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教えて! 高崎先生

4月下旬 日曜②

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 2人ずつで解散し、深雪は駅に向かう道すがら、ほとんど話さない実花と気まずくなっていた。自分は学生生活自慢のような話はしなかったつもりだったが、友人にとってはそうではなかったかもしれないと思うと、気が気ではない。

「あのさぁ、私しばらくみんなと会うのやめとくわ」

 JR大阪駅の入口が見える横断歩道で、赤信号を待つのに足を止めると、実花は言った。深雪はえっ、と思わず返す。友人はうーん、と前置きした。

「みんなが大学で楽しそうなんは確かに羨ましいんやけど、私今働くのも悪くないって思ってるんやわ」

 深雪は、実花が今日初めて自分の近況を話したことに気づく。彼女はいつも率直に物を言う人なので、悪くないという思いはきっと嘘ではないのだろうと思った。

「そんでみんなの話聞いてたら、親のお金で遊んでる自慢にしか聞こえへんから、何か腹立ってきたし」
「私は遊んでるつもりはないで」

 深雪は咄嗟に返したが、果たしてそうなのか一瞬にして自信が無くなった。信号が青に変わり、人波に流されるように前に進む。

「うん、深雪ちゃんが大学で遊んでるとは思ってない、だってそんな大学ちゃうし」

 ほっとした自分を、深雪は嫌なやつだと思う。真優子や佳代だって、新生活にちょっとばかり浮かれているだけで、口で言うほどには遊んではいないだろうから。そう言おうとすると、実花は今度は困惑したように言った。

「だから私は深雪ちゃんのことは羨ましいし妬ましいんやろなぁ、このちょっと微かにイライラする感じ……」

 友人にとって今、自分の存在が煩わしいという事実に、深雪はショックを受けた。流石に言葉を選ばなさ過ぎたと思ったのか、実花は定期入れを出しながら、ごめんと謝った。

「これはほんまに私の一方的で表面的な気持ちであって、深雪ちゃんにムカついてるとか、深雪ちゃんのせいとかやなくて……たぶん私がこれからずっと闘わなあかん感情やから」

 ほな何で、と言いかけて深雪は思いとどまる。進路指導の先生たちも、返済しなくていい奨学金制度を整えている大学を、実花のために探してくれていた。彼女は本来、大和女子大学と同じくらい、もしかしたらそれ以上の偏差値の大学を狙える地頭を持っているから、先生方も受験を最後まで勧めていた。
 しかし実花は受験そのものから身を引いた。結局彼女は、家がごちゃごちゃしてしまったことを言い訳にして、受験という人生最大の競争を自ら放棄したのではないのか。そんな彼女が、競争に挑み勝ち抜いた真優子や佳代を金食い虫のように言うのは、おかしいのではないか。
 実花は深雪の一つ手前の駅で、またね、と笑顔で言いながら降りた。しかし深雪が帰宅してスマートフォンを見ると、実花が4人のグループLINEのトークルームから退室していた。
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