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帰郷 農業者編
執行スキル
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執行スキル『断罪』
手の平から白い光を放つこの技には、見た目の派手さに反し、攻撃力は一切ない。
では光が当たった相手には何が起こるかと言うと――
「執行スキルだと!? 貴様、執行官だったのか?!……ん? 身体に何ともない? ハッタリか? いやしかし本物なら……」
ブツブツと呟きながら頭を動かして自分の体を確認するおっさん。
そして、自分の目で何も異常が確認出来なかったのか、おっさんは顔を歪めて笑い出した。
まあ、そうなるよね。
「は、はっはー! 執行官を名乗るのは重罪だぞ小僧! その罪の意識をもって、俺の闇魔法スキル『隷属』を受け入れるがい――」
「な、なんであんた、赤くなってるんだ?」
「は?」
まだ意識が残っている男が居た様で、僕の目にも見えることを代弁してくれた。
おっさんの全身は真っ赤な光にぼんやりと包まれているのだ。
大きな街では通行の際に確認する罪状判定の水晶球でのアウト判定の光の様に。
ちなみに正常なら青い光である。
男に言われておっさんは再度自分を確認するが、おそらくおっさんの目には赤い光など見えていないだろう。
これはそういうスキル技なのだ。
そもそも僕は自分の事を「執行官だ!」とは一言も言ってないのだけれどもね?
でも必要な事は言わなければいけない。
「おっさ――あなたは今、執行スキル『断罪』によって、自分は罪を犯していることを周りに知らせている状態になっています。闇魔法スキルを使えるということは奴隷商なのでしょうが、大きな街や兵士の常駐するような村に立ち入れば即座に逮捕されるでしょう。……一応、知ってますよね?」
本当の執行官がベラベラと喋ってくれた話に、『毎度毎度、罪を犯した奴に説明してやるの面倒くさい』という事を言っていたので、形式的なものなのだろうがソレっぽく言っておく。
だがおっさんは僕の方を見ると真っ青な顔をしていた。
まあ真っ赤な光に包まれてるから、そうかなー? と思っただけだけれども。
「な?……え? 嘘だろう? お前ら寄って集って、俺に嘘をついているんだろう!?」
「……あー、まさかモグリ?」
僕の言葉にビクリと震えるおっさん。マジかー。
「闇魔法スキルを持っている事自体は罪じゃないけど、――コレさっきも言った気がするんだが――ソレを人に使ったら罪になるからね?」
実は冒険者の中には15歳以降に闇魔法スキルを覚えた人も居るらしい。
もちろん『誰』が使えるかは僕も知らないけれど、奥の手として魔物相手に使ったことがある冒険者が居たという噂話は聞いたことがある。
闇魔法スキルには『暗闇』や『魔法スキル封じ』などの状態異常を引き起こす技が多いそうだ。
ただやはり街中では大っぴらに使えないスキルなので、使えても黙っている人は居るというわけだ。
目の前のおっさんみたいに人に対して『洗脳』などと言う物騒な技を使える人が、実はすぐ隣に居るとなれば誰だって嫌だろうしね。
あとそんな噂が流れたら『執行官』がすっ飛んでくる。
茫然としているおっさんにアレコレと質問してみると、ポツリポツリと今までの人生を語ってくれて、このおっさんの全貌が見えてきた。
もともと商人として働いていたらしい。普通の品物を扱う普通の商人だ。持っていたスキルも商術という計算が早くなったり、目利きが出来たりする技が使えるスキルが15歳の時に授かったものだった。
だが数年前にちょっとしたことで、自分が闇魔法スキルを使えることに気づいたらしい。
酒場で他の商人と飲食をしている時に口論となり、その時の相手が自分よりも儲かっている商人だったらしく、鬱屈とした気持ちを込めながら相手を睨むと、突然相手が「目が見えない!」といってその場で半狂乱となった。
その場では何故そうなったのかは分からなかったのだが、その後色々と試したところ自分が闇魔法スキルを使えることに気づいたのだ。
それから数年掛けて闇魔法スキルのレベルを上げて、今回の事を計画したらしい。
それは非合法の奴隷を扱う事。
奴隷という商品はモノによっては高く売れる。だが当然買い付けにも金は掛かるし、自分は元々商人で奴隷商ではない。ならば裏から裏へ。
表に出ないやり取りをして、右から左に商品を流せば自分の手元に金は残り、証拠は一切残らないと考えたらしい。
そして普通の商人として巡業一座(聞けば真っ当な一座だったらしい。そこに紛れれば自分の事を誤魔化せると考えたようだ)に同行し、ネズミレースの掛け金を表ではお小遣い程度、裏では高額配当にして開催。
ターゲットとした家の金を巻き上げて首を回らなくさせて、少し時間を置いて、本当にどうしようもなくなった時を狙って奴隷話を持ち掛けようとしていたらしい。
ちなみに出場するネズミは闇魔法スキル『隷属』にてコントロール。ようはイカサマだ。
唯一の誤算はその前に別の奴隷商が村に行った事。
次から次に話が出て、頭が追いついてなかったアサが「そうだったんだ」と茫然と頷いていたから、「これアサ達の事だよ?」と言ったら目を丸くして驚いていた。
そんなことを長々と話していたら、男達が次々と蘇ってきた。
まあ元々死んでないから当たり前だけど。アサ達にはちゃんと手加減するように伝えてある。
若干名、見事なタンコブを拵えた男達が居たが。
そんな男達は、まー見事に殺気だっている。イカサマをやられていたとなれば怒って当然だろう。
その点だけはね。
とはいえここでおっさんを殺して殺人となればまた問題となる。
僕は面倒くさい事になったなぁと思いつつ、男達に一つ提案をした。
手の平から白い光を放つこの技には、見た目の派手さに反し、攻撃力は一切ない。
では光が当たった相手には何が起こるかと言うと――
「執行スキルだと!? 貴様、執行官だったのか?!……ん? 身体に何ともない? ハッタリか? いやしかし本物なら……」
ブツブツと呟きながら頭を動かして自分の体を確認するおっさん。
そして、自分の目で何も異常が確認出来なかったのか、おっさんは顔を歪めて笑い出した。
まあ、そうなるよね。
「は、はっはー! 執行官を名乗るのは重罪だぞ小僧! その罪の意識をもって、俺の闇魔法スキル『隷属』を受け入れるがい――」
「な、なんであんた、赤くなってるんだ?」
「は?」
まだ意識が残っている男が居た様で、僕の目にも見えることを代弁してくれた。
おっさんの全身は真っ赤な光にぼんやりと包まれているのだ。
大きな街では通行の際に確認する罪状判定の水晶球でのアウト判定の光の様に。
ちなみに正常なら青い光である。
男に言われておっさんは再度自分を確認するが、おそらくおっさんの目には赤い光など見えていないだろう。
これはそういうスキル技なのだ。
そもそも僕は自分の事を「執行官だ!」とは一言も言ってないのだけれどもね?
でも必要な事は言わなければいけない。
「おっさ――あなたは今、執行スキル『断罪』によって、自分は罪を犯していることを周りに知らせている状態になっています。闇魔法スキルを使えるということは奴隷商なのでしょうが、大きな街や兵士の常駐するような村に立ち入れば即座に逮捕されるでしょう。……一応、知ってますよね?」
本当の執行官がベラベラと喋ってくれた話に、『毎度毎度、罪を犯した奴に説明してやるの面倒くさい』という事を言っていたので、形式的なものなのだろうがソレっぽく言っておく。
だがおっさんは僕の方を見ると真っ青な顔をしていた。
まあ真っ赤な光に包まれてるから、そうかなー? と思っただけだけれども。
「な?……え? 嘘だろう? お前ら寄って集って、俺に嘘をついているんだろう!?」
「……あー、まさかモグリ?」
僕の言葉にビクリと震えるおっさん。マジかー。
「闇魔法スキルを持っている事自体は罪じゃないけど、――コレさっきも言った気がするんだが――ソレを人に使ったら罪になるからね?」
実は冒険者の中には15歳以降に闇魔法スキルを覚えた人も居るらしい。
もちろん『誰』が使えるかは僕も知らないけれど、奥の手として魔物相手に使ったことがある冒険者が居たという噂話は聞いたことがある。
闇魔法スキルには『暗闇』や『魔法スキル封じ』などの状態異常を引き起こす技が多いそうだ。
ただやはり街中では大っぴらに使えないスキルなので、使えても黙っている人は居るというわけだ。
目の前のおっさんみたいに人に対して『洗脳』などと言う物騒な技を使える人が、実はすぐ隣に居るとなれば誰だって嫌だろうしね。
あとそんな噂が流れたら『執行官』がすっ飛んでくる。
茫然としているおっさんにアレコレと質問してみると、ポツリポツリと今までの人生を語ってくれて、このおっさんの全貌が見えてきた。
もともと商人として働いていたらしい。普通の品物を扱う普通の商人だ。持っていたスキルも商術という計算が早くなったり、目利きが出来たりする技が使えるスキルが15歳の時に授かったものだった。
だが数年前にちょっとしたことで、自分が闇魔法スキルを使えることに気づいたらしい。
酒場で他の商人と飲食をしている時に口論となり、その時の相手が自分よりも儲かっている商人だったらしく、鬱屈とした気持ちを込めながら相手を睨むと、突然相手が「目が見えない!」といってその場で半狂乱となった。
その場では何故そうなったのかは分からなかったのだが、その後色々と試したところ自分が闇魔法スキルを使えることに気づいたのだ。
それから数年掛けて闇魔法スキルのレベルを上げて、今回の事を計画したらしい。
それは非合法の奴隷を扱う事。
奴隷という商品はモノによっては高く売れる。だが当然買い付けにも金は掛かるし、自分は元々商人で奴隷商ではない。ならば裏から裏へ。
表に出ないやり取りをして、右から左に商品を流せば自分の手元に金は残り、証拠は一切残らないと考えたらしい。
そして普通の商人として巡業一座(聞けば真っ当な一座だったらしい。そこに紛れれば自分の事を誤魔化せると考えたようだ)に同行し、ネズミレースの掛け金を表ではお小遣い程度、裏では高額配当にして開催。
ターゲットとした家の金を巻き上げて首を回らなくさせて、少し時間を置いて、本当にどうしようもなくなった時を狙って奴隷話を持ち掛けようとしていたらしい。
ちなみに出場するネズミは闇魔法スキル『隷属』にてコントロール。ようはイカサマだ。
唯一の誤算はその前に別の奴隷商が村に行った事。
次から次に話が出て、頭が追いついてなかったアサが「そうだったんだ」と茫然と頷いていたから、「これアサ達の事だよ?」と言ったら目を丸くして驚いていた。
そんなことを長々と話していたら、男達が次々と蘇ってきた。
まあ元々死んでないから当たり前だけど。アサ達にはちゃんと手加減するように伝えてある。
若干名、見事なタンコブを拵えた男達が居たが。
そんな男達は、まー見事に殺気だっている。イカサマをやられていたとなれば怒って当然だろう。
その点だけはね。
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