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同窓会に行こう!
10月29日 21:00①
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11月のとある日曜日の昼間、暁斗は卒業した大学のゼミの同窓会に参加する予定があった。現在牧師になるべく学校に通っている同期の河島と一緒に、幹事を任されている。首都圏に住み連絡のつく3学年のゼミ生が集まり、退官している経営学部の岡田教授を、遅ればせながらねぎらうひとときにするつもりである。
ありがたいことに、仙台や名古屋から馳せ参じる者も現れ、30数名の集まりになりそうだ。お台場のホテルでひとつ部屋を借り、立食パーティー形式にすることにした。
そんな話をしていると、隣に座る奏人はふうん、と考える顔になった。
「じゃあ僕もその日、高校の同窓会に行ってこようかな」
「高校の? みんなそんなに東京にいるのか?」
暁斗は驚いて、言葉を返した。奏人の故郷は北海道の帯広である。道民は東京の大学に進学するとそのまま東京に居つくパターンが多いようだが、これまで奏人から高校時代の友人の話をあまり聞いたことがなかったこともあり、大げさな反応になってしまった。
すると奏人は、軽い笑い声を立てた。
「あ、同窓会って言っても、片山先輩と、グリーの後輩……つまり僕の同級生と、たぶん3人なんだけど」
へぇ、と暁斗は、さっきとは別種の驚きを覚える。奏人は高校時代、厄介な事件に巻き込まれたせいで、2年生の2学期に、札幌の私立高校から帯広の公立高校に転学している。片山は札幌の私学時代の知り合いで、奏人が東京に出て以来音信不通だったのが、6月に再会して交流が復活していた(何故か暁斗も片山とLINEのIDを交換している)。
奏人にとって、札幌の高校での1年半は黒歴史だ。しかし片山が、急な奏人の転学とメールアドレスの変更に結構ショックを受けていたことを知り、奏人は事件と、それ以外の人間関係を切り離して考えるようになった。そして今回は、自分の黒歴史を知るまた別の人物と会うのだという。深い人間関係の構築にたまに難を見せる奏人が、成長したなと思わされる今日この頃だ。
「グリークラブの卒業生って結束強いんだなと思って、びっくりするような気持ち悪いような」
奏人は軽く暴言を吐いた。まあ暁斗も、高校時代の友人とは年賀状のやり取りしかしていないので、彼の言うことはわからなくもない。
「男子校だから余計じゃない? それに音楽系のクラブの繋がりって結構独特だよ、うちの柴田さん、大学時代だけど吹奏楽してて、定期的にやるOB会にまめに出てるみたいだし」
「え、柴田さんってさっくんの彼氏の柴田さん? 地味キャラなのに?」
「俺の大学でもそうだったけど、吹奏楽部は地味キャラも多いぞ……サックス吹いてたんだって」
奏人は大きな目を丸くした。
「へぇ! 柴田さんがサックスってめちゃ意外性高い、かっこいいね」
「最近さっくん、自分もサックスやってみたいって言ってる」
総務課の柴田晃嗣と、さっくんこと営業課の高畑朔は、暁斗の会社のほぼ公認ゲイカップルである。かつて高畑が奏人と同じゲイ専デリヘルに勤務していたので、奏人もこのカップルを知ることになった。
話が脱線したからか、奏人は、ん? と首を傾げた。
「さっくんと柴田さんが仲良くやってるのは素敵だね……で、僕もその日の昼間に設定してって頼もうと思って」
「コンサートシーズンだから、片山さん土日は忙しいんじゃないか?」
片山はクラシックの歌手である。業界では期待の若手という位置づけで、ややマニアックに有名人だ。私立の小学校で教えながら、コンサートで合唱曲のソリストを務めるなどして活躍している。
暁斗の言葉に奏人は、じゃあ確認する、とのんびり言った。片山は親切な人なので、身体が空いていれば応じてくれるだろう。奏人の同級生はサラリーマンで、現在東京勤務だという。
というか。暁斗はふと芽生えた疑問を奏人に向けた。
「別に日をぶつけなくてもよいのでは?」
奏人はきれいな形の唇に、微笑を浮かべた。
「暁斗さん、蓉子さんと会うんだよね? だから僕もその時に片山先輩と浮気するの」
ありがたいことに、仙台や名古屋から馳せ参じる者も現れ、30数名の集まりになりそうだ。お台場のホテルでひとつ部屋を借り、立食パーティー形式にすることにした。
そんな話をしていると、隣に座る奏人はふうん、と考える顔になった。
「じゃあ僕もその日、高校の同窓会に行ってこようかな」
「高校の? みんなそんなに東京にいるのか?」
暁斗は驚いて、言葉を返した。奏人の故郷は北海道の帯広である。道民は東京の大学に進学するとそのまま東京に居つくパターンが多いようだが、これまで奏人から高校時代の友人の話をあまり聞いたことがなかったこともあり、大げさな反応になってしまった。
すると奏人は、軽い笑い声を立てた。
「あ、同窓会って言っても、片山先輩と、グリーの後輩……つまり僕の同級生と、たぶん3人なんだけど」
へぇ、と暁斗は、さっきとは別種の驚きを覚える。奏人は高校時代、厄介な事件に巻き込まれたせいで、2年生の2学期に、札幌の私立高校から帯広の公立高校に転学している。片山は札幌の私学時代の知り合いで、奏人が東京に出て以来音信不通だったのが、6月に再会して交流が復活していた(何故か暁斗も片山とLINEのIDを交換している)。
奏人にとって、札幌の高校での1年半は黒歴史だ。しかし片山が、急な奏人の転学とメールアドレスの変更に結構ショックを受けていたことを知り、奏人は事件と、それ以外の人間関係を切り離して考えるようになった。そして今回は、自分の黒歴史を知るまた別の人物と会うのだという。深い人間関係の構築にたまに難を見せる奏人が、成長したなと思わされる今日この頃だ。
「グリークラブの卒業生って結束強いんだなと思って、びっくりするような気持ち悪いような」
奏人は軽く暴言を吐いた。まあ暁斗も、高校時代の友人とは年賀状のやり取りしかしていないので、彼の言うことはわからなくもない。
「男子校だから余計じゃない? それに音楽系のクラブの繋がりって結構独特だよ、うちの柴田さん、大学時代だけど吹奏楽してて、定期的にやるOB会にまめに出てるみたいだし」
「え、柴田さんってさっくんの彼氏の柴田さん? 地味キャラなのに?」
「俺の大学でもそうだったけど、吹奏楽部は地味キャラも多いぞ……サックス吹いてたんだって」
奏人は大きな目を丸くした。
「へぇ! 柴田さんがサックスってめちゃ意外性高い、かっこいいね」
「最近さっくん、自分もサックスやってみたいって言ってる」
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話が脱線したからか、奏人は、ん? と首を傾げた。
「さっくんと柴田さんが仲良くやってるのは素敵だね……で、僕もその日の昼間に設定してって頼もうと思って」
「コンサートシーズンだから、片山さん土日は忙しいんじゃないか?」
片山はクラシックの歌手である。業界では期待の若手という位置づけで、ややマニアックに有名人だ。私立の小学校で教えながら、コンサートで合唱曲のソリストを務めるなどして活躍している。
暁斗の言葉に奏人は、じゃあ確認する、とのんびり言った。片山は親切な人なので、身体が空いていれば応じてくれるだろう。奏人の同級生はサラリーマンで、現在東京勤務だという。
というか。暁斗はふと芽生えた疑問を奏人に向けた。
「別に日をぶつけなくてもよいのでは?」
奏人はきれいな形の唇に、微笑を浮かべた。
「暁斗さん、蓉子さんと会うんだよね? だから僕もその時に片山先輩と浮気するの」
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