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一学期

とある日の体育館裏

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 ゴールデンウィークが終わり、学校では五月病が蔓延していた。もうすぐ昼食の午前中最後の授業でも五月病のせいか締まらない空気に包まれている。
 ゴールデンウィークの間、ずっっっとなんやかんや忙しかった遥にとっては五月病は無縁、仁も常に勉強と共にあったので無縁、順も酒屋の手伝いに追われていたので……

「ひゃっほー!!! オレは自由だーー!」
「割田、まだ終わってないから静かにな」

 チャイムと同時に颯爽と購買へと走る順。
 むしろ、学校に来れたことで解放されていた。学校に来ることを喜ぶ不良も珍しいものである。

「遥は今日も弁当だろう? 僕は水筒を忘れてしまったからお茶を買いに行こうと思うんだが何かいるか?」
「いや、いらない……それよりもちょっと用事があるから先食べといてくれ」
「なんだ? 手伝えることなら手伝うぞ?」
「わからん……体育館裏に呼び出された」
「……………………先生呼ぶか? 何にしても遥が怪我して順が暴れ出さないようにしてくれ」
「たぶん、そんなのじゃないから!」

 そういった遥自身も正直ビビっていた。体育館裏に呼び出されるような不良に目をつけられるようなことはしていないはずだ。していたとしても順が絡むと不良たちは逃げ出していく……はず……でもひょっとしたらひょっとするかもしれない。
 遥はかるーく逃げるための準備体操をしてから体育館裏へと足を運ぶ。
 そこには遥と同じく、男にしては小さめの身長の男がいた。見た目はなんとなく全体的に弟感があり可愛がりたくなるタイプである。
 遥はその見た目に全く見覚えもなく、同じ学年にもいたかどうか分からない。靴なので分かりにくいが、恐らく2年だろう。見た目はどう見ても喧嘩は強そうでは無い。しかし、マンガやアニメの世界ではむしろこういうやつの方が強かったりする。油断は全くできない。

「あ、来てくれたんだ。本当にありがとう! 先輩に聞きたいことがあって……」
「あ、うん、おう」

 そこで唐突に思い出してしまう。体育館裏は人気がないということで喧嘩やシメる為の呼び出しに使われる場所だが、世間一般では恐らく……告白に使われる場所であるということ。
 え? 告白? ドドの情報では俺の恋愛的好感度は仁と順にほとんど使われており、残りは2しか残されていないはずである。知らぬ間に2人の好感度が下がっていたのだろうか? だったら喜ばしい事なのだが、その分、目の前の子に注がれたのだろうか? 遥の頭の中に様々な考えが目まぐるしく飛来する。

「センパイ! ぼ、ぼぼくと」
「ちょ、ちょっとタンマ。タンマ!」

 遥の制止むなしく、恐らく2年の男の子の口は動いていく。

「いっしょにお料理をつくってください!!」
「は??」

 どういう事なのだろうか? これは所謂、俺のために味噌汁を作ってください的な遠回しなプロポーズなのだろうか? 遥の頭はより一層混乱していく。

「センパイはその、ぼくにとって色んな意味でセンパイなので! お料理以外にも色々教えて欲しくて」
「え、えーっと、うん、ちょっと整理させて欲しい。まず、名前は?」
「峰って言います! みね瀧男たきおです! 2年A組です」
「うん、そこまでは聞いてない」

 瀧男と名乗った彼と接点があったか遥は必死で思い出そうとするが全く思い出せない。帰宅部の先輩後輩……だとしても接点は生まれてこない。で、あればでセンパイとはどういう事だと遥は首を捻る。

「ごめん、どこかであったことある?」
「ないです!」

 元気よく否定されてしまった。このまま考えていても埒が明かなさそうである。

「えっと、なんで俺?」
「え? だって、その……彼氏がいるセンパイだと思って仲間だと」
「………………はい? えっと、それは、瀧男がそう思ってるだけ?」
「クラスのみんなが言ってます」
「っすぅ………………」

 どうしたらいいか分からなくなった遥はとりあえず、膝から崩れ落ちることにした。
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