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秋の夜、貴方をこの腕に
2-④*
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「ああっ、いっちゃいそう……っ」
奏人は眉の間にきゅっと皺を寄せた。すると暁斗もきゅうっと締めつけられて、背骨に大量の電気が流れ、思わず声を上げてしまう。
「あ、奏人さんっ、そんなに締めな……ひゃっ!」
身体が勝手に震えて、頭の中が白い靄でいっぱいになった。これは酷い、いく瞬間も自分でわからなかった。暁斗は恥じ入りつつも、放出しながら腰を動かす……いや、勝手に動いて奏人を攻めていた。
「あっ……だめっ、あ、ああっ!」
奏人もひとつ長く叫び、熱い液体を勢いよく吐き出した。暁斗はそれを浴び、彼が昇りつめたことを知る。暁斗の腰を挟んでいる華奢な脚が、びくびく震えた。
暁斗はゆっくりと奏人の中から出て、コンドームを外した。そして、肌を熱くして呼吸を乱す奏人をゆっくりと抱きしめる。彼が愛おしいという気持ちしかない。どうしてこんなに、大切だと感じるのだろう。
「暁斗さん……汚れるよ……」
奏人は小さく言ったが、構わなかった。何も言わずに細い身体を包み込み、彼の肌の温度と感触を楽しむ。
暁斗は自分の心の動きに驚いていた。女を抱いた時には、ほとんどこんな気持ちにならなかったからである。躊躇いもなく、自分を身体の奥深くに受け入れ包んでくれるひと。彼は自分のもので、自分は彼のもの。そう心から思えることが、何にも代え難い。
しばらく静かに抱き合って、荒れ狂ったものが凪ぎ始めると、暁斗は奏人の耳許で言った。
「タオルあっためて身体拭くよ……今日は俺にやらせて」
奏人は頬に軽くキスして、返事をくれた。最近ずっと奏人に後始末を任せてばかりだった(彼がやたらと手際がいいからでもあるが)ので、今夜は自分がしたいと暁斗は思う。
暁斗を綺麗好きと見做している奏人が、申し訳なさそうに言う。
「ちょっとシーツ汚したかな」
「気にしないで、明日天気いいみたいだから洗うよ」
奏人がいつもそうするように、暁斗は素っ裸のまま寝室を出て、久しぶりに温かい濡れタオルを電子レンジで3枚作った。暑い間はボディシートを使っていたが、今夜はそれでは少し寒い。
タオルが冷めてしまわないように、急いで寝室に戻ると、やはり素っ裸で横たわる奏人が笑いながら迎えてくれた。
「小走りで来なくても」
「だってすぐに冷めそうだから」
暁斗はタオルを広げて、白濁した液体で濡れた奏人の薄い腹をきれいに拭いてやる。彼も暁斗の汚れたところを優しく拭ってくれる。暁斗はこういう、男同士ならではのスキンシップのひとときも大好きだ。
「ああ何だか、暁斗さんとどっちもできるなんて幸せ……」
奏人はタオルを握ったまま、抱きついてきた。暁斗は彼のこめかみに、唇を押しつける。
「うん、どっちもいいな、挿れなくても俺は楽しいけど」
「元ノンケの暁斗さんにそう言って貰えると、教育する甲斐があるよね」
暁斗はちょっと笑って、奏人の額にひとつ口づけした。身体を離した奏人が見つめてくるので、唇にもキスをする。確かに数年前まで、こんな風に男にキスするようになるなんて思いもしなかった。
奏人と触れ合うのが好きだ。彼はセックスに倦んで離婚した暁斗に、裸で抱き合うことの素晴らしさを教えてくれた。彼が生物学的に雄であるのは、単なる偶然でしかないと思う。
奏人は寝間着の上だけかぶって、トイレに行った。後ろを洗うためだとは言え、下半身裸のまま寝室を出て行く開けっぴろげな態度も、一緒に暮らし始めて自分に慣れてくれたからこそ出てきたものだ。
暁斗は一人で微笑しながら、自分も服を身につけて、タオルを洗濯かごに持って行った。ベッドに戻れば、また奏人をしっかり腕に抱いて眠る。秋はやはり、お互いの温もりが殊に幸福感をもたらしてくれる季節だと暁斗は思う。
奏人は眉の間にきゅっと皺を寄せた。すると暁斗もきゅうっと締めつけられて、背骨に大量の電気が流れ、思わず声を上げてしまう。
「あ、奏人さんっ、そんなに締めな……ひゃっ!」
身体が勝手に震えて、頭の中が白い靄でいっぱいになった。これは酷い、いく瞬間も自分でわからなかった。暁斗は恥じ入りつつも、放出しながら腰を動かす……いや、勝手に動いて奏人を攻めていた。
「あっ……だめっ、あ、ああっ!」
奏人もひとつ長く叫び、熱い液体を勢いよく吐き出した。暁斗はそれを浴び、彼が昇りつめたことを知る。暁斗の腰を挟んでいる華奢な脚が、びくびく震えた。
暁斗はゆっくりと奏人の中から出て、コンドームを外した。そして、肌を熱くして呼吸を乱す奏人をゆっくりと抱きしめる。彼が愛おしいという気持ちしかない。どうしてこんなに、大切だと感じるのだろう。
「暁斗さん……汚れるよ……」
奏人は小さく言ったが、構わなかった。何も言わずに細い身体を包み込み、彼の肌の温度と感触を楽しむ。
暁斗は自分の心の動きに驚いていた。女を抱いた時には、ほとんどこんな気持ちにならなかったからである。躊躇いもなく、自分を身体の奥深くに受け入れ包んでくれるひと。彼は自分のもので、自分は彼のもの。そう心から思えることが、何にも代え難い。
しばらく静かに抱き合って、荒れ狂ったものが凪ぎ始めると、暁斗は奏人の耳許で言った。
「タオルあっためて身体拭くよ……今日は俺にやらせて」
奏人は頬に軽くキスして、返事をくれた。最近ずっと奏人に後始末を任せてばかりだった(彼がやたらと手際がいいからでもあるが)ので、今夜は自分がしたいと暁斗は思う。
暁斗を綺麗好きと見做している奏人が、申し訳なさそうに言う。
「ちょっとシーツ汚したかな」
「気にしないで、明日天気いいみたいだから洗うよ」
奏人がいつもそうするように、暁斗は素っ裸のまま寝室を出て、久しぶりに温かい濡れタオルを電子レンジで3枚作った。暑い間はボディシートを使っていたが、今夜はそれでは少し寒い。
タオルが冷めてしまわないように、急いで寝室に戻ると、やはり素っ裸で横たわる奏人が笑いながら迎えてくれた。
「小走りで来なくても」
「だってすぐに冷めそうだから」
暁斗はタオルを広げて、白濁した液体で濡れた奏人の薄い腹をきれいに拭いてやる。彼も暁斗の汚れたところを優しく拭ってくれる。暁斗はこういう、男同士ならではのスキンシップのひとときも大好きだ。
「ああ何だか、暁斗さんとどっちもできるなんて幸せ……」
奏人はタオルを握ったまま、抱きついてきた。暁斗は彼のこめかみに、唇を押しつける。
「うん、どっちもいいな、挿れなくても俺は楽しいけど」
「元ノンケの暁斗さんにそう言って貰えると、教育する甲斐があるよね」
暁斗はちょっと笑って、奏人の額にひとつ口づけした。身体を離した奏人が見つめてくるので、唇にもキスをする。確かに数年前まで、こんな風に男にキスするようになるなんて思いもしなかった。
奏人と触れ合うのが好きだ。彼はセックスに倦んで離婚した暁斗に、裸で抱き合うことの素晴らしさを教えてくれた。彼が生物学的に雄であるのは、単なる偶然でしかないと思う。
奏人は寝間着の上だけかぶって、トイレに行った。後ろを洗うためだとは言え、下半身裸のまま寝室を出て行く開けっぴろげな態度も、一緒に暮らし始めて自分に慣れてくれたからこそ出てきたものだ。
暁斗は一人で微笑しながら、自分も服を身につけて、タオルを洗濯かごに持って行った。ベッドに戻れば、また奏人をしっかり腕に抱いて眠る。秋はやはり、お互いの温もりが殊に幸福感をもたらしてくれる季節だと暁斗は思う。
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