超人ゾンビ

魚木ゴメス

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 警備の仕事は平日は夜八時から次の日の朝の八時までの十二時間、土日祝日は朝八時から次の日の朝八時までの二十四時間勤務で、巡回時間は午前八時半、午後一時、午後四時、午後八時、午前零時、午前五時と決まっていた。

 この時点でのTは今の美の化身、匂い立つような男振りのTとは、顔つき以外は似ても似つかなかった。

 身長は百六十八センチ、自重での筋トレは欠かさずやっていたので体つきは締まっていたが、顔デカ胴長短足の典型的な日本人体型だった。

 頭も薄かったので坊主にして誤魔化していた。

 二週間もすると不精ったくなるのでその都度自分でバリカンで刈っていた。

 先に述べたような理由で二十代前半から既に髪が薄くなりかけていた。

 髪さえ人並みにあったら、これでもそこそこモテたのに……二十代前半からいつもそう思っていた。

 そう思っていじけていたからなのか、事実薄い頭のせいなのか、帽子を被っているときのTは女たちに好印象を与えているのがT自身実感できたが、帽子を脱いだTを見ると皆一様に距離をおくようになるのだった。

 そんな暗く救いようのない女っ気ゼロの青年時代を過ごしてきたTが、溺れる者が流木りゅうぼくに掴まるように最後に何とか行き着いた仕事だった。

 三年目だった。

 それなりに工場社員たちと友好的な関係を築けていたが、それ以上でも以下でもなく、それだけのことだった。

 死なない程度に生かされている、死ぬまでの間とりあえず生きている、そんな感じだった。

 空しい毎日だった。

 何度も自殺しようと考えたが、その度に、死ぬならその前に向かいのキチガイ一家を皆殺しにしてからだ、それはTの両親が死んでからだ、だが両親にはできるだけ長生きしてほしい、という無限ループに陥ってしまうのだった。

 八月になっていた。

 土曜日だった。

 Tが警備していた工場は実家から車で七分くらいのところにあった。

 西側に一つだけある正門を入ると右手に本社の建物があり、その一階にTが詰める守衛室があった。
 
 深夜零時になったのでTは蛍光ベストを着け、懐中電灯を携帯して定時巡回を開始した。
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