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しおりを挟む婚約破棄を言い渡された日から馬を入れ替えつつ、最小限の休憩のみをとっての強行での帰国と帰城をした約一週間後。
彼の国から伝令が届き、更にそれから一週間後。
セリアージュ第一王子を連れた彼の父親である国王陛下と、母親である第一側妃様が我が国に訪れた。
どうにか婚約破棄を無かったことにしたいらしいあちらの意向で、謝罪での正式訪問ではなく友好国としての会談訪問と言う形となった。
この形での申し出を敢えて良しとした我が父である皇帝陛下は、我が親ながらいい性格をしているな、等と思っているうちにあっという間に会談の時間となってしまった。
「先ずは無事の来訪に労いを。
こうして顔を合わせるのも1年半ぶりか。
貴君の子息とは初めてであるな。まさかこのような会談での初見となるとは思わなかったが」
会談の場となった国賓を持て成すための皇城内の一室。
我が帝国の皇帝で在らせられる私の父の来室を待っていた王国の面々は、そのいきなりの言葉に三者三様の面持ちをしていた。
流石に国としての力関係や立場、今回の来訪の意味も理解しているであろう国王陛下は顔色には出さずともその言葉を粛々と受け止めて急な来訪への許しに対する謝辞と父へのご機嫌伺いまでしているし、今回この婚約を結ぶことを血縁まで通して願い出た第一側妃様は顔色を若干青ざめさせ所在無げな雰囲気を醸している。
そして私の元婚約者である第一王子はと言うと、あからさまに横柄な父の物言いに、驚いたと言った顔をしている。
もしやこの方、未だに状況を理解していない上に、お互いの国の力関係すらきちんと把握していないのだろうか。
「ふむ、まあ取り敢えず座って話そうか。リリーシア、私の隣へ。
貴君らも掛けてくれ」
「はい、陛下」
父の後ろに着いて入室した私は、促されるまま父の隣へと腰掛けた。
それに第一王子は訝しげな顔をしている。
こちらからすれば何が可笑しいというのか。皇帝と言えど父と娘であるし、許しがあるのも何ら不思議ではないのに。
貴方も父親である陛下の隣に座しているでしょう?と無言のまま目を向ければ顔を顰められた。
え、明らかに謝罪する態度では無いのだけれど?
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