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第141話 彼と彼女の会話
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「……ルカ」
「エルザ」
二人は静かに見つめあいました。
「解呪できたの?」
「いや」
私が答えるより先に、ルカが私をかばうように背に隠し、エルザ妃に応えました。
「試したが無理だった。
この呪いがどういうものか、きっとあなたはわかっていたのだろう、エルザ妃殿下。
双頭の蛇の呪いだと知っていたのに、ルチルを危ない目に合わせたんだな」
「そんな言い方しないでちょうだい。
解呪を試したいと言ったのは、聖女ルチルよ」
「……解呪を試したために、何人かが死んだのだろう。
このままじゃ次の犠牲者は聖女だ。
聖女が死ぬことは、この国のためにはならない。解呪はもう試すべきではない」
「……残念だわ」
ルカの言葉に、エルサ妃は目線を逸らして嘆息すると、もう何もいいませんでした。
「森に、夢渡りで何度かきたのだろう。なぜだ?」
「なぜ?」
彼女は目を見開きました。
「言わせる気?
それは、あなたのこと、私……」
部屋のドアがあわただしくノックされ、魔術師セストが駆け込んできたのはその時でした。
「姉さん、王都にドラゴンが入り込んだという知らせだ!
王が王宮を出たという話も……!」
急なセストの知らせに、一同がざわめきました。
「ドラゴンが王都に入ってしまったら、神殿の皆が……」
動揺もあらわに、青い顔でララが呟きました。
ドラゴンは王宮の魔術師たちが、束になってかかっても倒せるか危ういものです。それが、王都へ入ってしまったのだとしたら……。
王宮はもちろん、神殿だって、ただですむはずがありません。
「エルザ」
二人は静かに見つめあいました。
「解呪できたの?」
「いや」
私が答えるより先に、ルカが私をかばうように背に隠し、エルザ妃に応えました。
「試したが無理だった。
この呪いがどういうものか、きっとあなたはわかっていたのだろう、エルザ妃殿下。
双頭の蛇の呪いだと知っていたのに、ルチルを危ない目に合わせたんだな」
「そんな言い方しないでちょうだい。
解呪を試したいと言ったのは、聖女ルチルよ」
「……解呪を試したために、何人かが死んだのだろう。
このままじゃ次の犠牲者は聖女だ。
聖女が死ぬことは、この国のためにはならない。解呪はもう試すべきではない」
「……残念だわ」
ルカの言葉に、エルサ妃は目線を逸らして嘆息すると、もう何もいいませんでした。
「森に、夢渡りで何度かきたのだろう。なぜだ?」
「なぜ?」
彼女は目を見開きました。
「言わせる気?
それは、あなたのこと、私……」
部屋のドアがあわただしくノックされ、魔術師セストが駆け込んできたのはその時でした。
「姉さん、王都にドラゴンが入り込んだという知らせだ!
王が王宮を出たという話も……!」
急なセストの知らせに、一同がざわめきました。
「ドラゴンが王都に入ってしまったら、神殿の皆が……」
動揺もあらわに、青い顔でララが呟きました。
ドラゴンは王宮の魔術師たちが、束になってかかっても倒せるか危ういものです。それが、王都へ入ってしまったのだとしたら……。
王宮はもちろん、神殿だって、ただですむはずがありません。
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