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しおりを挟む「しーちゃん、」
顔を上げ篠灑を見上げる成宮は、頬を蒸気させハァハァと犬のように荒い息を吐きながら篠灑の雄を握っていた。
よく見れば篠灑の寝間着代わりのスウェットは上衣を胸が曝される程まで捲り上げられているし、下衣は下着までも剥ぎ取られ何も身につけていなかった。
成宮に握られた、まだ殆ど反応していない雄は既に唾液でヌラヌラと光っていて、成宮が舌を這わせていたのだと言われなくても判る。
「しーちゃんあのね、俺、今まではずっとタチだったんだけどしーちゃんに出会ってからどうしてもしーちゃんの俺ン中に挿れて欲しくて…」
成宮が目を潤ませながら、らしくない位弱々しい声で口を開く。
「しーちゃんがノーマルなのも知ってる。
だからしーちゃんは何もしなくていいから。目を瞑ってれば女とそんな変わンないと思うし…。
しーちゃん、俺頑張ったでしょ?これからもしーちゃんの為に頑張るから…。だからご褒美、欲しい。」
成宮は「お願い」と縋るような目と声で篠灑に言ったきり、また篠灑の下腹に顔を埋めて篠灑の雄に舌を這わせだす。
蟻の門渡りから精嚢、裏筋と丁寧に舐め上げて雁首も一周舌を這わせると亀頭部から鈴口へと舌を進め、先端をぴちゃぴちゃちゅっちゅっと舐めては吸ってを夢中で繰り返している。
成宮の呼気は変わらずハァハァと荒いし、その何処か切羽詰まった様な必死さに篠灑も抵抗する気にはなれず、そのまま目線だけ動かしてサイドボードの上の時計を確認した。
時刻は深夜0時を回ったところだ。朝まではまだまだ時間もある。
それに、確かに成宮は親衛隊長になってから篠灑の為に頑張っていた。
バスケ部に所属している成宮は元々暇を持て余している篠灑と違い、存外多忙であるし自由に動ける時間も限られている。
それでも最初に言っていた通り、篠灑を煩わせるものからは守ってくれているし、見ている限り親衛隊の事も上手く纏め、寮部屋では騒がしいのが嫌いな篠灑の為に朝と夜にはご飯の支度までしてくれている。
何より成宮は、篠灑が安眠できる場所を確保してくれた。
成宮のご褒美が欲しい、と言うのも納得出来るほどに篠灑は成宮が尽くしてくれているのを感じている。
篠灑は目線を必死で愛撫し続けている成宮に戻すと、その波打つ金髪にそっと手を置いた。
途端ビクリと全身を震わせた成宮が、おずおずと顔を上げる。
口には篠灑の雄を咥え込んだままだが、その瞳は今にも泣き出しそうな程に潤んでこちらを伺っている。
「成宮、タチだってさっき言ってたけどお前入れられる方出来るのか?」
篠灑はノーマルで、今まで異性相手にしか経験はないが、タチの意味くらいは知っている。
そして、受け入れる側がそんなに容易く中に入れられないのも。もちろん男は濡れない事も。
篠灑の存外優しい声音と問いかけに、成宮はホッと息を吐くと咥えていた篠灑の雄を口から離した。
手はまだ離さず雄を握ったままだが。
「うん。しーちゃんに入れて欲しくて、腸内洗浄の練習したり、寝る前に指や玩具で拡張したりしてたんだ。
こないだ指も三本まで入るようになったし、しーちゃんの大きいけど、これくらいならもう入ると思う」
そう言って成宮は乙女の様に頬を赤らめとても嬉しそうに、うっとりと篠灑の雄を見詰めた。
それを見ながら篠灑は逡巡した後、のそりと上体を起こした。
そんな篠灑を不安そうに見上げる成宮に構わず、篠灑は右手を差し出す。
成宮は右手を見てから篠灑を見上げて、首を傾げた。
「ローション」
そう呟いた篠灑に驚いて、成宮は「え?え?」と繰り返し篠灑の右手と顔を見比べる。
何故篠灑がそんなものを欲しがるのか見当がつかない。
「指三本程度じゃ俺のは入らない。慣らすからローション貸して。持ってきてるんだろ?」
無表情にそう素っ気なく言ってきただけなのに、寝起きで、しかも着衣の乱れた篠灑は壮絶に色っぽかった。
成宮は今までの比じゃない程に全身を真っ赤にして、慌ててベッド下に用意していた性交用のローションを篠灑が差し出している右手に渡した。
篠灑はローションの蓋を開けて中身を少量右手に出し、指先でその感触を確かめると目線を成宮に戻した。
それだけで成宮の心臓は大きく跳ね上がる。
「楽な体勢で寝て尻出して」
篠灑のいつもと変わらない筈の簡潔な言葉が、今は言葉責めでもされているかの様にいやらしく聞こえてしまって、成宮は羞恥と期待と混乱に悶えそうになるのを堪えながら言われた通り下衣を下着まで一気に脱ぎ捨てて、先程まで篠灑が寝ていたベッドにうつ伏せた。
計らずも枕に顔を埋める形になって、篠灑の匂いに一気に満たされる。
幸せだ、と成宮が気持ちを満たしている間にローションをぶちゅぶちゅと掌に出した篠灑は、ローションの付いていない方の手だけで器用に成宮の臀を浮かせるように持ち上げて膝立ちさせ、臀肉を掴んで揉みながら割り開いた。
動揺で僅かに腰を揺らした成宮を気にも留めず、右手内で器用に粘土を高めたローションを纏わせた中指と薬指で臀の中心部にある穴周囲の襞をくるくると撫で擦り、穴が緩んだのを見計らってゆっくりと中指を挿入していく。
「あっ」と前方から上がった成宮の声も気にせずそのまま指の根元まで差し込むと、ぐるりと腸壁内を回し撫でる。
成宮は指三本まで入ると言っていたが、今までタチしかした事がないのだ。
篠灑は、やはりまだ硬いな、と中を中指で探りながら納得する。
成宮はまだ殆ど兆していない篠灑の男根を見て、これくらいなら、と言った。
しかし篠灑の其れは力無い時で男性の平均よりも大きいサイズであるし、滾れば性器を受け入れられるように出来ている筈の女性の身体ですら篠灑のモノを入れられるまでにはかなり時間がかかる。
指三本がやっと入るようになった程度では、どうやっても無理だろうと篠灑は思ったのだ。
それに、と篠灑は心の中で呟きながら腸内を探る指を二本に増やし、前方で枕に顔を埋めながら必死に声を押し殺している成宮を見た。
「成宮、本当に俺に挿れて欲しい?」
成宮はその言葉にバッと勢いよく振り向き、赤くなったまま戻らない顔で勢い良くこくこくと頷いた。
「しーちゃんの、欲しい。挿れて?」
瞳いっぱいに溜めていた涙を零しながら、自然と上目遣いになった目線で乞う様に言われて、篠灑の体温も僅かに上がったように感じた。
一つ息を呑み込み、篠灑は慎重に、確認するように問いかける。
「成宮、俺のは成宮が想像してるのより恐らくかなりデカい。
それに、ヤり始めたら治まるまで時間がかかるんだ。
多分、成宮がもう止めて欲しいって言っても、泣いても治まるまでは止めてやれない。
──それでも挿れて欲しいか?」
静かな声音で真剣に言われた内容に、成宮の体温は更に上がってしまって、もう既に逆上せてしまいそうだった。
篠灑の言葉にくらくらしながらも、それでも欲しいと思っている。
痛くても辛くても、成宮は篠灑と繋がりたかった。
「いい。それでもしーちゃんのが欲しい」
成宮の言葉に篠灑は「分かった」と一言応えて、問いかけながらも動かし続けていた指を一旦入口まで引き抜き、更にもう一本ローションを継ぎ足しながら増やして再び中に埋め込んだ。
いきなり増えた胎内の圧迫感に、成宮はまた「あっ」と声を上げて慌てて枕に顔を埋め直す。
篠灑になるべく声が聞こえないようにしているのだろうか。
声を聞いて篠灑が萎えない様にしているのかもしれないし、声が出るのが単に恥ずかしいのかもしれない。
そんな成宮の様子が何だか可愛らしく見えてしまう。
これはこれでアリだな、と思いながら、埋めた三本の指をぐるりと回したり、指の間隔を開けて中を拡げたりを繰り返す。
大分解れて硬さも無くなってきたが、まだまだ足りないだろう。
枕に顔を埋めてふうふうと肩で息をしている成宮を見遣って、拡げてるだけでは苦しいか、と指使いを成宮の性感を探るものに変える。
と、直ぐに成宮の肩や腰がふるふると震え出した。
その様子に気分が僅かに高揚して、篠灑は更に探るように指を奥に這わせた途中、僅かに膨らんだ箇所に中指が当たった。
途端、成宮が「ひゃんっ」と女の様に甲高い声を上げて仰け反った。
驚いて指を止めた篠灑を、成宮自身も驚いた様に口を両手で塞ぎ、こちらを恐る恐る見ている。
成程、ここが男の感じる所か、と篠灑は独り言ちて、中指に当てたままの膨らみを三本の指で緩々と撫でたり緩く円を描く様に押したりを繰り返す。
成宮の膝はそこを触りだしてからガクガクと震え続けている。
「あっあん、しーちゃ、あっ、それっそれダメぇっ、声出ちゃっひあぁっ」
ローションを合間に継ぎ足しながら更に四本目、と指を増やし更に前立腺を中心に攻め続けるも、元々後ろを使ってこなかった成宮ではまだ中の刺激だけではイけない様で、陰茎からダラダラと先走りを流し続けてシーツに池を作り、腰をカクカクと揺らしているのにまだ一度も射精は出来ていない様だった。
流石に可哀想かと、篠灑は胎内に指を埋めて動かし続けながら腰を支えていた左手を成宮の性器に這わせ、そのまま緩く握って上下に動かした。
「ひぁんっ」
成宮がまた高い声を上げたのを確認して、性器を扱くのに合わせて前立腺をしつこく捏ねてやる。
あんあん啼きながら腰を振る成宮は思いの外可愛くて扇情的で、篠灑も自身が熱を持って首を擡げてくるのを感じていた。
成宮の高い声に煽られるように扱く手を早めながら、前立腺を一際強く抉ると、成宮が悲鳴の様な喘ぎ声を上げて、ドプッと篠灑の左手の中に吐精した。
緩々と残滓が出切るまで扱き上げてやると、成宮がくたりとベッドに沈んだ。
ハァハァと肩で息をつきながら、ふるふると震えて腕で顔を隠している。
女の様に喘いで達したのが恥ずかしいのかもしれない。
身体を羞恥と興奮と快感に赤く染めて、震えながら篠灑から顔を隠して。
それでも逃げる素振りは一度もない。
そんな成宮を眺めてから自身を見下ろすと、既に猛ったモノが目に映った。
男に勃つのだろうかと言う懸念は、全くの杞憂だったようだ。
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