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同窓会に行こう!
11月12日 14:00①
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料理の試食は、その後小さなステーキ、それにデザートとコーヒーがついてきて、軽い昼食としては十分な内容だった。どの料理も美味で、アルコール無しでも話が弾んだ。結婚式はともかく、レストランを暁斗と使いに来てもいいなと思いつつ、奏人は試食会会場を出た。親族の控室になる部屋などを見せてもらったあと、森末は3人の男たちを順番に見る。
「女性のお客様にはドレスの試着をしていただくプログラムがあるのですけれど、男性もタキシードをお好きなだけ試していただけます、いかがでしょうか」
奏人は片山と、岡島に視線を飛ばした。岡島が迷うそぶりを見せたからか、片山が口を開く。
「せっかくだから試させてもらえ、いきなりタキシードなんか着こなせないぞ」
それを聞いた森末が、片山に笑顔を向ける。
「片山様は……舞台でタキシードをご着用ですよね? 実は私の母がアマチュア合唱団に所属していまして、先週末のコンサートでご一緒させていただきまして」
それを聞いた片山は、えっ、と言ってから、条件反射のように頭を下げた。
「どうもありがとうございます、あの日は合唱団の皆さんのおかげでいい舞台になりました」
「素敵でした、母もいいソリストに来てもらえたと喜んでおりました」
森末は母親の舞台を観に行ったのだろう。先週観たばかりなら、彼女が片山の名前と顔を覚えていても不自然ではない。奏人は感心しつつ、片山と森末の会話を見守る。
プロの音楽家はこうしてファンから声をかけられた時に、民間企業の営業のごとく、的確に言葉を選ぶ能力が必要らしい。相手を喜ばせる言葉を返すことができるほうが、ファンも気持ちいいに違いなかった。
岡島も2人の会話に驚いたような顔をしていたが、しみじみと言う。
「うわぁ片山先輩、ほんとにソリストやってるんだ」
「信じてなかった? まあとにかく、試着しに行こう」
片山が岡島の背中を軽く押した。奏人も笑いながら、1階に降りるエレベーターに乗りこんだ。
ブライダルサロンの奥では、カーテンに仕切られた場所で1組のカップルが試着中らしく、中から楽し気な語らいが聞こえていた。男2人だったら、衣装はどう選ぶのだろうと奏人は思う。
その更に奥の試着コーナーで、森末のほかに、貸衣装の担当らしい女性がついてくれた。岡島はずらりと並べて掛けられた礼装に、明らかに気後れしている。ブライダルフェアへの参加は初めてではないが、自分の衣装の試着はしたことがなかったようだ。
「新婦様のドレスが暖色系でも寒色系でも合いますし、洗練されて見えますから、人気なのはシルバーです……岡島さまはスリムでお肌も白い目でいらっしゃるので、お似合いになるかと」
岡島を上から下までざっと見た衣装担当の女性は、あっという間に3着のタキシードの上下を選び、戸惑う岡島のジャケットを剥ぎ取る。ちょっと笑える光景である。彼はパンツも持たされて、衝立の奥に引っ込んだ。
「えーっと、高崎様は……男性同士のお式を検討されていらっしゃるのですね」
衣装担当者は、それがごく普通のことのように、さらっと言った。奏人はちょっと安心して、彼女に返答する。
「はい、そういう場合、和装ならほぼお揃いになるんでしょうけど、洋装だったらどんな感じなんでしょうか」
「これもおふたりのお好みや見かけのバランスがあると存じますが、私が見て来た皆様は、色味は合わせて形は違うものをお選びになって、ブートニアを揃えるかたが多いですね」
「ああ、なるほど……」
「女性のお客様にはドレスの試着をしていただくプログラムがあるのですけれど、男性もタキシードをお好きなだけ試していただけます、いかがでしょうか」
奏人は片山と、岡島に視線を飛ばした。岡島が迷うそぶりを見せたからか、片山が口を開く。
「せっかくだから試させてもらえ、いきなりタキシードなんか着こなせないぞ」
それを聞いた森末が、片山に笑顔を向ける。
「片山様は……舞台でタキシードをご着用ですよね? 実は私の母がアマチュア合唱団に所属していまして、先週末のコンサートでご一緒させていただきまして」
それを聞いた片山は、えっ、と言ってから、条件反射のように頭を下げた。
「どうもありがとうございます、あの日は合唱団の皆さんのおかげでいい舞台になりました」
「素敵でした、母もいいソリストに来てもらえたと喜んでおりました」
森末は母親の舞台を観に行ったのだろう。先週観たばかりなら、彼女が片山の名前と顔を覚えていても不自然ではない。奏人は感心しつつ、片山と森末の会話を見守る。
プロの音楽家はこうしてファンから声をかけられた時に、民間企業の営業のごとく、的確に言葉を選ぶ能力が必要らしい。相手を喜ばせる言葉を返すことができるほうが、ファンも気持ちいいに違いなかった。
岡島も2人の会話に驚いたような顔をしていたが、しみじみと言う。
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「信じてなかった? まあとにかく、試着しに行こう」
片山が岡島の背中を軽く押した。奏人も笑いながら、1階に降りるエレベーターに乗りこんだ。
ブライダルサロンの奥では、カーテンに仕切られた場所で1組のカップルが試着中らしく、中から楽し気な語らいが聞こえていた。男2人だったら、衣装はどう選ぶのだろうと奏人は思う。
その更に奥の試着コーナーで、森末のほかに、貸衣装の担当らしい女性がついてくれた。岡島はずらりと並べて掛けられた礼装に、明らかに気後れしている。ブライダルフェアへの参加は初めてではないが、自分の衣装の試着はしたことがなかったようだ。
「新婦様のドレスが暖色系でも寒色系でも合いますし、洗練されて見えますから、人気なのはシルバーです……岡島さまはスリムでお肌も白い目でいらっしゃるので、お似合いになるかと」
岡島を上から下までざっと見た衣装担当の女性は、あっという間に3着のタキシードの上下を選び、戸惑う岡島のジャケットを剥ぎ取る。ちょっと笑える光景である。彼はパンツも持たされて、衝立の奥に引っ込んだ。
「えーっと、高崎様は……男性同士のお式を検討されていらっしゃるのですね」
衣装担当者は、それがごく普通のことのように、さらっと言った。奏人はちょっと安心して、彼女に返答する。
「はい、そういう場合、和装ならほぼお揃いになるんでしょうけど、洋装だったらどんな感じなんでしょうか」
「これもおふたりのお好みや見かけのバランスがあると存じますが、私が見て来た皆様は、色味は合わせて形は違うものをお選びになって、ブートニアを揃えるかたが多いですね」
「ああ、なるほど……」
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