超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 盛肚は行方不明になった。

 盛肚に最後に会ったタクシー運転手によると、乗車して十数分で降車し、そのままキャリーバックを引きながらどこかへ行ってしまったという。

 当然ミマヨの名前は真っ先に捜査線上に上がったが、ミマヨが盛肚をマンションから送り出したことは防犯カメラ映像からも、盛肚を乗せたタクシー運転手の証言からも明らかであり、何より超人気モデルであることが忖度そんたくされて、早々にミマヨは容疑者から外された。

 おそらく盛肚は何らかの理由から自分の意思で逐電ちくでんしたか、タクシーから降りたあと何らかの事件や事故にき込まれたのだろう、と捜査本部は推測した。

 盛肚はK団連の有力メンバーだったので、行方不明事件としては異例の大捜査が行われたが、手がかりは全く得られず、世間がもうどうでもいいと思うようになった頃、継続案件とされた。

 消費税増税と法人税減税を日頃からメディアを通じて主張していた盛肚は、庶民の憎悪の対象だった。

 盛肚の行方不明が世間に知れ渡るや、人々は歴代Z務事務次官のように世直し王子が盛肚を始末したに違いない、と噂し合った。

「キャリーバックよぉ、あれ、見つかんないように処分しといたから。でもあれ、おまえのキャリーバックってわかっても別に問題なかったよなぁ、よく考えたら。ってあれ、ひょっとして捨てちゃまずいやつだった?」

 一発ならぬ五発決めたあとのビショビショの乳臭いベッドの中でミマヨの肩を抱きながらTが言った。

「ううん。いいの。全然大丈夫」

 Tの胸に顔を擦り付けながらミマヨが答える。

「そうか。ならよかった」

 昨夜、盛肚をどこぞへ捨てに行ったTは、今日仕事を終えたミマヨが玄関のドアを施錠して振り向くとそこにいた。

 そのまま二人はベッドになだれ込んだのだった。
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