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第159話 解呪の光、ルカの真実の愛
しおりを挟む「どうして……どうしてペンダントを勝手に使ったんです」
私の声は震えていました。
「最初から、君に使わせる気はなかった。だって、危ないだろう……」
呪いのもや、暗闇の中で、ルカが弱々しく笑いました。
「なんで、なんでそんなこと……」
このもやの発生源、妖精王からいただいた黒いオニキスのペンダントの中で、小さな双頭の蛇たちが無数にうごめいているのが見えました。それが、私の解呪の白い光とともに、さらさらと解けていきます。
「なんで? 君は、相変わらず鈍いな……」
困ったようにルカは笑い、私を見ました。
「ルチル様っ、御姿が……!」
鋭い声に、思わず私が振り向くと、ララが口元に手を当て、思わずといった様子で一歩あとずさっていました。
どうしたの、と言いかけたそのときに、私は気が付いたのです。ルカの両手を包む私の手。
私の両手は……まるで犬のような爪のあるふかふかの獣の手に、視線を落とせば、靴の脱げた私の素足も、いつかのルカのように、狼の足に変わっていました。
え?
え???
それって????
あれこれって……???????
私は混乱しながら、エルザ妃の言葉を思い出していました。
『この呪いは、愛する人を狼の姿に変える』
ルカに、呪いが移ったってことは、そうか、呪いは、ルカの好きな人にもかかるってことで……。
え~~~~~~~~~~~~~~!!!!!
なっ、なんて、なんて……なななな、なんてわかりにくい人なんでしょう!!!!
私、私、ルカは私のこと、好きじゃないんだって、エルザ妃のことが、好きだったんだって。
絶対そうだって、思った、のに。
そっかぁ……これはその、私の……私のこと、好き、だったってこと……ですよね?
きらきらとした解呪の光と共に、ルカをつつむ呪いの靄は薄くなり、黒いオニキスからは色が失われ、白くなっていきます。ルカは呆然と光の中で私を見つめていました。
「君、狼の姿じゃないか……」
「……かわいいですか?」
私の言葉にルカは微かに笑いました。
────あなたは知らないでしょう。エルザ妃にかけられた呪いが、もっとも愛する人を狼の姿に変えるってものだったってこと。
いつの間にか、黒いオニキスのペンダントは、透明に輝く宝石へと姿を変えていました。
私の狼の手も足も、呪いを浄化したせいか、ゆっくりと人間の手にもどっていきます。
私がついに人間の姿を取り戻したときには、透明な宝石の中には、一匹の白い蛇が、ぐったりと眠っているだけでした。
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