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しおりを挟む「あれは......明日の約束よ......」
ティアルティナは後ろめたい気持ちから小さな声で囁くように言う。
「明日?明日も会うの?」
ルディーヤが驚き、目を瞠る。
「ルディ、お姉さまとロナルド殿下は婚約者ですもの。会う約束をしていても不思議じゃないわよ」
アルノティは婚約者同士がが逢瀬を重ねることは自然な事であると主張する。
「確かにそうだけど、ティア姉さまだよ?」
ルディーヤの言い分は納得出来るので、ティアルティナは押し黙る。
ティアルティナは今まで男性と会う約束などしなかったし、するとしても公務のみ。何度か婚約者候補らしき男の子とも会おうとしたけど、直前に嫌になって病欠したことは数多くある。
他の公務は問題なく済ませる中、異性と結婚絡みの場になった途端に逃げ出す姉にアルノティとルディーヤが代わりを務めたこともあった。
その為、ルディーヤがティアルティナの日頃の行いから、約束をしたことや会おうとする姿勢を懐疑的に捉えるのも致し方ないことだ。
「......本気、もしくは他に何かあるんじゃないの?」
観察力の鋭いルディーヤがティアルティナに答えを確かめるように目を向けてきた。
「どうなの、ティア姉さま?」
追求するルディーヤの眼差しにティアルティナは観念して一息つく。隠せとは言われていないし、ロナルドが呪いの魔術により女性の姿を持つようになった事は知れ渡ると言っていた。
家族に伝えても大丈夫だろうと判断して、ティアルティナは語り出す。
「実は、ロナルド殿下は呪いの魔術に掛かっているみたいで」
「それって、ロナルド殿下が女性になってるって噂の?」
ルディーヤいわくまだ噂の段階らしい。しかし、今日のお見合いで城に参じた際に、多くの目に触れている。
女性の姿で、男性の時に着ているような格好。服装に対する偏見は少なくなったといっても、王城であれば身分や地位により相応しい格好というものがある。つまり、目立つのだ。
本人に隠すつもりが全くなさそうな様子らしく、名乗る時も堂々とした姿だったという。
ティアルティナも目の前での変化を見たからこそ魔術だと断言出来たが、そうでなければ何かの魔術に掛かっているとは捉えても、男性が女性になっているなどとは夢にも思わないだろう。
それ程に、彼にかかっているものは特異な魔術だ。
(他に成功させたい人はたくさんいるでしょうが、成功させることは出来なかっもの)
それを二人が成し遂げた。予測不可能というか、現在で解き明かされているものからは逸脱している。
(まぁ、解き方がわからない限り完璧とは言い難いけれど)
「じゃあ、噂は本当なんだ」
「そうね。ロナルド殿下は女性の姿をしていたわ。まだどんな区切りかはわからないから、それを調べさせてくれるというから、話に乗ったの」
「つまりは、魔術の為?」
ルディーヤが呆れたような様子で言い放つ。
母とアルノティは少し残念そうにしている。二人は遂にティアルティナが恋に落ちたと考えていたのかもしれない。
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