療に行こうと麻衣を病院へ送る最中だった
西田〇〇:村尾宏太殺害事件の捜査に当たる捜一の刑事。
犯人は、麻衣という所まで突き止めるが
確定的なものに出会わなく、頭を抱えて
いる。
カイ :麻衣の中にいる別人格の人
性別は男。一連の事件も全てカイによる犯行。
堀:麻衣の所属するアイドルグループの人気メンバー。
麻衣の様子に怪しさを感じ、事件へと首を突っ込んでいく・・・
※刑事の西田〇〇は、読者のあなたが演じている気分で読んで頂ければ幸いです。
どうしても浮かばなければ、下記を参照してください。
物語の登場人物のイメージ的なのは
麻衣=白石麻衣さん
西野=西野七瀬さん
村尾宏太=石黒英雄さん
西田〇〇=安田顕さん
管理官=緋田康人さん(半沢直樹で机バンバン叩く人)
名前の後ろに来るアルファベットの意味は以下の通りです。
M=モノローグ (心の声など)
N=ナレーション
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
消された過去と消えた宝石
志波 連
ミステリー
大富豪斎藤雅也のコレクション、ピンクダイヤモンドのペンダント『女神の涙』が消えた。
刑事伊藤大吉と藤田建造は、現場検証を行うが手掛かりは出てこなかった。
後妻の小夜子は、心臓病により車椅子生活となった当主をよく支え、二人の仲は良い。
宝石コレクションの隠し場所は使用人たちも知らず、知っているのは当主と妻の小夜子だけ。
しかし夫の体を慮った妻は、この一年一度も外出をしていない事は確認できている。
しかも事件当日の朝、日課だったコレクションの確認を行った雅也によって、宝石はあったと証言されている。
最後の確認から盗難までの間に人の出入りは無く、使用人たちも徹底的に調べられたが何も出てこない。
消えた宝石はどこに?
手掛かりを掴めないまま街を彷徨っていた伊藤刑事は、偶然立ち寄った画廊で衝撃的な事実を発見し、斬新な仮説を立てる。
他サイトにも掲載しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACの作品を使用しています。
あの鮮やかすぎる紅葉の下には
桐原真保
ミステリー
不慮の事故で亡くなった父親の死から10年以上過ぎたある時、母親は突然断捨離をして新しい生活を始める宣言をした。三人の子供たちは京都の郊外にある亀岡の実家に呼ばれ、それぞれの思い出の写真やら持ち物を処分しろ、と言われる。三人の子供たちの末っ子、彩奈はアルバムを見ているうちに、奇妙なことが気になった。父親の亡くなった山荘から続く緩やかな山の斜面に、父親の持ち物が写っていた。
彩奈はその写真を撮ったアマチュア写真家に会いに行く……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる