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しおりを挟むロナルドの願いを断ることは出来なかった。
ここはお見合いの場であったし、まだ魔術については聞きたいことがたくさんあったからだ。
ロナルドは紳士的な振る舞いをする人で、ティアルティナを好意的にはみていても、直接的な欲望を顕にする人間ではなかった。
だから、この場でも恐れず一対一で接することができる。
「用意してくれたお茶菓子もありますし、座りませんか?」
ロナルドの提案に快諾し、ティアルティナは椅子へ腰を下ろす。
ロナルドの言う通り、用意された机の上には丁寧に作り上げられた食べ物が並ぶ。芸術的な飾り付けのケーキや焼き菓子、食べやすい大きさに切られた軽食も置かれている。
保温の魔術が施されているティーポットをロナルドが持ち上げ、自分のカップとティアルティナのカップに紅茶を注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとうございます、ロナルド殿下」
ロナルドにお礼を言って、いれてもらった紅茶を飲む。
保温されている為、いれたときの状態が常に保たれている。これは城に勤めるベテランのメイドが準備したであろう味で、適温だ。この魔術は生活魔術というものに分類され、人々の暮らしに浸透している便利なものだ。
そこで王族が二人揃うにも関わらず、ここには紅茶を注いでくれる侍女や従者が一人もいない異質さが浮き彫りになる。
一定の距離には警護にあたる騎士や衛兵はいるだろうが、見渡す限りの場所には人の姿はない。
お見合いとはいえ、それはとてもおかしなことだ。
「ロナルド殿下に紅茶を注いで頂くなんて、とても贅沢なことですね」
「お望みとあらば、いくらでも」
「王族の方に何度も給仕の真似事をさせるのは心苦しいですわ」
遠回しに、この一回きりにしたいと伝える。
「......あの姿は、ティアルティナ姫のお気に召しませんでしたか?」
「え?」
「......僕の女性の姿です」
「質問の意図がわからないのですが......」
ティアルティナはロナルドの質問の意図をうまく汲み取れない。女性の姿のロナルドを気に入ったか、気に入らなかったかといのは今、現在必要な問いなんだろうか。
「先程の話の続きですが、この魔術は僕と宮廷魔術師による合作のものでして......」
「......やっぱり自ら望んだのですか......??」
ティアルティナはロナルドの告白に席を立ちそうになるが、何とか堪えて留まる。
「......ティアルティナ姫と仲良くなりたいと思ったのですが、男性を苦手とされているので、女性になってみようかと......」
「......では魔術を掛けたままにしているのは私の為、ということですか?」
「あ、仲が良くなりたいという想いに偽りはないのですが。実は解除できなくて......」
ロナルドの爆弾発言にティアルティナは頭を抱えたくなった。
貴賓の手前、そんな行動には出れないが、脳内では頭を抱えて叫んでいた。
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