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異世界の神様の管理する世界で、愛する人に出会って幸せになりました。

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「うわー、マジだったぁ…」



  僕の新しい人生は、何とも間抜けなこの一言から始まった。


  そもそもの始まりはこうだ。
高校もそろそろ卒業かと言う頃になって、僕が同性愛者なのが周りにバレた。
元々背も低く体付きも細くて、小学校高学年から中学生に見られる事もままあった僕は、学校でもよくそれでからかわれていた。
虐めという事は無かったが、小さい頃から特に女子にからかわれる事が多かったため自然と女性が苦手になった。
  高校に入りたまたま3年間同じクラスだった男女どちらからも人気のある、生徒会長なんかもしてしまう様な1人の男子にクラスから浮いていた僕は何かにつけて気にかけてもらっていた。
担任の先生等に言われて面倒見てくれてたんだろう事は分かっていたが、優しくて格好良い彼の事が自然と好きになっていた。
初恋、だったと思う。


  魔が差して1枚だけ、彼の事をスマホで隠し撮りした。
それが何故か翌日にクラス中にバレた。
僕が彼を好きな事も一緒に。
あの日の登校して教室に入った瞬間の皆から注視された目は忘れられない。
黒板には大きく隠し撮りや僕の気持ち、からかいの言葉等が大きく書かれていた。
幸いだったのは、本人がその時教室内にいなかった事だろうか。
  いや、もしかしたらいたのかもしれないが、状況を理解すると共に踵返して自宅に走り帰った僕の目には彼の姿は見えなかった。



  普段体育の授業でさえまともに動けない僕が躓き転びそうになりながら、大した速度も出ていない全力疾走で家に転がるように帰り着いた時には、両親も既に仕事に出ていて誰もいなかった。
  玄関に倒れ込む様にして息を整え、少し落ち着いてからのろのろと自室に上がった。
  少し前に両親が建てたこの家は、まだ新築特有の匂いがする。
2階に上がった奥の角部屋。
僕の部屋。
特に特徴のない普通の子供の部屋だと思う。
少し漫画やゲームが多い位で、反抗期も大してなかった僕は、部屋をゴテゴテと飾ることもなく、殆どが小学校から使い続けている物だ。



  床に適当に鞄を放り出し、息苦しさと自分の中に渦巻いてる気持ち悪さでふらつきながら重力に従ってベッドにうつ伏せに倒れ込む。
そうすると少しも動きたくなくなってしまった。
もう学校にも行きたくない。
僕が同性を好きだなんて、両親にも話せない。
知られたくない。
何だか全てが絶望的に思えて、つい言葉に出してしまった。

「誰も僕のことを知らない世界に行きたい」

  ぽつんと小さく呟いただけのつもりの声が、やけに大きく響いた気がした。

『その願い、叶えてあげるよ』

  僕しかいないはずなのに、返事が帰ってきた。
驚いて咄嗟に起き上がると、どこまでも真っ白な世界の中、虹色に輝く光の玉が浮かんでいた。

(綺麗…)

  思わず、状況を疑問に思う前に心の中で呟いたそれに、虹色の玉が返事をした。

『ありがとう。私が綺麗に見えるのは、君の魂が清らかだからだ。』

  光る玉が喋るという異常な状況に、驚く程僕は平静だった。
何の違和感も湧かない事に、ああ、これは夢だな、と思った。

『これは夢ではないよ。
君の心だけ、私の支配下に呼び寄せたのだ。
君の肉体うつわはまだ君の部屋にる。
だが、君が本当に望むなら、このまま君の事を誰も知らない世界。
私の管理する世界に連れて行ってあげられるよ。』

  貴方の管理する世界?

『そう。私が管理するうちの世界の1つだ。
その世界は何故か発達が遅くてね。
君が移り住んで、発展の手助けをして欲しい。
難しい事はしなくていいよ。
あちらに行けば自然とそれが出来てしまう様にしておくから、君は自分が幸せだと思えるように暮らしてくれさえすればいい。
君が幸せに暮らせる世界に送ってあげるからね。』

  僕が幸せになれる世界…

『そうさ。
君は自分がこうしたい、こうなりたい、と思ったことを言葉にしたり、思ったり、そこに書き記せばいい。
あとは周りが勝手に発展していく。』

  そんな都合のいい事があるの?

『私の管理する世界だ。
私がそうすると決めればそうなるのさ。
ただ君に、そうなる為のきっかけになって欲しいだけだよ。』

  きっかけ…

『そう。
この申し出も、君が幸せになる為のきっかけだ。
そうだろう?』

  僕が幸せになる為の…

『そうだ。
やってくれるかい?』

  僕なんかにできる?

『もちろん。
君にしか、できない。』

  僕にしか…

『そう。君にしか。
安心しなさい。
着いてすぐは森の中。そこから光が導く方に進めば廃屋がある。
そこで君がしたい事を口にし、思い、そうなって欲しい場所に文字を記せばいい。
そうすれば私の眷属達が君に力を貸すよ。
そうしてそこで待ちなさい。
そこに君を幸せにしてくれる者が現れるから。
それに君が意識すればあらゆる物を無制限にその状態のまま収納、保管でき、好きに取り出せる様にしておこう。
必要な物や食べ物等もその中に入れておいてあげるから。
使いたい時は、スペース、と念じなさい。
そこは私の持つ空間の1つだ。それを君にあげよう。
目が覚めればもう森だ。
美しき魂の君がより多く幸せたらん事を』




  その光の玉の言葉を最後に、目を覚ますと。
僕は本当に森の中にいた。



あの虹色の綺麗な光の玉の言う通り目覚めてすぐ、光に導かれ幾らか歩いた先に廃屋と言うには立派なお屋敷があった。
光の進むままに門も開き、玄関扉も開き、外から見た時には薄暗く埃の舞っていた筈のそこは、光の玉が導くままに僕が足を踏み入れると、光の玉が弾け、消えた一瞬後にはどこも綺麗に磨きあげられた直後の様に綺麗になっていた。
埃等の汚れで外の陽も薄らとしか取り入れていなかった窓は、全て輝く程に磨きあげられていて、陽の光を十分に取り入れて屋敷内を明るくしている。
廃屋が足を踏み入れた途端豪奢な屋敷になった。


そんな不思議な現象にもさほど驚いてない自分の方に驚きながら、これもあの綺麗な光の玉の恩恵なのだろうか、と考える。
彼の玉はこの世界を管理している、と言っていた。
他にも管理している中の1つがこの世界だと。
もしかしたら違うのかもしれないけれど、あの虹色の綺麗な光の玉を『神様』と呼ぼう、と決めた。


それからは、屋敷内を一通り見て周り、『神様』の言っていた様にして過ごした。
神様の空間と言っていた『スペース』にはこの国の貨幣や日用雑貨から衣服、食材まで一通り入っていたし、チョークの様な文字を書く道具や何に使うのか今は分からないものまでアレコレ入れられていた。
あとはこの世界の事について書かれた書物、今居る屋敷周辺の地図とこの屋敷がある国の地図、そしてこの世界全体の地図に、動植物の生態系図鑑。
何故か貴族階級の基礎知識やダンス教本等もあって、ここは貴族階級のある王制の国で、文化レベルは中世頃の初期程なのだと知った。
ここは王都からほど近い、キングスベル領内にある森で、ここ一体を治めるのはキングスベル公爵家という、王族に連なる貴族が治める土地だった。


この世界には精霊や妖精がいて、魔法という概念がある。
でも魔法は素養のある者にしか扱えず、それもとても効率の悪い扱い方しか知られていないようだった。
何故それが分かったのかと言うと、世界の常識にこの世界での魔法の扱われ方等が書かれていたのだが、それとは別に『神様』直筆なのでは、というような魔法の使い方例題集があったからだ。
『スペース』に。
あの球体でどうやって書くのだろうと思うけれど、それは綺麗なで書かれていた。
他のこの世界の物であろう本は、この世界のあらゆる言語で書かれていた。
だからきっとこの日本語手書きの遠足のしおりみたいな寛容冊子は『神様』が用意したに違いないと思う。


そのを元にして、僕は火を起こしたり、水を出したり、時間を操ったりして料理したり、お風呂に入ったり、屋敷を綺麗に保ったりした。
そうして『神様』の言う、僕を幸せにしてくれる人を言われたとおり待っていた。
屋敷に施錠はしなかったが、僕を好いてくれる精霊達が屋敷を護ってくれてるから、外敵は屋敷の近くにも寄れないし、森に散歩に出ても小動物から大型動物まで、僕に腹を見せて擦り寄ってきてくれる。
僕は既に十分幸せかもしれない、と思うようになっていた。



そんな日々をまた幾らか過ごしたある日。
この屋敷付近では悪天候なんて滅多にないのに、珍しく外が荒れていたある夜。
屋敷の玄関扉にあるノッカーが打ち鳴らされる音がやけに大きく響いた。
僕は自然と分かってしまった。
きっとこの来訪者が、『神様』の言った " 僕を幸せにしてくれる人 " だと。



扉を開けたそこには、距離を置いてても見上げるほどに大きな男が立っていた。
フード付きの外套を被り、全身びしょ濡れで、そこかしこを泥に汚した格好だ。
その大男は言った。
悪天候で馬車が横転してしまい、御者と従者が怪我を負ってしまった。
馬も使えなくなってしまったので、どうかこの天候が回復するまででもいいから従者共々身体を休ませては貰えないだろうか、と。


もちろん僕は快諾した。
聞けばこの森沿いの道でいきなり馬が暴れ横転し、馬が森の中に走って逃げた為、怪我をした御者と従者を馬車内に残し、馬を追って森の中に入ってこの屋敷を見つけたらしい。
何とも不思議な事に、この悪天候の中、屋敷が薄らと光って見えたという。
恐らく、屋敷内の灯りがそう見えたのだろうと大男は言うが、それはきっと精霊の護りの光だろう。
そうでなければ『神様』のお力だ。
その馬の暴走も、もしかしたら…と思い至って、途端申し訳なくなってくる。
その事で怪我人まで出たというのだ。
僕はその馬車まで一緒に行くと言って、遠慮する大男を無理やりその横転した場所まで案内させた。
外套も羽織らず出た僕に大男は焦ったが、精霊の護りがあるから濡れないと告げると驚きに目を見開いて固まった。
外套で隠れた目元が見開いたと分かるくらいに大きく見開かれたのだと思うが、驚いてないで早く案内して欲しいと思い、大男の心情を察することも無く、早くしろとせっついた。


急ぎ向かえば、程なく横転したままの馬車があり、天に向いてしまっている扉を開けて、中の2人を大男に引き上げて貰った。
御者は腕と肋、脚を負傷しており、骨も折れている様だった。
 暴れた馬にも近く、外に座っていたのだから横転した時にその勢いのまま投げ出されたのだろう。
従者は割とガッシリした体格だったが、横転時大男を庇ったらしく、その弾みで手首と足を捻ったようだった。
ガッシリしていても庇ったのが大男だから、それも仕方ないだろうと思った。
僕は雨に濡れる2人に少しだけ我慢して欲しい、と告げて、訝しむ2人の身体に掌を沿う様にして当てていく。
全体の症状を確認してから2人に癒しの魔法を掛ける。
2人の体が淡く光ってその光は2人の体内に収まる様にして消えていった。


「もう、大丈夫ですよ。屋敷まで戻りましょう。お風呂と何か温まる食事を用意します。」
そう前半は2人に、後半は大男に向けて言い、スタスタと屋敷に向かって歩き出す。
自分の身体を確認して驚きの声を上げながら、訳も分からないだろうままに、3人は慌てて僕を追い掛けてきた。


告げた通り、玄関口で水気と汚れを浄化の魔法で取り去り、風呂場に案内して魔法で手早く風呂を炊き、軽く風呂場内の説明を3人にして調理場に向かう。
作り置きで『スペース』に収納していたクリームシチューを取り出して火にかけ温めながら、また保存していたパンを取り出して焼く。
正直あの3人がどれだけ食べるのか分からず、漬け込んで置いておいた唐揚げ用の肉を揚げて、あとはサラダで良いかと、葉物野菜を敷いた上にポテトサラダを乗せた。
スープ以外は大皿に盛ったけれど、各自で食べる分取り分けてもらおうと思う。
食堂に行き、テーブルクロスの敷かれた8人座れるテーブルにカトラリー、取り皿、スープ皿、パンの盛られた籠、大皿に載ったサラダと唐揚げを並べていく。
大皿には取り分け用のトングも置いた。


そこで丁度、お風呂から出てきたよ、と妖精が教えに来てくれた。
指先で頭を撫でながらお礼を告げて、浴室扉の前で着替えて出てくるのを待つ。
着替えは着てきたものを綺麗に洗って乾かし、それぞれ置いておいてあげて欲しい、と精霊たちにお願いしていた。
予想以上の張り切りだったのか、新品かのように糊のきいた様な状態の自分達の服を着て、3人が出てきた。
各々困惑顔だ。
扉前に僕が居たのにも驚かれた。
「食堂に案内しますね。」
対人用の愛想笑いを浮かべながら告げて、さっさと歩き出す僕を、またしても慌てて3人は追ってきた。
顔には聞きたい事だらけだと書いてある。
でも、僕は教える気はない。
だって、僕のした事は全部、この世界では有り得ないことばかりだからだ。

魔法の発展も、文化の発展も乏しいこの世界。

きっかけになる程に飛び抜けた技術と力を持っている僕。


『神様』は言ってた。

僕は幸せに思えるように過ごすだけでいい。

あとは周りが勝手に発展していく。




僕の用意した食事はこの世界には無いものばかり。
結構な量を用意したつもりだったが、3人は驚く程に感動し、喜び、全て食べきってくれた。
シチューはお代りもしていた。
3人の胃袋がどうなってるのか不思議に思った。
食後に紅茶と僕が醸造して作ったワインとウイスキーを出し、3人と、と言うよりは大男と交流した。
大男が主人だからか、彼の前では従者も御者も口数が少なかったからだ。
いや、従者は割と気軽そうな風で大男と話していたかな。


大男の名前は オズワルド。
オズワルド・キングスベル。
この領地の領主様だった。
という事は、この人は王族に連なる人で、公爵様か。
名前を聞いても大して反応しなかった僕を、屋敷に住んではいても貴族の事には無知だと思ったのか、気軽にオズワルドと呼んで欲しいと言われた。
従者と御者の名前も教えてくれ、好きに呼んで欲しいと言われた。
それに了承して、僕も名乗った。
「僕の事はハルと呼んでください。」
この世界で新しく生きる僕。
前の世界での名前から『ハル』とだけ名乗ることにした。
彼らと話している時に、僕からとても甘くていい匂いがする、と3人に言われた。
今日、昼に作っていた甘味のにおいだろうか?
彼らが来る前にお風呂には入ってたんだけど。
良くは分からないが、いい匂いらしいので「ありがとう」とだけ伝えておいた。
それぞれを客室に案内して、最後にオズワルドを部屋に導いた時。
扉前で、何だか目元を紅く染め熱っぽく息を吐きながら、僕の肩口付近に顔を寄せてまで匂いを嗅いできたのには、驚いたけど。
食後に甘味も出した方が良かっただろうか?


一夜経って、夜の荒れた天気が嘘のように空は晴れ渡っていた。
帰る3人を見送りに玄関まで出る。

「ハル、我々を助けてくれて、本当に感謝している。
この礼は戻ったら必ずする。
またここに来る許しを貰えないだろうか。」
「ええ、お礼は必要ありませんが、僕もここには1人なので。
話し相手はいつでも歓迎します。」

にこりと微笑みながら快諾すると、耳を薄ら赤く染めたオズワルドは、必ず近いうちにまた、と言い置いてやたらと振り返る御者と従者を連れて帰って行った。
風呂から上がったオズワルドは、大柄な雄々しい体躯の美丈夫だった。
流石公爵と言うべきか。
物腰も柔らかで品があり、大柄なのに粗暴さは微塵も感じなかった。
王都では騎士団長を勤めているらしく、その鋼のような筋肉は造られたモノではなく、実用的なモノだったらしい。
大柄なのに威圧感は皆無で、凛々しい目元はずっと柔らかく笑んでいて、穏やかな気性の人なんだろうと思った。


そんな彼とは、それから度々会うことになった。
彼は休みだろう日の殆どを僕のいる屋敷に来るのに使っている様で、来る度に花や、王都で人気の菓子や、可愛らしい小物や、本人曰くささやか宝石の付いた装飾品等を必ず手土産に通って来た。
そのおかげという訳ではないが、それから色々あって、僕は万人を魅了するフェロモンなる匂いを発している事が分かり、この世界にある番制度、と言うモノに当て嵌めるならば、僕は誰の番にもなれるのだと言うことが分かった。
そこには僕的には不本意な判り方をした出来事があったり、何だか色んな人に愛を告げられたり、この国や他国の王族にまで求婚されたりと、不本意でしかない出来事や事件も沢山あったが、どうやら僕がいい匂いだと思うのは、オズワルドだけだった。


『神様』が言っていた、僕を幸せにしてくれる人。


色々あったけれど、僕はオズワルドと結婚する事にした。
途中色々あり過ぎて、オズワルドがヤンデレみたいになりかけたけれど。
僕を愛してくれている、というのはいつも全身で伝えてくれる。
そんな彼が、僕も愛しいと思う。


今頃だけれど、この世界には男性しかいなかった。
子供は教会に行って、神に授かる様にしてもらうらしい。
『神様』の恩恵を元から持っている僕は、愛しい人の子供をいつでも産める。
それはもう、常に危険も何も無い安産で。


半年前、オズワルドとの第1子を出産した。
僕達の愛の結晶は、順調に可愛く、スクスクと育っている。
オズワルドと同じ色をしたこの子は、きっとオズワルドの様な美丈夫に育つのだろう。
『神様』の言った通り、僕は思うように生活していたけれど、僕の使う魔法や作る料理や使用してる技術品等は、国王管理の元で広まっていっている。
知らない間に、国家管理されていた僕の資産が日に日に増えている。
基本スペース機能と、オズワルドの力で僕がお金を使う機会は殆ど無いけれど。
子供達の為になればいいな、と有難く頂いている。
額が額なので、国庫に僕用のスペースが造られ管理されてるけど。



「ハル、そろそろ夫婦の時間だ。」
「あっ、オズ待って。ここで触ったらダメだって言ってるだろ。
チーが起きちゃう。」
「じゃあ、早く寝室に行こう。」
性急に僕に口づけながら僕を横抱きに抱え上げ、足早に隣室の僕達の寝室に向かう。
僕は急いで息子の眠る部屋に安眠と加護の魔法を掛け、部屋の灯りを宵闇に落とす。
息子の部屋の音は良く聞こえるように、僕達の寝室の音は漏れない様に魔法を掛けて、後は愛しい旦那様の首に腕を絡めながら甘い口付けを強請った。


「はあ…今日のハルも、どこを舐めても甘い。」
「あぁっ…もっ…そこばっかり苛めないでぇ……ひゃんっ」
オズワルドの胡座の上に座った僕の背中を舐め上げながら、彼はその大きな両手で僕の胸を包み隠して、中心で赤く熟れて立ち上がってるモノをコリコリと捏ね回し、摘み捻って強く引いては優しく撫で擦る。
随分と敏感に育ったそこは、少し触れられるだけでもう堪らなく気持ちよくて、僕の口からは甘えるような声しか出なくなってるし、触られる程にお尻が疼いて、ついオズワルドの大きくて、熱くて、逞しいモノに双璧の狭間を擦り付けてしまう。
「ぁぅっ…んんっ…オズ、焦らさないでぇ…」
「ダメだ。慣らさないと。少しもハルを傷つけたくない。」
そう言って、トロリとお尻に潤滑油を垂らされる。
いつでも子供を宿せる僕は、潤滑油が無くても中が濡れるのに、と思いながらも、彼の優しさを思って口には出さなかった。

擦り付けている所に垂らされるから、次第に擦れている部分がニチニチと音を立て始める。
左手で胸を愛撫したまま、彼の太く長い指が、僕の中にぬぷぬぷと埋められていく。
そのゆっくりとした動きが、堪らなく気持ちよくて、自然と背をしならせてしまう。
中をぐるりと回すように広げながら徐々に指が2本、3本と増えて行く。
はじめはニチニチと鳴っていた音も、もうグチグチョと大きく卑猥に響いていく。
「あああぁっ、オズ、オズ、そこっ、だめぇっ」
「ダメじゃない。ここはハルの気持ちいい場所だろう?」
「やっ、ダメ、もう、ああっまたイっちゃうっ」
「好きなだけ達していいんだぞ」
「やっ、もう、はやくぅ、はやくオズのちょうだいぃっ」
指だけで数度イってしまった僕はもう、舌も上手く回らず、舌っ足らずにオズワルドに懇願する。
この頃には自分が何を言ってるのかも分からなくなってきていて、只管に指では足りないと、オズワルドの起立が欲しいと願った。

「愛しいハル。ハルの欲しいモノだよ。
コレで沢山摺って気持ちよくしてあげよう。
ほら、こっちを向いて。」
「ひんっ」
オズワルドの指が抜けた感触にも感じ入って声を上げ震える僕を、ひょいと抱え上げてくるりと回し、オズワルドの胴を足の間に挟むようにして太腿に乗せられ、彼の太い首に腕を回すように促される。
大柄なオズワルドには、彼の足に座らされていても首に腕を絡めるのには上に手を伸ばさなければならない。
されるがまま、素直にオズワルドに掴まり身体を預けると、尻臀を両手で掴み上げて上下に揺するようにして、その狭間に彼の太いモノを擦り付けられた。
その揺する動作でも、僕の硬く立ち上がった乳首はオズワルドの逞しい胸に擦れているし、何度も吐き出して尚緩く鎌首をもたげている起立も、堅く割れた彼の腹で快感を拾っている。
もうすぐ入ってくるという期待だけでもう、堪らなく気持ちいい。

「入れるぞ」
そう短く耳元で囁いたオズワルドが、僕の孔穴に大きくそそり勃った自身を埋めてくる。
十分に解され、何度も受け入れているソコでも、限界まで拓かされているのが分かる怒張に、中の感じる所を隈無く擦り上げられ、全部を収める前に呆気なく達してしまった。
「んあああああぁぁぁっっ」
「…うっ……ハル、達してしまったのか?
可愛い」
背を弓なりに反ってイった僕のこめかみや頬や喉元、鎖骨なんかに口付けを落としながら、イった余韻の抜けない僕の中をオズワルドは構わず突き入れて進んでくる。
「んあぁっ、やっ、いま、イっっ、イってるぅぅぅっ」
「はあ……ハル、愛しい私のハル」
僕の耳元で睦言を囁きながら、ドチュッという音を立ててオズワルドが僕の最奥まで起立を突き立てた。
「ひやああああぁぁぁぁっっっ」
イっていた最中に感じる最奥を強く穿たれて、更に強い快感でうわ塗られる様にして再度達してしまう。
もうそこからは何も分からなくなって、意味のある言葉は紡げなかったと思う。
頭の中は白とバチバチと弾ける光の渦でいっぱいで、視界には整った顔を快感に切なげに歪めながらも、僕への愛を湛えた優しい目で見詰めてくる、愛する人。
そのあとは、様々な体位で何度も何度も、その大きなモノに穿たれ、貫かれて、彼の愛を散々体内に放たれた。
もうこれ以上入らないと、許して欲しいと涙に濡れながら訴えたけれど、穿つ度許容を超えた子種が外に漏れ出ても、只管快感を与えられ続けた。
空も白み始めた明け方、記憶も意識も途切れ途切れになって落ちるように眠った頃に、漸く僕は身体を休める事ができた。

翌日。
僕の涙ながらの懇願は、逆効果だとやり過ぎたとの謝罪と共に告げられた。
その言い分には甚だ遺憾である。





それから十数年。
僕にはオズワルドとの子供が3人に増え、今またお腹に1人宿している。
少年と青年の狭間にいる上の3人の子供達は、社交界にデビューしても未だに恋人の1人も作ってはいないようで、幼い頃から続いている「お母様(僕)のお婿さんになる」が未だに続いている。
オズワルドは年々息子達に厳しくなっているし、息子達の僕への甘えも年々酷くなっている気がする。
反抗期がなかった分、未だに親離れ出来ていない様子の息子達が心配な今日この頃。



それでも『神様』の言ってくれた通り、僕はここで幸せに暮らしている。





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みんなの感想(1件)

yumi424
2021.02.25 yumi424

はじめまして!
実は初めて感想を書きます
あちらの途中でやめられた方に書こうと思ったんですが感想を受け付けてなかったので申し訳ありませんがこちらに書かせていただきますね


お気に入りに入れていて進行されたら時間のあるときに読む感じだったのですが途中で止められてしまったんですね
続き楽しみにしてたので残念です
私はあらすじとかタイトルから入るタイプなんで全然気にならなかったんですがたちの悪い人っていますよね
あげあしとるっていうか(笑)
あまり気にせずに好きなように書いて下さいね
また機会があれば読ませてもらいます
そのままお気に入りにのこしておくので気が向いたら続き書いてくれたら嬉しいです(笑)

解除

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