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第2章

第36話 ここでお別れになるんですか?!

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 護衛報酬を貰った後、アルディンさんとジュニアスさんを加えて4人で冒険者ギルドへと向かった。

「おぅ、邪魔するぞ」

 冒険者ギルドの中には数人の冒険者が詰めていた。また受付にはエディスさんが事務仕事をしていたみたいだけど、アルディンさんが声をかけたことでこちらに気づいてカウンターの席に着いてくれた。

「進展があったのかい?おや、もう帰ってきたのかい」
「おうよ、あっという間にソーニャって小娘を連れ帰ってきやがった」
「あんたが認めるだけはあるんだねぇ、それで魔物はどうだったんだい?」

 僕はアルディンさんに説明したことをもう一度エディスさんに説明した。

「そんなに居たのかい・・・。あの三人も良く無事に帰って来られたもんだねぇ」
「まぁ、こいつらのお陰だな。やっぱり赤ランクにしておく訳にはいかねーな」
「なぁ、おっさん。本当にこの赤ランクの奴らの話を信じるのかよ。俺には話を盛ってるように聞こえるんだが」

 冒険者ギルドに居た若い冒険者の一人が僕らに近寄って絡んできた。彼が元居た席に同席していた他の冒険者も胡散臭そうに見ていたので似たような感想を持っているようだ。

「初対面でおっさん呼ばわりしたことについては後で報復するとしてだ。こいつらは俺が認めてんだ、文句があるならお前らも俺に認められるような活躍をしてみせろ」

 アルディンさんはそう言ってから懐から青いギルドカードを取り出した。

「な、青ランク!?」
「アルディンさん、青ランクだったんですか。でもまぁ、そうじゃなければ支部長は任されませんよね」

 アルディンさんのギルドカードに驚く冒険者を一瞥した後、僕は元支部長だということを知っていたのでそれ位のランクで当然だと思った。どんなギルドでも実力が無ければ支店長になんてなれないだろう。

「まぁ、昔は上を目指して頑張ったからなぁ。それなりのクエストを数こなせば誰だって青くらいにはなれるわ。お前なら青くらいすぐだろうよ」
「それはそれでまた注目浴びそうで怖いですけどね」

 僕はまだ起きても居ないが必ず起こりそうなトラブルを想像して肩をすくめた。

「俺の言葉で納得出来ないなら、いずれこいつらの実力を見る機会があるだろうからその時にでも自分の目で確認しな。今は連携が大事なときだ、あんま波風立てるなよ」
「ちっ、分かったよ」

 アルディンさんに諭されて彼は仲間の居るテーブルへと戻っていった。

(また力を見せつけろとか焚き付けてくるのかと思ってましたが)
(馬鹿野郎、タダでさえ人手が足りないのに使い物にならない奴増やしてどうすんだよ)

 僕が小声でアルディンさんに呟いたら、怒られた。それもそうだ、いくら僕とリナが強いからと言って2人で対処出来ない場面も出てくるかも知れない。僕らが村に張り付いて護衛するのであれば、周辺警戒のための斥候役なんかも必要になってくるだろうし。

「話が逸れたな。それでだエディス。そこでこの2人をリリーフ村の護衛に参加させようと思っている。こいつらが使えるのは俺が保証する。強さだけじゃねぇ、冒険者の心得とかもギルド入りたてとは思えねぇ程知ってやがる。あと依頼の発行や増援やらは、俺がアスピラシオに付いたら今の冒険者ギルドの支部長と役人に話を通してやるつもりだ」
「あんたならそう来ると思って、今リリーフ村の冒険者ギルドとしても依頼の申請書類やら作っていたところだよ。正直助かるけど、あんた余程この子たちのことを気に入ってるんだね」
「俺らの命の恩人って事もあるけどよ、正直見てて何か危なっかしいんだわ、こいつら。我ながらお節介だとは思っているんだがなぁ」

 何やらアルディンさんに危険人物扱いされていた。僕らは基本絡まれさえしなければ人畜無害のはずなのに。まぁ、降りかかる火の粉に全力では無いけどそれなりの力で振り払ってるからだろうけど。

 今後は威力を落とした威圧スキルと思いついた対処法で出来る限り穏便に済ませるつもりだ。夜が明けたらリナにもその方法を相談してみよう。

「あとこの子たちあんたと同じ護衛任務中だったはずだけど、この村の護衛に割いても大丈夫なのかい?」
「はい、依頼をした私自身が許可しました。彼らが抜けた穴はアルディンに頑張ってもらうつもりです」

 エディスさんが僕らが護衛任務を離れることを心配してくれたけど、ジュニアスが問題は無いと伝えてくれた。これで僕らはジュニアスさんやアルディンさんたちと行動を別にすることになるけれど、彼らに知り合えたことは僥倖だった。

「それじゃ、俺たちはそろそろ休むわ。朝までにその書類を仕上げてくれよ」
「人使いが荒いねぇ、分かってるよ。あんたらが出発するまでには作り終えるよ」

 そう言ったエディスさんに僕らは労いとお休みの挨拶をした後、それぞれ自分たちの借りた部屋へと戻り休息を得た。

                   ◇

 翌朝、リナにおはようのキスをされて起こされた。段々リナが遠慮しなくなってきている気がするが、嬉しいかったので毎朝するようにお願いしておいた。

 着替え終わってそろそろ朝食にするかと僕たちは部屋から出ると、丁度イリーナさんとレメイさんが僕らの方へやってきた。

「あ、良かった! 無事だったんですね」
「イリーナ、まずおはようだよ」

 お互いおはようと挨拶した後、食堂へと移動した。朝食を食べながら昨日の出来事を簡単に説明して、僕らがこの村に暫く滞在することと行商集団の護衛を外れることを伝えた。

「えっ、マサトさんたちとはここでお別れになるんですか?!」
「説明を聞いた限りではそうしたほうが良いのは分かるけど、残念」
「街へ一緒に行ってから戻るんじゃ駄目なんですか?」
「イリーナ、我が儘言ったらダメだよ。わたしたちはここから先は森を抜けるし、街に近付くから比較的安全だけど、この村は人手が足らないから実力者が必要なのは分かるでしょ」

 イリーナさんはビックリしたり別れを惜しんだりしてくれたが、レメイさんが冷静に諭してくれたお陰で納得してくれたみたいだった。

「王都にはいずれ行くつもりだからその時は約束通り案内してくれるかな」
「はい!任せて下さい」

 僕たちは握手をして再会を約束した。食事の後イリーナさんたちは荷物を取りに部屋に戻った。僕とリナはアルディンさんとジュニアスさんたちにお別れをするために行商集団の荷馬車を駐めている広間へと足を運んだ。

「おや。お別れの挨拶に来てくれたのですか?」

 馬車の準備をしていたジュニアスさんとアルディンさんを丁度見つけたら、向こうから話しかけてくれた。

「勿論です、お二人にはお世話になりましたので」
「こちらこそ、今までありがとう。この件が落ち着いたら是非街にある私の店に顔を出して下さい。勉強させてもらいますよ」
「あはは、分かりました。是非寄らせてもらいます」
「俺は一度街に行って段取りを済ませたら戻ってくるから、それまでこの村を頼んだぞ、二人とも」
「僕らに出来ることはやれるだけやってみます」
「お任せ下さい」

 ジュニアスさんとアルディンさんとも握手をして別れの挨拶を済ませた。イリーナさんたちや他の冒険者や行商人も集まり、準備が整って出発した行商集団に僕とリナは手を振って見送った。
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