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帰郷 農業者編
裏? 奴隷商
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追い剥ぎさん達をアサ達が制圧するのを横目に、僕は先程からある一点を見つめていた。
それは男達でも、アサ達でもない。
林の中の一つの木の陰に隠れている相手だ。
背の高さからおそらく大人の人間。見える姿から、おそらく男性と思わしきその人物は、今アサ達に制圧されている男達が出て来る時からそこに居たのだ。
「絶対に関係者なんだろうなぁ……」
隠れているつもりなのだろうが、僕の持つ狩猟スキル『気配察知』がそのシルエットを捕らえている。もうバッチシ捕らえている。あ、動いたな。
「お? おお? これはこれはどうした事でしょうか?」
芝居がかった仕草というやつだろうか? 僕は村を出てから1年、冒険者の仕事が忙しくて芝居なんかは見たことは無いが、先輩冒険者が酔った勢いで昔見たという芝居を再現してくれた時と同じように見える。
現れた男はごくごく普通の服装の人物であった。街中なんかで会えば商人さんかなぁ? と思えるような服装だ。
まあこんな林の、こんな現場で出会えば、全く信用出来ない商人だと思うが。
「なんとなんと! 私の友人たちが怪我をしているじゃありませんか!」
「はぁ? 友人?」
何を言ってるんだコイツと思っていると、男はアサ達がノして一か所に集めた男達に近寄っていった。
あまりに無造作に近づいてくる男達に忌避感が働いたのか、アサ達がその場を離れて僕の元に近づいてきた。
「う~む……。これはいかほどかの治療費を頂かなければなりませんなぁ」
うんうんと頷く男――もう『おじさん』でいいや。何か一人でブツブツと言っているが、いい加減そろそろ口を挟むとしよう。
「あのおじさん? その人たち、追い剥ぎだよ? その友人と言うなら、おじさんも捕縛しないといけないんだけど?」
僕が呆れつつそう指摘すると、そのおじさんの雰囲気が突如変わる。
「はて? 追い剥ぎ? 誰かそう名乗ったのですか?」
そう言ってその目がキラリと光った気がした。
日の光の反射?
だけど今はほぼ昼だから、光が反射することはないだろう?
僕の疑問は僕のスキルが教えてくれた。
《サポートスキル『共感覚』発動》
《対象、闇魔法スキルを感知》
《闇魔法スキルを獲得しました》
うわぁ~、またやばいスキルを覚えちゃったなぁ
「さあ? どうなんですか?」
おじさんの言葉に女の子達は?顔。
僕の方は困り顔だ。
奴隷商とは対極の職業の知り合いから聞かされた言葉が思い起こされる。
*
『奴隷商の使う契約書。あれは闇魔法スキルを使って作られるものでね? 奴隷商は個々人で国に管理されているんだよ。そこには個人を特定する魔法紋と呼ばれるものの記録があって、『契約』が誰と誰が交わしたものか調べることが出来るんだ』
冒険者ギルドの酒場。そこに居た1人の冒険者っぽい人が、「これは内緒だよ?」と酒に酔った顔で給仕をしていた僕に話しかける。
時刻は深夜に近い時間。
次の注文が聞こえるまでなら、と聞き役に回った僕に話し始めた内容はとんでもなかった。
『で、そもそもどうやって1人1人に闇魔法スキルを持っているかどうかを調べているかと言うと、15歳になった時に君も受けた神官による鑑定さ』
やばい爆弾落としてくれやがった。
い、いや、まだ本当だという証拠はない。四方山話というオチも――
『嘘だと思うかい? 俺はさ、ホレ』
襟の下から出した細い鎖にぶら下がったソレ。
――神は死んだ。
その後もベラベラと酔った勢いに任せて話す話す、世に出せない裏話のオンパレード。
最後の止めに、
『人の話を聞いてくれる優しい君に幸あれ――』
気軽にスキルで『祝福』してくれた。
またやばい爆弾を投下された――
*
「さあ!」
「うるっさいわ! 闇魔法スキルの人への使用は国に禁止されてるでしょうが!」
「なっ!?」
僕の言葉におじさん――もうおっさんでいい――が驚愕の表情をする。
僕におっさんの闇魔法スキルであろう何かが効かなかったのは、サポートスキルが僕に闇魔法スキルを覚えさせてくれたおかげだ。同系統の魔法スキル持ち同士の魔法は、お互い効果が低下することが冒険者の間で知られている知識だ。
僕しか知らないだろうが、魔法スキル毎の魔力パターン(魔力紋とは別)というものがあって、その波のようなものがお互い相殺するのだろう。
そしてアサ達に効き目がなかったのは、一応、『農奴』ということでアサ達と僕との間で『契約』が結ばれているため、おっさんの闇魔法スキルが介入出来なかったと思われる。
「そんな馬鹿な! 俺の闇魔法スキル『洗脳』が効かなかっただと!? い、いや、偶々だろう。もう一度、今度は『詠唱』もして――」
何か続けて言おうとしているおっさん。
でもこっちはそれどころじゃない。
「黙っててください! 執行スキル『断罪』!」
僕はあの夜覚えた――覚えさせられた、執行官のスキルを使う。
僕の手から放たれたスキルの光がおっさんに当たった。
それは男達でも、アサ達でもない。
林の中の一つの木の陰に隠れている相手だ。
背の高さからおそらく大人の人間。見える姿から、おそらく男性と思わしきその人物は、今アサ達に制圧されている男達が出て来る時からそこに居たのだ。
「絶対に関係者なんだろうなぁ……」
隠れているつもりなのだろうが、僕の持つ狩猟スキル『気配察知』がそのシルエットを捕らえている。もうバッチシ捕らえている。あ、動いたな。
「お? おお? これはこれはどうした事でしょうか?」
芝居がかった仕草というやつだろうか? 僕は村を出てから1年、冒険者の仕事が忙しくて芝居なんかは見たことは無いが、先輩冒険者が酔った勢いで昔見たという芝居を再現してくれた時と同じように見える。
現れた男はごくごく普通の服装の人物であった。街中なんかで会えば商人さんかなぁ? と思えるような服装だ。
まあこんな林の、こんな現場で出会えば、全く信用出来ない商人だと思うが。
「なんとなんと! 私の友人たちが怪我をしているじゃありませんか!」
「はぁ? 友人?」
何を言ってるんだコイツと思っていると、男はアサ達がノして一か所に集めた男達に近寄っていった。
あまりに無造作に近づいてくる男達に忌避感が働いたのか、アサ達がその場を離れて僕の元に近づいてきた。
「う~む……。これはいかほどかの治療費を頂かなければなりませんなぁ」
うんうんと頷く男――もう『おじさん』でいいや。何か一人でブツブツと言っているが、いい加減そろそろ口を挟むとしよう。
「あのおじさん? その人たち、追い剥ぎだよ? その友人と言うなら、おじさんも捕縛しないといけないんだけど?」
僕が呆れつつそう指摘すると、そのおじさんの雰囲気が突如変わる。
「はて? 追い剥ぎ? 誰かそう名乗ったのですか?」
そう言ってその目がキラリと光った気がした。
日の光の反射?
だけど今はほぼ昼だから、光が反射することはないだろう?
僕の疑問は僕のスキルが教えてくれた。
《サポートスキル『共感覚』発動》
《対象、闇魔法スキルを感知》
《闇魔法スキルを獲得しました》
うわぁ~、またやばいスキルを覚えちゃったなぁ
「さあ? どうなんですか?」
おじさんの言葉に女の子達は?顔。
僕の方は困り顔だ。
奴隷商とは対極の職業の知り合いから聞かされた言葉が思い起こされる。
*
『奴隷商の使う契約書。あれは闇魔法スキルを使って作られるものでね? 奴隷商は個々人で国に管理されているんだよ。そこには個人を特定する魔法紋と呼ばれるものの記録があって、『契約』が誰と誰が交わしたものか調べることが出来るんだ』
冒険者ギルドの酒場。そこに居た1人の冒険者っぽい人が、「これは内緒だよ?」と酒に酔った顔で給仕をしていた僕に話しかける。
時刻は深夜に近い時間。
次の注文が聞こえるまでなら、と聞き役に回った僕に話し始めた内容はとんでもなかった。
『で、そもそもどうやって1人1人に闇魔法スキルを持っているかどうかを調べているかと言うと、15歳になった時に君も受けた神官による鑑定さ』
やばい爆弾落としてくれやがった。
い、いや、まだ本当だという証拠はない。四方山話というオチも――
『嘘だと思うかい? 俺はさ、ホレ』
襟の下から出した細い鎖にぶら下がったソレ。
――神は死んだ。
その後もベラベラと酔った勢いに任せて話す話す、世に出せない裏話のオンパレード。
最後の止めに、
『人の話を聞いてくれる優しい君に幸あれ――』
気軽にスキルで『祝福』してくれた。
またやばい爆弾を投下された――
*
「さあ!」
「うるっさいわ! 闇魔法スキルの人への使用は国に禁止されてるでしょうが!」
「なっ!?」
僕の言葉におじさん――もうおっさんでいい――が驚愕の表情をする。
僕におっさんの闇魔法スキルであろう何かが効かなかったのは、サポートスキルが僕に闇魔法スキルを覚えさせてくれたおかげだ。同系統の魔法スキル持ち同士の魔法は、お互い効果が低下することが冒険者の間で知られている知識だ。
僕しか知らないだろうが、魔法スキル毎の魔力パターン(魔力紋とは別)というものがあって、その波のようなものがお互い相殺するのだろう。
そしてアサ達に効き目がなかったのは、一応、『農奴』ということでアサ達と僕との間で『契約』が結ばれているため、おっさんの闇魔法スキルが介入出来なかったと思われる。
「そんな馬鹿な! 俺の闇魔法スキル『洗脳』が効かなかっただと!? い、いや、偶々だろう。もう一度、今度は『詠唱』もして――」
何か続けて言おうとしているおっさん。
でもこっちはそれどころじゃない。
「黙っててください! 執行スキル『断罪』!」
僕はあの夜覚えた――覚えさせられた、執行官のスキルを使う。
僕の手から放たれたスキルの光がおっさんに当たった。
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