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第85話 森でお姫様だっこされちゃいました!

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「一人で歩けます……」

「でも、抱えていったほうが早いぞ?」

 そう言ってルカが私に手を差し伸べます。

「ほら、ルチル。お手をどうぞ」

「え、いえ、その……」

だって恥ずかしいんですって。とはいえ、歩きにくいのも確かで、私はしばらく逡巡の後、観念してルカの手を取りました。

「……やっぱり、お願いします。お手数かけますが……」

「ああ」

そう返事をすると、ルカはそのままひょいと私を横抱きに抱き上げ、歩き出しました。

「す、すみません……。
 重くないですか?」

「いや、軽いな。これからはもっと食わせないとだ」

 そう言ってルカは笑いました。

「ルチル、ドレス、すごく良く似合ってるな」

「ありがとうございます。前にルカが下さったんですよ。
 私も……自分でも素敵だなって思いました」

 それなら贈ってよかった、とルカは呟きました。
 もう、調子のいいこと言って、と思ったのも事実ですが、でも、嬉しいのも確かです。
 前に、夢渡りの彼女が言っていた、ルカの宮廷でのあだ名を、私は今さら思い出しました。

 宮廷のオリオン、かあ。

 確かに、そうなのかも。
 ルカの言うことは、さりげなくてわざとらしくなくて、こちらが嬉しくなっちゃいます。私だけじゃなくて、みんなにこの調子なんだったら、きっとモテたんじゃないかしら。
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