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帰郷 農業者編
ケース1 ある冒険者の場合その3
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「駄目って、な、なにがだよ?」
俺よりも年上の3人に睨まれるような目つきで言われて、俺はそう返すしかなかった。
俺にそう言われた3人の内、強面のおっさんがほかの2人の顔を見てから話し始める。
「駄目だしがいくつかあるが、順番にいこう。お前馬鹿っぽいし。……まずなんでお前らそんな軽装なんだ?」
ケイソウ? 装備ってことか?
「そりゃ、まだそこまで金が無くて」
俺がそう言うと3人共溜め息をついた。な、なんだよ?
「はぁ、俺が言っているのはそう言うことじゃない。お前らダンジョンをピクニックか何かと勘違いしてるんじゃないのか?」
「はぁ!? そんなわけないだろ! 俺がサボみたいにダンジョンを舐めてる訳ないだろうが!!」
俺が怒鳴ると3人がまた冷ややかな目で見てきた。だ、だからなんなんだよ?
そうするとあの綺麗なお姉さんが、さらに低い声で聞いてきた。
「サボが舐めてるね……? それで? 君達はダンジョンに何日潜る気だったのかな?」
え?
「なん、にち?」
するとドワーフの人も口を挟んできた。
「こりゃダメじゃな。バーディー、1から説明せんとアカンようじゃぞ?」
「だな。お前ら、ダンジョンがどれだけ深いか知ってるか?」
ダンジョンの深さ? 俺の読んだ『ガイの冒険譚』にも書いてなかったぞ?
「……知りません」
俺はそう言うしかなかった。
なんか3人の目つきが怖すぎたからだ。
「まず1層や2層で当然済むわけがない。今最大深度は25、6層だったか?」
「そうね、公式にはね」
25? えっと? 1、2、3……
「そ、そんなに潜るのか、ダンジョンって!?」
「そんなにってなぁ?……ともかくお前ら、普通に歩いてどのくらい時間が掛かると思う?」
え、えっとえっと? どのくらいかかるんだ?
「た、たぶんですけど、歩くだけなら10日ちょっとですか?」
俺の後ろからミカの声が聞こえてくる。
え? そんなに掛かるのか?
「途中の宿はどうするんだよ? そんなの行けっこないじゃん!」
俺がそう言うと更に周りからもため息が聞こえてきた。
ん? 周りから?
振り返ってみると大勢の冒険者に囲まれている状況だった。いつのまに!?
「お前……、そういや認定も受かってないんだっけ?――ってか1つも受かってねぇじゃねぇか」
強面のおっさんが持っているギルドカード。
あ、あれは俺のだ!
「か、返せよ!」というと、おっさんは指先に挟んだままカードを突き出した。
くうぅッ、無駄にカッコイイ! 強面のおっさんなのに。
「とりあえずアレだな? まずは食料や調理道具なんかを揃えて、街の外で野営の練習を兼ねて薬草採取とかの依頼をこなしておけ?」
野営? それって『ガイの冒険譚』にも書かれてたような?
「お前らの装備の様子からすると、サボが1人でその辺りの荷物を持ってたんじゃないか?」
「なにぃ!? サボのヤツ! そんな大事な荷物を持って行っちまったのか!? くそッ! 今から追いかけて間に合うか?」
するとまた後ろから声が聞こえた。
「何言ってるんだリック。アタシらそんな物を買った記憶ないだろ!? あれはサボが1人で用意した荷物なんじゃないか? まあ、いつもその日の内にダンジョンから引き揚げてたから使った記憶ないけども」
「あ、お、おう」
アカギに言われると、確かに俺達が買った記憶は無い。
「あとは戦闘だな。ってか、パーティの連携って意識してるか?」
「れ、レンケイ?」
またちょっと知らない言葉が出てきた。
「そうだよ。あんな1匹相手に3人で剣を振るって、まあ相手がオークだのオーガだのなら分かるけどよ、コボルト相手になぁ?」
「「「コボルトかよ!」」」
何故かドッと笑い声が上がる。もうなんなんだよ?
「まあ後衛を温存しているってなら分かるが、お前、『俺達が戦うから、解体はお前な?』って役割分担つうか、あんなゴチャゴチャしたところに矢だの魔法だの撃てると思ってるのか?」
「そうね。しかもずっと敵に密着しっぱなしじゃあ、味方に当てる怖さがあって手出しできないわ」
え? でも攻撃しないとコボルト倒せないじゃん? ドーイウコト?
「おまけに3匹になった途端、前衛を抜けられて後衛に接近される。あれはパーティとは言わんじゃろう?」
「そもそも、そっちの2人は得物が違うんじゃないか?」
「え?」
そう言って指さされたのは――ロウとガイ?
「たしかそっちは槍でそっちが斧だったか? たしかノートンとガッデスに教えて貰ってたよな?」
は? 槍に斧?
「おまえら……、そんな武器を練習してたのかよ?」
俺はちょっと笑いながら2人に言う。
言われた2人は顔を背けているってことは、その武器が恥ずかしいって思っているからだ。
だが俺がそう言うと、なんだか急に水をぶっかけられたような寒さが襲った。え? なんだこれ?
「そんな武器だと?」
「おう? ンなアホな事いうのはどいつだ?」
周りの冒険者から進み出たのは2人のごっつい冒険者だった。
「あー、とりあえずシメ上げるのはちょっと待てノートン、ガッデス。……とりあえず戦闘に関しても駄目だってことだ。あんな状況じゃあ、誰だって戦闘に参加出来ないからな? 続けて――」
「まだあるのかよ!?」
「細かく上げれば尽きないぞ?……お前ら、ちゃんと金勘定出来てるか?」
「か、カネ?」
もう俺の頭ではチンプンカンプンだ。
「そうだ。――ドルグ翁、こいつらの武器はどう見える?」
カネと言われて、武器と言われる。も、もうワカンネー!
「ふむ。めったやたらと振り回して歪みや欠けもあるだろう……、1本銀貨5枚は掛かりそうじゃな?」
「銀貨? な、何の話だ?」
「? 決まっておろう? 武器の修繕費じゃよ」
シューゼンヒってなんだ?
「サボが毎日毎日ワシの所に足繁く通っていると思ったが、こんな使い方をされれば、武器だってヘソを曲げるわい!」
「またかよ! みんなしてサボサボサボ! アイツが何をしてるっていうんだ!!」
そういうと辺りがシンとした。
へっ! 結局サボが出来ることなんて――
「あいつ、鍛冶スキル持ちなのか?」
へ?
「いや、俺との稽古では剣術スキルがあると思ったけど?」
「いやいや、あいつは間違いなく槍術スキルがあるはずだ!」
「俺が見たところ斧術スキルも持っているはずだ」
「そんなわけない! 俺との手合わせで体術スキル持ちなのは分かってる!」
え? え? え?
「待ってください。サボ君は水魔法スキル持ちですよ? 私が教えましたから」
「いやいや、火魔法スキル持ちだよ! 私見てたもん!」
「え? 風魔法だろ?」
「いや? 土魔法も使ってたような?」
は? ドーイウコト?
「いやいや、ポーションを卸してくれてたから錬金スキル持ちなはずですよ?」
受付のお姉さんまで参加してきた!?
どどど、どーいうことだ? スキルって1人1個なんじゃないのか?
「まさか……、サボはオールラウンダーなのか?」
なんだ、おーるらうんだーって?
「くそっ! 逃がした獲物がデカすぎる!! おいっ! お前ら仲間だって言うなら、サボが何処に行ったか知ってるか!?」
「サボ兄さんなら村に帰ったと思いますよ? 昨日」
ミカの言葉に周りに居た全員が崩れ落ちた。だからなんなんだよ!? あ、そうだ!
「――サボ以上に使える冒険者は居ないか!?」
俺の言葉にその場に居た冒険者が目を向ける。よし!
「急になんだよ? 使える?」
「そうだよ! サボ以上の冒険者が居たら俺達の仲間になってくれないか!? 俺達はかならず『ガイの冒険譚』のガイのように、ダンジョンを攻略してやる!」
決まった!
しかし、しばらくすると周りから笑い声が聞こえてくる。
「な!? う、嘘じゃないぞ!」
「あ~、スマンスマン。それを笑ったわけじゃない。つうか冒険者なら、そのほとんどは同じ思いを持ってるからな。バカにはしねぇよ」
「え?」
じゃあナンデ?
「同じ思いって言ったろ? ほとんどの冒険者はそんな思いでパーティを既に組んだ奴らばかりさ。よほどの事がなけりゃ凄腕のソロ冒険者なんていやしないし、そもそもそんな凄腕なら、お前らみたいな初心者パーティに加入するメリットはない」
た、確かに言われれば、冒険者はパーティを組むのがほとんどだ。
「だから固定パーティが解散するときなんて、もう冒険者を辞めるやつらばかりなのさ。だから笑ったのは別の理由だ」
よほど笑ったのか目じりの涙を拭きながら強面のおっさんが続ける。
「サボ以上に使える冒険者なんて居ねぇよ」
「――え?」
「確かにサボ以上のスキルレベルを持ってるやつらはいるだろうが――居るよな?――1人で何でも出来る冒険者なんてそうは居ねぇ。俺も聞いたことあるのはスキル3つ持ちの話くらいだよ。サボを手放したのは失敗だったな。って話さ」
「いや、でも」
揺れる俺の目は、この間の冒険者を見つけた。
「――そうだ! そこの人がこの間、仲間をクビにしたって言ってたぞ! そいうことだってあるはずだ!」
「は?――そりゃ穏やかな話じゃねぇな? お前ら本当か?」
俺に指さされ、強面のおっさんに睨まれた冒険者が首を横に振る。
「知らん知らん! このガキ! いい加減な事を言いやがって、ぶっ殺すぞ!!」
うひぃ。すげぇ睨まれた! でも俺は引かない。
「ホントだって! 一昨日酒場で『パーティに入れたヤツが仕えなくてクビにした』って言ってたもん!」
そう言われて思案顔をする冒険者。
「一昨日?……あ」
「本当に心当たりがあるのか?」
「あ、ああ。だけどポーターの話だぜ?」
ぽーたー、さん? で、でも!
「ほら! やっぱり言ってたじゃん!」
だが周りの反応がどうもおかしい?
「あー。坊主? ポーターってのはパーティメンバーだけど、パーティメンバー#じゃない__・__#んだよ?」
「え?」
「俺も噂は聞いてるぞ。アレだろ? 使えない商人の三男坊ポーターだろ?」
「あー、あのヒョロヒョロの?」
「ってか売り込みにしたって、もうちょい自分のレベルにあったパーティに声掛けしなきゃ駄目だろ?」
「え? え?」
「坊主」
混乱する俺の肩が叩かれる。
振り返ると妙に優し気な強面のおっちゃんが居た。
「もったいないことをしたな?」
なぜか仲間からの視線が冷たかった。
俺よりも年上の3人に睨まれるような目つきで言われて、俺はそう返すしかなかった。
俺にそう言われた3人の内、強面のおっさんがほかの2人の顔を見てから話し始める。
「駄目だしがいくつかあるが、順番にいこう。お前馬鹿っぽいし。……まずなんでお前らそんな軽装なんだ?」
ケイソウ? 装備ってことか?
「そりゃ、まだそこまで金が無くて」
俺がそう言うと3人共溜め息をついた。な、なんだよ?
「はぁ、俺が言っているのはそう言うことじゃない。お前らダンジョンをピクニックか何かと勘違いしてるんじゃないのか?」
「はぁ!? そんなわけないだろ! 俺がサボみたいにダンジョンを舐めてる訳ないだろうが!!」
俺が怒鳴ると3人がまた冷ややかな目で見てきた。だ、だからなんなんだよ?
そうするとあの綺麗なお姉さんが、さらに低い声で聞いてきた。
「サボが舐めてるね……? それで? 君達はダンジョンに何日潜る気だったのかな?」
え?
「なん、にち?」
するとドワーフの人も口を挟んできた。
「こりゃダメじゃな。バーディー、1から説明せんとアカンようじゃぞ?」
「だな。お前ら、ダンジョンがどれだけ深いか知ってるか?」
ダンジョンの深さ? 俺の読んだ『ガイの冒険譚』にも書いてなかったぞ?
「……知りません」
俺はそう言うしかなかった。
なんか3人の目つきが怖すぎたからだ。
「まず1層や2層で当然済むわけがない。今最大深度は25、6層だったか?」
「そうね、公式にはね」
25? えっと? 1、2、3……
「そ、そんなに潜るのか、ダンジョンって!?」
「そんなにってなぁ?……ともかくお前ら、普通に歩いてどのくらい時間が掛かると思う?」
え、えっとえっと? どのくらいかかるんだ?
「た、たぶんですけど、歩くだけなら10日ちょっとですか?」
俺の後ろからミカの声が聞こえてくる。
え? そんなに掛かるのか?
「途中の宿はどうするんだよ? そんなの行けっこないじゃん!」
俺がそう言うと更に周りからもため息が聞こえてきた。
ん? 周りから?
振り返ってみると大勢の冒険者に囲まれている状況だった。いつのまに!?
「お前……、そういや認定も受かってないんだっけ?――ってか1つも受かってねぇじゃねぇか」
強面のおっさんが持っているギルドカード。
あ、あれは俺のだ!
「か、返せよ!」というと、おっさんは指先に挟んだままカードを突き出した。
くうぅッ、無駄にカッコイイ! 強面のおっさんなのに。
「とりあえずアレだな? まずは食料や調理道具なんかを揃えて、街の外で野営の練習を兼ねて薬草採取とかの依頼をこなしておけ?」
野営? それって『ガイの冒険譚』にも書かれてたような?
「お前らの装備の様子からすると、サボが1人でその辺りの荷物を持ってたんじゃないか?」
「なにぃ!? サボのヤツ! そんな大事な荷物を持って行っちまったのか!? くそッ! 今から追いかけて間に合うか?」
するとまた後ろから声が聞こえた。
「何言ってるんだリック。アタシらそんな物を買った記憶ないだろ!? あれはサボが1人で用意した荷物なんじゃないか? まあ、いつもその日の内にダンジョンから引き揚げてたから使った記憶ないけども」
「あ、お、おう」
アカギに言われると、確かに俺達が買った記憶は無い。
「あとは戦闘だな。ってか、パーティの連携って意識してるか?」
「れ、レンケイ?」
またちょっと知らない言葉が出てきた。
「そうだよ。あんな1匹相手に3人で剣を振るって、まあ相手がオークだのオーガだのなら分かるけどよ、コボルト相手になぁ?」
「「「コボルトかよ!」」」
何故かドッと笑い声が上がる。もうなんなんだよ?
「まあ後衛を温存しているってなら分かるが、お前、『俺達が戦うから、解体はお前な?』って役割分担つうか、あんなゴチャゴチャしたところに矢だの魔法だの撃てると思ってるのか?」
「そうね。しかもずっと敵に密着しっぱなしじゃあ、味方に当てる怖さがあって手出しできないわ」
え? でも攻撃しないとコボルト倒せないじゃん? ドーイウコト?
「おまけに3匹になった途端、前衛を抜けられて後衛に接近される。あれはパーティとは言わんじゃろう?」
「そもそも、そっちの2人は得物が違うんじゃないか?」
「え?」
そう言って指さされたのは――ロウとガイ?
「たしかそっちは槍でそっちが斧だったか? たしかノートンとガッデスに教えて貰ってたよな?」
は? 槍に斧?
「おまえら……、そんな武器を練習してたのかよ?」
俺はちょっと笑いながら2人に言う。
言われた2人は顔を背けているってことは、その武器が恥ずかしいって思っているからだ。
だが俺がそう言うと、なんだか急に水をぶっかけられたような寒さが襲った。え? なんだこれ?
「そんな武器だと?」
「おう? ンなアホな事いうのはどいつだ?」
周りの冒険者から進み出たのは2人のごっつい冒険者だった。
「あー、とりあえずシメ上げるのはちょっと待てノートン、ガッデス。……とりあえず戦闘に関しても駄目だってことだ。あんな状況じゃあ、誰だって戦闘に参加出来ないからな? 続けて――」
「まだあるのかよ!?」
「細かく上げれば尽きないぞ?……お前ら、ちゃんと金勘定出来てるか?」
「か、カネ?」
もう俺の頭ではチンプンカンプンだ。
「そうだ。――ドルグ翁、こいつらの武器はどう見える?」
カネと言われて、武器と言われる。も、もうワカンネー!
「ふむ。めったやたらと振り回して歪みや欠けもあるだろう……、1本銀貨5枚は掛かりそうじゃな?」
「銀貨? な、何の話だ?」
「? 決まっておろう? 武器の修繕費じゃよ」
シューゼンヒってなんだ?
「サボが毎日毎日ワシの所に足繁く通っていると思ったが、こんな使い方をされれば、武器だってヘソを曲げるわい!」
「またかよ! みんなしてサボサボサボ! アイツが何をしてるっていうんだ!!」
そういうと辺りがシンとした。
へっ! 結局サボが出来ることなんて――
「あいつ、鍛冶スキル持ちなのか?」
へ?
「いや、俺との稽古では剣術スキルがあると思ったけど?」
「いやいや、あいつは間違いなく槍術スキルがあるはずだ!」
「俺が見たところ斧術スキルも持っているはずだ」
「そんなわけない! 俺との手合わせで体術スキル持ちなのは分かってる!」
え? え? え?
「待ってください。サボ君は水魔法スキル持ちですよ? 私が教えましたから」
「いやいや、火魔法スキル持ちだよ! 私見てたもん!」
「え? 風魔法だろ?」
「いや? 土魔法も使ってたような?」
は? ドーイウコト?
「いやいや、ポーションを卸してくれてたから錬金スキル持ちなはずですよ?」
受付のお姉さんまで参加してきた!?
どどど、どーいうことだ? スキルって1人1個なんじゃないのか?
「まさか……、サボはオールラウンダーなのか?」
なんだ、おーるらうんだーって?
「くそっ! 逃がした獲物がデカすぎる!! おいっ! お前ら仲間だって言うなら、サボが何処に行ったか知ってるか!?」
「サボ兄さんなら村に帰ったと思いますよ? 昨日」
ミカの言葉に周りに居た全員が崩れ落ちた。だからなんなんだよ!? あ、そうだ!
「――サボ以上に使える冒険者は居ないか!?」
俺の言葉にその場に居た冒険者が目を向ける。よし!
「急になんだよ? 使える?」
「そうだよ! サボ以上の冒険者が居たら俺達の仲間になってくれないか!? 俺達はかならず『ガイの冒険譚』のガイのように、ダンジョンを攻略してやる!」
決まった!
しかし、しばらくすると周りから笑い声が聞こえてくる。
「な!? う、嘘じゃないぞ!」
「あ~、スマンスマン。それを笑ったわけじゃない。つうか冒険者なら、そのほとんどは同じ思いを持ってるからな。バカにはしねぇよ」
「え?」
じゃあナンデ?
「同じ思いって言ったろ? ほとんどの冒険者はそんな思いでパーティを既に組んだ奴らばかりさ。よほどの事がなけりゃ凄腕のソロ冒険者なんていやしないし、そもそもそんな凄腕なら、お前らみたいな初心者パーティに加入するメリットはない」
た、確かに言われれば、冒険者はパーティを組むのがほとんどだ。
「だから固定パーティが解散するときなんて、もう冒険者を辞めるやつらばかりなのさ。だから笑ったのは別の理由だ」
よほど笑ったのか目じりの涙を拭きながら強面のおっさんが続ける。
「サボ以上に使える冒険者なんて居ねぇよ」
「――え?」
「確かにサボ以上のスキルレベルを持ってるやつらはいるだろうが――居るよな?――1人で何でも出来る冒険者なんてそうは居ねぇ。俺も聞いたことあるのはスキル3つ持ちの話くらいだよ。サボを手放したのは失敗だったな。って話さ」
「いや、でも」
揺れる俺の目は、この間の冒険者を見つけた。
「――そうだ! そこの人がこの間、仲間をクビにしたって言ってたぞ! そいうことだってあるはずだ!」
「は?――そりゃ穏やかな話じゃねぇな? お前ら本当か?」
俺に指さされ、強面のおっさんに睨まれた冒険者が首を横に振る。
「知らん知らん! このガキ! いい加減な事を言いやがって、ぶっ殺すぞ!!」
うひぃ。すげぇ睨まれた! でも俺は引かない。
「ホントだって! 一昨日酒場で『パーティに入れたヤツが仕えなくてクビにした』って言ってたもん!」
そう言われて思案顔をする冒険者。
「一昨日?……あ」
「本当に心当たりがあるのか?」
「あ、ああ。だけどポーターの話だぜ?」
ぽーたー、さん? で、でも!
「ほら! やっぱり言ってたじゃん!」
だが周りの反応がどうもおかしい?
「あー。坊主? ポーターってのはパーティメンバーだけど、パーティメンバー#じゃない__・__#んだよ?」
「え?」
「俺も噂は聞いてるぞ。アレだろ? 使えない商人の三男坊ポーターだろ?」
「あー、あのヒョロヒョロの?」
「ってか売り込みにしたって、もうちょい自分のレベルにあったパーティに声掛けしなきゃ駄目だろ?」
「え? え?」
「坊主」
混乱する俺の肩が叩かれる。
振り返ると妙に優し気な強面のおっちゃんが居た。
「もったいないことをしたな?」
なぜか仲間からの視線が冷たかった。
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